設計コンセプトConcept
病院
病院の建替え手法と建替え検証経過の実例紹介
病院建替えの3つの手法
病院建て替え手法は大きく3つに分類されます。 【移転新築】・【敷地拡大による増改築】・【敷地内増改築】 土地が見つかれば、新築移転がベストですが、地域によっては新たな土地取得が困難な場合や既存の建物や併設施設(老人保健施設等)の活用を検討されるケースも多数あります。それぞれのメリット・デメリットを整理しました。 建替えの目的は病院ごとに異なりますが、それぞれの建替え手法により目的達成度、医業の継続性、資金的な負担の3つについて検証した表が下記になります。

建替え手法によるメリット・デメリット
目的達成度は、新築移転が最も満足度は高いと言えます。計画の自由度が高く機能的な面も一から整理ができます。敷地拡大・敷地内建替えの場合は、既存の施設の活用や医業継続等の制約にもよりますが、一定の満足は得られると言えます。改装のみの場合は、現行基準への適合が困難な場合が多く、十分な整備は難しいと言えます。 医業継続性については、移転新築は既設病院運営には影響がありません。敷地拡大による増築では、拡大される敷地の場所や形状によって異なりますが工事車両の影響や外来導線等への影響が発生します。敷地内建替えでは、その影響はさらに大きくなります。工程毎に動線の移動や部屋の機能の移動が生じる場合があります。 資金的な負担は支出(工事費・土地取得費)、収入(病床数や外来・検査機能の一部閉鎖等による増減)、経費コストを比較しています。 この表はあくまで一般的なケースを比較しましたが、条件は各病院で異なるためこの表の項目については事業計画初期段階で検討が必要です。
ゆう建築設計の事例を分類
中小病院の建て替えを数多く行っていますが、移転新築が約半分、敷地拡大による増改築が約3割、敷地内増改築が約2割という状況です。 移転新築の場合でも建て替えに計画が固まるまでは検討を繰り返し行います。移転先が決定されてからの依頼もありますが、相談のタイミングは事業者によって様々です。 下の図の分類の中から3つの事例を紹介します。 敷地が決まれば新病院の運営方針と事業予算によって病院の移転新築計画は比較的スムーズに進みます。 病院は医療圏やこれまでの利用されていた地域の患者さんがあって土地選定が捗らないケースがあります。 また既設病院の周辺に病院の関連施設があったり、敷地内の施設との連携や事業の継続性等の理由により、敷地の拡大や敷地内での建替えを優先的に検討しなくてはいけないケースも多いと思います。 作品紹介では、完成した建物の紹介を行っていますが、ほかの病院が新病院完成までにさまざまな検討を行った経過を知ることで、検討の第一歩が踏み出せる場合もあると思います。

3つの病院事例の概要

事例1:【新須磨病院】近隣駐車場に仮設病棟を建設、既存病院を解体し改築する検討からスタート
新須磨病院は、住宅地に建つ病院で、周辺に法人関連施設が多数あり今の病院を解体し現地での建替えの相談からスタートしました。 病院の近くに病院所有の駐車場がありましたが、新病院の機能をすべて満足させるには不十分でした。 検討開始時点では既存外来機能は活かしつつ、近隣駐車場に建替え工事中の仮設病棟とリハビリ機能を建設し、新病院の工事完了後は仮設病棟は高齢者の住まいに転用する検討を行いました。 計画を進めていくうちに駐車場の隣接にあった産婦人科病院の移転が決まり土地取得が可能となりました。隣接地を合わせ駐車場の活用可能面積が拡大したため病院全体を移転新築する方針に計画転換を行いました。 計画可能な規模は拡大しましたが、敷地を最大限活用するためバリアフリー緩和を適用し約600㎡の床面積増を行いました。整形の建物が計画できるように「天空率」を活用し道路斜線の緩和を適用しました。さらに地下を活用することで病院の求める機能を満足させました。

事例1-1:必要機能を満足させるためのさまざまな検討
新病院の必要機能を満足させるために建築関連法規について様々な緩和を活用をしました。さらに地下外壁を山留一体化工法(施工会社の特許工法)を活用し地下も最大限に活用しています。 日影規制等により建物の高度利用制限があるため法的採光が不要な部屋(リハビリ室)については地下に計画を行いました。ドライエリアを設け外部の光が少しでも感じられる工夫を行っています。
事例1-2:3棟の接続を平面・断面で整理
航空写真でもわかるように西棟・中央棟・東棟の三つのブロックから構成され、それぞれの高さも異なった計画となっています。そのため断面計画も複雑になっていますが、平面及び上下の動線を整理し患者もスタッフもスムーズな移動が可能な計画となっています。
事例2:【しまだ病院】老人保健施設を継続利用しながら病院を敷地内建替え
島田病院建替え計画は移転新築も視野に入れ約8年の長期プロジェクトとなりました。駅近くのグランド跡地への移転検討や病院北側敷地①を取得し外来機能とメディカルフィットネス部門を別敷地で建設、敷地内の駐車場部分②での建替え等、いろいろな可能性を検討しました。 すでに所有していた病院の奥③の敷地は里道・水路で分断されており、十分な計画が難しい状況でしたが、地域医療を積極的に進められていた病院の新築計画に地元の方々の協力のもと里道水路の付け替えが可能となりました。 道路からの工事車両等の進入も難しい計画でしたが、給水・ガス・電気等のインフラの切り替え、浄化槽の新設切り替え等の準備工事から進め13回の仮設切り替えにより約4年半の工期により完成しました。工事中も病院は診療・入院を継続させ、老人保健施設は新病院建設後も継続利用するため工事途中の事業継続運営計画も基本計画段階から繰り返し検討を行いました。

事例2-2:既存病院と老人保健施設を継続運営するためには北側?・南側?
建替えについては、北側②と南側③で各階の平面を作成し、建替え工事中の仮設計画を作成し切替え手順を検証しました。 老人保健施設の建物の1階にはデイケアと外来リハ、上階に病院の手術室がありました。整形外科の手術・リハビリの患者が多く、この機能を継続しながら建替え工事を行う必要がありました。施工計画は施工会社の意見もヒアリングし現実的な計画を作成する必要がありました。
事例2-3:既設インフラ設備の切り替えを検討
既設病院・老健の南側に新病院を建設する方針を決め、まず水道・井水・下水・ガス・電気などのインフラ設備の切り替え検討を行いました。前面道路との高低差があり、公共下水未整備の地域のため浄化槽の更新も必要でした。既存の病院は半地下(北側は埋まっており、南側は開放)の状態で、既設病院を解体すると新たに擁壁を作る必要がありましたが、耐震性の調査と上部を解体した際の地下躯体の強度検討を行い、地下躯体を再活用し土工事にかかるコスト削減と工程短縮を行いました。
老人保健施設(赤枠部分)を継続運用しながら右側のような構成の計画に完成させるためには、1階の病院エントランスからの動線を既設老健建物内で改修する必要もあり非常に複雑な工事工程で進めました。運動器のリハビリにも力を入れてこられ、新しい病院では、メディカルフィットネス(健康増進施設)を強く打ち出した構成になっています。メディカルフィットネスの地下部分には投球フォームやゴルフのスイング等の確認ができる屋内運動スペースも整備されています。
外来患者数が多いため待合スペースを広くとっています。学生の利用も多いので待合室には勉強ができるようカウンターデスクを設けています。
リハビリスペースもゆったりしています。病棟も術後のベッドサイド、フロア、入院患者用リハビリ室等を設けているため1床あたりの面積は平均的な面積の倍となっています。
既設病院に併設されていた手術室は管理部門に1階外来リハビリスペースは新館と一体化しスペースを拡張しています。
事例3:【藤民病院】既設建物を部分的に解体、増築・改修を繰り返し必要機能を構築
藤民病院は、隣接する宮本病院との関係性もあり敷地内での増改築を行いました。住宅地にあり、病院への接道も狭く新たな敷地拡幅も難しい状況でした。 敷地内に水路があり渡り廊下でつながった建物もあり、三期にわたる切替工事となりました。建替えのための種地も限られていたため既設建物を順次解体、増築を繰り返し完成形にする計画でした。病棟の切り替えについては管轄の医療課とも協議を行い変更手続きを進めながら、順次検査を受け行っています。建築及び消防の届についても順次検査を受け、仮使用手続きを行い進めています。施工計画と同時に各種変更届、完了検査を繰り返すことになり通常の設計監理業務以上の手続き・工程管理が必要となります。医療課等との調整は法人さんの事務作業となりますので本来の業務外の作業も増えることになります。
事例3-1:建物の切り替え手順を検証
敷地内に余地がない場合でも複雑で難しい工事になりますが、病院の建替えは可能です。 右図は、改築前から完成までの建物の解体・増築手順を模式的に図にしたものです。既存の建物を部分的に解体し、建物の間に新しい建物を建設し接続。外来機能、入院機能を運用継続しながら順次行うために基本計画段階のシミュレーションをしっかり行っておかないと施工が始まった段階で運営に支障をきたすことになります。 移転新築工事とは全く違ったノウハウが必要となります。特にこの工事では病院の一部を解体したため患者さんの理解も必要でした。またスタッフの協力も必要となります。
事例3-2:病床の移動をシミュレーション
建物の切り替え手順の検証と同時に、病棟の病床移動の検討を行う必要があります。工事中も医療法の基準は当然ですが建築基準法や消防法を満足させる必要があります。
特に避難計画については所轄消防署と協議を進め、災害時の安全計画を事業者でしっかりした検討が必要です。
病床の切り替えを行う場合はナースコール等の医療設備の切り替えを随時行い、診療・治療に支障が発生しないように設備的な対応が必要となります。入院が継続される場合は食事提供については、工事中の衛生管理とともに配膳ルートの確保が必要となります。仮設厨房を計画したり、工事中は外部の給食事業者に依頼するなどの対応が必要となるケースもあります。建物建設だけでなく医療を継続させるためのさまざまなシミュレーションを行い、運営途中で支障がでないよう事業者、施工者とともに進めていくことが大切です。








