設計コンセプトConcept
健診
省人化と多職種運営
建築が運営を支える仕組みになるために
田淵 幸嗣
個人の経験や頑張りに依存しない
健診施設の運営は、限られた時間と限られた人員で、受付・計測・採血・画像・診察・説明を同時に進め続ける業務です。人員構成が日によって変わると、経験差のあるスタッフで運営することも増えます。経験者の配置が限られると、口頭確認や呼びかけで補う場面が増え、結果として待合から人があふれ、通路や受付まわりに列が発生しやすくなります。
省人化を設計のテーマとして扱う理由はここにあります。
省人化は単純な人数の削減ではありません。同じ人数でも、確認や誘導を増やさずに運用できる状態を、諸室の並びと使い方でつくることです。
往復(スタッフ移動)の削減
設計として最初に扱うのは、受付・記録・物品棚・検体の一時置き場などの配置が、スタッフの往復を増やさない並びになっているか、という点です。スタッフ動線を一本の線として短くするだけでは成立しません。健診の現場は、工程ごとに担当が分かれ、同時に動いています。
往復が増えやすいのは、「受け渡し」や「取りに戻る」動きが出る場所です。たとえば、計測のあとに次の工程へ案内する動き、採血後の検体を一時置きして回収する動き、記録用紙や物品を取りに戻る動きです。ここが遠いと、呼び込みが遅れ、補助に入る回数も増えます。その結果、同じ人数でも担当ごとの負荷が偏りやすくなります。
省人化で効いてくるのは、スタッフの移動距離をいかに短くするかです。物品が遠い。収納場所が点在している。補充場所が把握しにくい。在庫が見えない。このような状況では、小さなロスが増え、呼び込みの遅れとして現れます。
そのため、収納は量の問題ではありません。使う場所の近くにあるか。使う順序で並んでいるか。戻しやすい形か。ここが弱い計画は、スタッフの移動と作業の中断時間を増やしてしまいます。
同様に、受診者側の「分かりにくさ」は、スタッフの介入回数として現れます。分かりにくさが出やすいのは、入口から受付、受付から更衣、待合から検査、検査後に次の工程へ向かう切り替え点です。掲示や声かけを増やす前に、行き先が読み取れる状態を空間で用意します。
計画で押さえるポイント
ここで扱った内容は、計画の各段階で抜け落ちやすくなります。そのため、以下の項目を重点的に確認しています。
・受け渡しが多い工程で、スタッフの移動が増えていないか
・受付まわりに「立ち止まる理由(案内、記帳など)」が重なっていないか
・記録台が通路際に出て、すれ違いを増やしていないか
・各工程で必要な物品が、毎回「どこかに取りに行く」運用になっていないか
これらを押さえることで、個人の経験に依存せずに、多職種が同時に動いても運用が安定しやすい状態をつくります。
