設計コンセプトConcept

病院

それぞれの病院にふさわしい外来の部門配置を考える

外来フロアは多くの患者が行き来するとともに、検体やスタッフの移動も多いため、これらの動線が交錯せず、かつ短い動線計画が必要です。
たとえば、中規模病院では、医事課と診察室の裏動線を連続させる計画が⼀般的でしたが、これは紙カルテを医事課から診察室に持っていくのに効率的だからです。しかし、電子カルテやオーダリングシステム、さらにはインカムといったコミュニケーションツールを導入することで、より自由な部門配置を取る事ができるようになりました。
ゆう建築設計では病院へのヒアリングを行い、現状の働き方を踏まえたうえで、より働きやすく効率的なプランを提案します。

外来の部門配置のいくつかの事例を紹介します。

(事例)外来スタッフの移動距離を最小限に(たずみ病院)

たずみ病院の計画では医事課と診察室間の裏動線を従来通り確保しています。
ここでは、更にこの裏動線から救急処置室、内視鏡部門へもアクセスすることが可能で、⽇中・夜間を問わずスタッフの移動距離を最⼩限にし、患者の⾒守りや迅速な対応を重視した動線計画としています。
救急処置室は、通常外部から直接出⼊りできる病院が多いですが、外来診察時間帯での対応や、処置後の経過の⾒守りを優先し、内側に配置しています。

たずみ病院 1階平面図

(事例)電子カルテを導入し、医事課を分離(はりま病院)

はりま病院の計画では、電⼦カルテとオーダリングシステム等を導⼊することで、⼈によるカルテや伝票などの移動をなくせると判断し、医事課と診察エリアが分離した配置計画としました。
逆に、外来の診察エリアー処置室ー内視鏡検査ー放射線ゾーンの裏動線をつなぐことで、看護スタッフの動きやすさを優先し、スタッフ同⼠の連携が図り易いゾーニングとなっています。

はりま病院 1階平面図

(事例)電子カルテとインカムを導入し、医事課を外来受付とは別フロアに(島田病院)

島田病院の計画では、電子カルテ、オーダリングシステムだけでなく、スタッフ間のコミュニケーションにインカムを導入されました。
外来の受付には受付スペースと患者のプライバシーに配慮した問診ブースが設けられ、医事課は別フロアに設けました。診察室同士は裏動線でつながっていますが、他の部門からは独立した計画としています。
救急処置からの画像診断の流れとスタッフ配置に配慮し、処置室と救急処置室を隣接させました。
救急処置室へは、敷地の高低差から別フロアにある救急出入口からEVで救急搬送する計画としました。

島田病院 1階平面図

(事例)外来診察の流れにそった部門配置(池田病院)

現在計画を進めている糖尿病専門の病院では、患者は受付後に採血、採尿といった検査を行い、検査後に診察を行うという流れを取られています。
外来部門は敷地の制約から1階と2階に分かれていますが、上記の流れに沿って、1階で受付を行い、採血といった各種検査を受けてから、2階に上がって診察を受けるという配置になっています。
また、診察待合での患者の待ち時間をできるだけ短くするため、迅速な検査が求められたことから、採血室と検体検査室は隣接する計画としています。
外来スタッフの動線については、裏導線で1、2階をつなげています。電子カルテやインカムの導入により、医事課と診察室を裏導線でつなげる必要性は低くなりましたが、医事課スタッフが医師に確認を取りたい場合に、診察中に電話対応するのは患者に失礼、という理事長の考えを反映したものです。