設計コンセプトConcept

健診

健診施設の計画は「前提条件の整理」から始まる

田淵 幸嗣

-運営条件を数値でそろえる-

 受診者数の推移は、健診運用の前提条件(コース、検査所要時間、処理能力、受付枠)の組み立てが、どのように成立しているかを示す結果です。

 健診施設の計画で最初に整えることは、運用が無理なく回る条件を、関係者が同じ前提で確認できる状態にすることです。受入枠、受付の時間割、コースごとの流れと所要時間、時間帯によって負荷が集中しやすい検査、順番待ちと待合の扱いなど、動線と諸室の組み立てに直結する条件を先にそろえます。

 受入枠は部屋数だけでは決まりません。検査ごとの所要時間、受診者の検査手順、受付の時間割、運用上の入替(検査順の調整)まで含めて決まります。だからこそ設計者は、関係者が共有しやすい単位として、仮に30分単位でコースの流れと検査時間を数値として定め、見える形にした拠り所をつくります。数値は結論を固定するためではなく、議論の基準をそろえるために用います。

コース別フローと想定時間

 まず、コースの流れと各検査の所要時間を想定します。
 下表(表1)の検査の流れと所要時間は、複数の健診施設での打合せを通じて得た一般的な流れと数値を、説明のために平均化したものです。実際の計画では、医療機関ごとにヒアリングを行い、流れと時間を組み立てていきます。
 ここでは、表1の前提でコースごとの想定所要時間を理論値として算定しています。
実務では入替・準備・移動により各工程に差が生じるため、理論値に約10%を見込んだ時間を目標所要時間として扱います。

(表1)検査の流れと所要時間 ・定期健康診断(目標所要時間:45~60分) ・生活習慣病予防健診(目標所要時間:90分) ・人間ドック(目標所要時間:120~150分+結果説明10分) 胃部は「胃部レントゲン検査」と「内視鏡検査」の2通りで想定します。

検査別「30分あたり処理能力」の算定

 次に、検査ごとの処理能力を30分単位で算定(表2)します。
 処理能力(人/30分)=〔室数(台数)×30〕÷〔検査所要時間(分/人)〕が基本です。
 目的は、初期段階で「どの検査が時間帯ごとの受入上限を決めやすいか」を関係者で共有することです。

(表2) 各検査の所要時間の前提は医療機関によって異なります。前提が変われば、受入枠も連動して変わります。

受入枠の設定

 30分単位の受付枠(時間枠)を設定し、検査の処理能力に合わせて上限を見立てます。
 受付開始9:00、受付は30分単位、医師診察終了12:30、検査終了13:00、ドック結果説明は受付時間に関わらず13:00開始、という前提で考えます。
 例えば超音波検査を「30分に1人」の枠で見立てると、人間ドックの受付枠も同様に「30分に1人」となり、検査目標時間を120分とした場合、受付9:00~11:00で理論上は5枠が上限となります。
 また、人間ドックと生活習慣病予防健診の双方に必要な胃部検査(胃部レントゲン検査または内視鏡検査)は、予約時に選択する運用とし、内視鏡のように所要時間が長い検査では「30分に1人」の枠になりやすいことを確認します。
 これらより、人間ドックは超音波検査の処理能力で決まりやすく、生活習慣病予防健診と人間ドックの合計受診者数は、胃部検査の実施可能枠に従う、という見立てができます。

(表3) 問診の30分あたり処理能力が5人である場合、30分単位の受付枠では全体で5人が最大となります。

医療機関ごとの健診運用を前提として整える

 健診施設計画の第一歩は、特定の部屋を増やす/減らすという議論ではありません。施設規模に関わらず、健診コース、検査室数と所要時間を想定し、30分単位の処理能力から受入枠を仮設定します。
 医療機関ごとに人員配置、検査機器、手順は異なります。
 だからこそ計画初期に「流れ」「所要時間」「処理能力」「受付枠」を整理し、事業計画と建築計画のズレを最小化することが重要です。
設計者の役割は、この拠り所を整えることにあります。