設計コンセプトConcept

健診

稼働効率化と予約枠(受入枠)の設計

「人を急がせない」まま、受付〜検査〜説明の連続性を整える

田淵 幸嗣

稼働効率化の考え方

 稼働効率化とは、人を急がせることではありません。受診者の動きとスタッフの作業が無理なく連続し、想定した時間配分で一日の運用ができる状態をつくることです。
 建築が担うのは距離を短くすることだけではなく、受付・更衣・検査・診察・説明の流れが途中で途切れさせにくい順序となるように、動線と待合の関係性を先に整えることです。

交差と立ち止まりの抑制

 健診では、朝の受付、昼前の検査、結果説明の時間帯など、人が集中しやすい場面があります。ここで重要なのは、その集中を現場の調整だけで受け止め続ける形にしないことです。通路に列が出ない待合(順番待ちを受け止める場所)を計画に組み込み、待合から呼び込み、次の検査へ向かう方向が迷いにくい構成に整えます。
 同時に、入口〜受付、受付〜更衣、更衣〜検査、検査〜次の工程へのつながりを見直し、同じ場所に受診者が集まりすぎないようにします。
動線が交差しにくい並びにすると立ち止まりが減り、案内や呼び込みを繰り返す回数も増えにくくなります。

検査時間の幅と「検査前後」の扱い

 稼働を左右するのは、人の移動だけではありません。健診では検査ごとに所要時間の幅があり、個人差も出ます。所要時間がばらつきやすい検査が重なると、検査室前に順番待ちが発生しやすくなり、呼び込み順の入れ替えが必要になることがあります。その結果、全体の時間配分が変わりやすくなります。
 そこで設計では、時間差が生じても順番待ちが通路に出にくい構成を用意します。長めの検査が発生しても周囲の移動を妨げにくい待つ場所を整え、検査室前に人が溜まりにくく、呼び込みを繰り返さずに済む位置関係をつくります。

予約枠(受入枠)を「運用条件」として扱う

 予約枠(受入枠)は経営上の数値であり、空間の使われ方を直接変えます。
 枠が増えれば待合の必要量が増えます。検査前の待合が増えれば通路に列が伸びやすくなります。女性枠の増減や特定検査の偏りが出れば、特定の場所に待ちが集中しやすくなります。
 予約枠(受入枠)を調整するたびに運用負荷が偏りやすい施設は、枠の組み方と空間の使われ方が噛み合っていません。ここでは、予約枠(受入枠)を運用条件として扱い、枠を増減しても、検査室前で順番待ちが起こりにくく、待合と呼び込みの対応が増えすぎないように、枠の組み方と部屋の使い方を一致させます。

 健診は毎日が同じではありません。年齢層、検査構成、当日の欠席や追加、午前・午後のスタッフの人数差で、時間配分は変わります。
 建築では、順番待ちを受け止める待合を確保します。受付や検査の前後で人が一時的に集まっても通路に出にくい位置に設定し、時間差が生じたときは待合で受け止めて、次の検査室前に列が伸びにくい状態をつくります。
 ここで扱った内容は、図面上で確かめられる形で提示します。受付まわりで動きが交差しにくいか、待合が通路に出にくいか、検査室前に順番待ちが発生しにくいか、受付枠を増減したときに待合の必要量が過度に増えないか、などを見ていきます。

 稼働効率化は運営の話に見えますが、空間の構成に強く影響を受けます。だからこそ、平面で確認できる形で示します。時間差はゼロにできません。だからこそ、順番待ちが通路側へ伸びないように、待合の位置と呼び込みの位置をセットで整えます。順番待ちを受け止める場所がはっきりすると、案内の回数が増えにくくなり、運用の安定につながります。

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