設計コンセプトConcept

健診

安心感とプライバシーを、運営のしやすさと両立させる

田淵 幸嗣

女性受診者対応の考え方

 女性受診者対応は、「女性のための専用エリアを設ける」ことだけで決まる話ではありません。健診では、更衣、待合、呼び込み、検査室の前後で、身体を見せたくない、声を聞かれたくない、視線が気になる、といった、「気がかり」が生じやすくなります。
 ここで設計が扱うのは「気持ち」そのものではなく、見え方・聞こえ方・立ち止まりやすい箇所のつくり方です。
 受診者が落ち着いて進められることと、スタッフが声掛けや誘導を増やさずに運用できることを、同じ設計条件として整えます。

プライバシーは「検査室の中」だけではない

 プライバシーは、検査室の中だけでは完結しません。廊下・待合・受付まわりで視線が集まったり、会話が届いたりすると、受診者の気がかりが増えやすくなります。
 したがって設計では、部屋の遮音性能を高めるといった対応だけではなく、次の関係を先に整えます。
・待合の座席の向き(他者と向かい合いにくい向き)
・通路と待合の境界(通路から視線が集まりにくい関係)
・呼び込み位置と待合位置の関係(立ち上がる位置が見られすぎない関係)

更衣から検査直前までの「切り替え」を整える

 気がかりが増えやすいのは、更衣後や呼び込みから検査室へ入る直前、検査後の退室時です。服装を整え、姿勢を確認し、次に何をするかの意識が重なりやすいところです。
 ここで建築が行うのは、移動距離をただ短くすることではありません。呼び込みを受けて立ち上がった瞬間に視線が一斉に向かないようにし、立ち上がりの位置と通路の向きを整え、検査室へ止まらずに入室する動きをつくります。また、検査室から出るときに視線が集中しないような配慮も必要です。
 これらが整うと、受診者の負担感が必要以上に増えにくくなります。スタッフ側も個別のフォローを増やさずに済みます。

検査前後は「説明・呼び出し・待合」を一体で整える

 女性受診者対応は、検査の組み立てにも直接影響します。とくにエコー等、説明や確認が必要になりやすい検査では、待合の扱い方、呼び込みの方法、説明を行う位置が、そのまま受診者の気がかりにつながりやすくなります。
 ここでの設計判断は「配慮を足す」ことではなく、「気がかりが生じにくい状況をつくる」ことに重心を置きます。
 具体的には次の整理です。
・検査室の前に人が溜まりにくい構成にする
・説明や確認の会話が外へ届きにくい位置にする
・名前を呼ぶことを避けられる場合は、呼び出し方法も含めて運用を組み替える

男女分離を二択で扱わない

 男女分離は、可能な計画もあれば、敷地や面積、既存条件によって難しい計画もあります。重要なのは、分離できるかどうかではありません。
 設計で整理するのは、次の3点です。
・視線がぶつかりやすい位置
・人が立ち止まりやすい位置
・声が届きやすい位置
 分離が完全でなくても、見え方・聞こえ方・立ち止まる位置を整理できれば、受診者の気がかりは軽減できます。
 女性受診者対応は「特別対応」として検討するのではなく、安心感とプライバシーを、運営のしやすさと矛盾させずに整える設計条件として扱います。