設計コンセプトConcept
病院
それぞれの病院にふさわしい外来の部門配置を考える
病院の外来フロアは、初診・再診の通院患者をはじめ、CT・MRI・エコーなどの高度検査、各種処置、
化学療法、透析治療などを受ける多くの患者が利用する場所となり、入院患者の見舞いに訪れる家族も
行き交い、院内で最も人の出入りが多いエリアになります。また、患者や家族だけでなく、検体搬送や医療スタッフの移動も頻繁に行われます。
病院の外来フロア設計では、患者の利便性(満足度)とスタッフの業務効率を両立させることが設計のポイントとなります。 これらの動線が交錯しないこと、各部門へのアクセスが短く効率的であることが求められます。そして、何よりも外来フロアは、病院を訪れる人が最初に接する「病院の顔」であり、その印象が病院全体の評価を左右する重要な空間になります。
そのため、安全性・機能性・分かりやすさ・快適性を兼ね備えた動線計画と空間設計が必要になります。
■最近の中小規模病院の外来設計のポイント
1. 動線設計の基本(分離と効率化)
患者とスタッフの動きを分ける「動線分離」が基本です。
①表動線(患者用)
: 受付、待合、診察、会計へとスムーズに進めるわかりやすい経路。
②裏動線(スタッフ用)
:患者と交差せずに処置室やバックヤードへ移動できる経路。
これにより、スタッフの移動距離を短縮し、診療の回転率を高めます。
③部門別分離
:一般外来、小児外来、手術・検査などの動線が交わらないよう配慮します。
※以前は、医事課と診察室の裏動線を連続させる計画が一般的でした。これは紙カルテ移動を考慮した効率的な計画でしたが、電子カルテ、オーダリングシステム、更にはインカムといったコミュニケーションツールを導入することで、より自由な部門配置を取ることが可能になりました。
2. 待ち時間対策とICTの活用
「待ち時間」は病院に対する最大の不満要素です。
①待合室の分散・個別化
:診療科ごとに中待合を設けたり感染対策として密を避ける広がりのあるデザインが主流です。
②デジタル活用
:診察室前の待合表示やスマートフォンで待ち時間を確認できるシステム、自動精算機の導入により、物
理的な滞在ストレスを軽減します。
③リラックス環境
:待合はロビーのような落ち着いた照明を採用する等、体感待ち時間を短くする工夫も有効です。
3. 将来の柔軟性と感染対策
① 他の診療科も使える診察室
:どの診療科でも使える標準的な広さの診察室を配置し、将来の受診者数変動や診療科の入れ替えに柔軟
に対応できる病院側からの要望が多くなっています。
②感染症対応
:感染症対策室は、発熱外来専用の別玄関を設けた独立した室を設けたり、
個別に陰圧換気や感染対策:
レッド/イエロー/グリーンのゾーン分けを考えた設計が求められます。
ゆう建築設計では病院へのヒアリングを行い、現状の働き方を踏まえたうえで、より働きやすく効率的な
プランを提案します。
最近の外来の部門配置のいくつかの事例を紹介します。
(事例)外来診察・待合:ブロック分けプランによる混雑緩和 (我孫子東邦病院)
我孫子東邦病院では、電子カルテ、オーダリングシステム導入により、医事課と診察エリアを完全に分離させた配置計画を採用されました。
玄関から入り、図面右側を診察、処置エリア、左側を健診、検査エリア、上階利用のEVに動線を分離し、外来と健診で兼用する放射線科を中央に配置することにより、健診受診者動線と外来患者動線を分離したわかりやすい動線計画としました。また、救急処置室と処置室を隣接させることにより、少ないスタッフ人数で救急時対応しやすい計画としています。
外来・待合のブロック分け
外来の診察室1~13を、4ブロックに分け、各診察待合を3つの待合エリアに分けることにより、多数の外来患者の混雑緩和につなげました。

1階平面図
ホテルライクな病院デザインを採用
患者が少しでも前向きな気持ちで治療期間を過ごせる環境づくりとして、“ラグジュアリーモダン”デザインを採用しました。従来の医療施設のイメージを払拭しつつ、医療の場として不可欠な清潔性、安全性を確保したうえで、通院や短期入院といった心身に負担の大きい時間を、明るく穏やかなものに変えることを目指しました。

わかりやすいサイン計画、やわらかい間接照明の外来待合
(事例)電子カルテとインカム導入 医事課と外来受付とは別フロアに(島田病院)
島田病院の計画では、電子カルテ、オーダリングシステムだけでなく、スタッフ間のコミュニケーションにインカムを導入されました。
害アリの受付には受付スペースと患者のプライバシーに配慮した問診ブースが設けられ、医事課は別フロアに設けました。診察室同士は裏動線でつながっていますが、他の部門からは独立した計画としています。
救急処置からの画像診断の流れとスタッフ配置に配慮し、処置室と救急処置室を隣接させました。救急処置室は、敷地の高低差から別フロアにある救急出入口からEVで救急搬送する計画としました。

1階平面図

中待合1

中待合2
(事例)回廊型の外来:診察・検査計画 (京浜総合病院)
京浜総合病院は、狭小敷地の立地条件により、患者の外来・検査部門は2,3階の2フロア構成になります。患者は1階のエントランスから階段、エスカレーター、奥のエレベーターと中央階段により、患者を2階の総合受付まで誘導します。2階は、外来、検査、ドック健診、3階には4階以上の病棟患者も利用する放射線、内視鏡のフロアにしました。
また、2階では総合受付手前で外来検査部門とドック健診エリアへの動線を分離し、総合受付を中心に外来9診、エコー検査等を回廊状の廊下から各待合へアクセスできる計画としました。各待合は、待合表示システムによって、患者が待ち時間を把握しやすい待合計画になっています。

2階平面図

回廊型の外来診察待合

3階平面図

3階:放射線待合
(事例)外来診察の流れにそった部門配置(池田病院)
池田病院は現在工事中の糖尿病専門の病院です。ここでは患者は受付後に採血、採尿といった検査を行い、検査後に診察を行うという流れを取られています。
外来部門は敷地の制約から1階と2階に分かれていますが、上記の流れに沿って、1階で受付を行い、採血といった各種検査を受けてから、2階に上がって診察を受けるという配置になっています。
また、診察待合での患者の待ち時間をできるだけ短くするため、迅速な検査が求められたことから、採血室と検体検査室は隣接する計画としています。
外来スタッフの動線については、裏導線で1、2階をつなげています。電子カルテやインカムの導入により、医事課と診察室を裏導線でつなげる必要性は低くなりましたが、医事課スタッフが医師に確認を取りたい場合に、診察中に電話対応するのは患者に失礼、という理事長の考えを反映したものです。

