設計コンセプトConcept

病院

目標コスト実現のためのコストマネージメント

ゆう建築設計はCM(コストマネージメント)の先駆者

ゆう建築設計では、まだ日本でCM(コストマネージメント)があまり知られていない2006年(建設バブル期)に基本設計段階でのVE(ヴァリューエンジニアリング)を行いました。当時、ゆう建築設計では地主の土地有効活用を積極的に行っていました。しかし建設費が高くなり賃貸マンションの事業収支が合わなくなったことがきっかけでした。家賃収入は地域や賃貸面積によってほぼ決まってしまう中、建築費が上がると返済計画が成り立たなくなります。これは医療や介護の事業収支に似たものがあります。医療事業ではベッド数や外来患者数、治療行為によって収入がほぼ決定してしまいます。介護事業も同様で施設種別と整備室数、利用者の介護度で収入が決まってしまいます。昨今の建築費高騰の状況で基本設計段階でのVEが役に立っています。

病院建替えの理由と検討課題

病院を一新させる計画を始める理由はさまざまです。建物や設備の老朽化はもちろんですが、医療法の改正や診療報酬の改定により、現行基準に適合しないため病院機能の改善を行い、収益性を向上させることが主な目的となる場合が多いと思われます。 いずれの場合も、事業計画を進めるためには事業コストを知る必要があります。そのコストを算出するためには、計画する建物の規模や手順の整理をできるだけ具体的に検討する必要があります。 新築の場合は、どのくらいの敷地が必要か?、新築する建物の面積はどのくらいになるか?その工事費は? 敷地拡大による増築の場合は、拡大される敷地をどのように活用し、最終どのような構成の建物にするか?増改築の手順とその期間の病床数や外来機能はどのように運営できるか? 敷地内増改築では、敷地内の余剰地の活用方法や最終の外来や病棟の動線は運営に支障なく整備が可能か? 詳細な計画を行う前に、事業者の事業計画と将来の運営方針を双方で十分に理解し、適切な建築計画を行い、初期段階からコストを意識した事業推進を行うことが事業成功の秘訣です。

建設コストは基本計画・基本設計で8割が決まる

建築に関わるコストは、基本計画・基本設計段階でほぼ決まります。基本計画で、建物の配置計画、平面計画、構造計画が決まります。平坦な土地であれば建物の配置によるコストの変動は小さいですが、高低差のある敷地や土地の造成を伴う計画、地下工事がある計画では建物配置によるコストへの影響は大きくなります。また平面計画では、建物の延べ面積が決定されコストへ直接結びつきます。ある程度平面が決まっていると柱の本数や梁のサイズが想定できてきます。地盤が悪い地域では建物の荷重によって地業工事に大きな差が発生します。この基本計画段階ではまだ詳細の検討は行っていませんが地域性や社会情勢等によりおおまかな工事費の想定が可能となります。いわゆる坪単価による工事費の算定です。続いて基本設計を進めていきますが基本設計では、建物のグレードや仕上げ材の選定、設備の仕様を決めていきます。建物の用途や機能によってある程度の仕様は決まってしまいますが、大きな建物になれば仕上げ材の選定や設備計画によるコストへの影響は大きくなります。

病院の1床あたりの整備面積

病院の整備面積は、病院の規模や診療科目、病棟種別、運営方針により建物面積は異なります。 初期段階の算定指標として一般社団法人 全国公私病院連盟が毎年、「病院運営実態分析調査の概要」をホームページで公表しています。 その調査結果には、100床あたりの延べ面積と100床あたりの敷地面積・建物総延床面積が表にされています。 その年に整備された病院の規模や機能によって数値は変動していますが、私的(主に民間)病院の場合、1床あたりの面積は約60㎡、病棟の1床あたりの面積は約25㎡となっています。この数値はあくまで平均値であり、病院の診療科目や外来診療数、リハビリ機能、手術室数などにより変動します。また病棟面積は各病院の病棟種別や個室割合、診療報酬の加算算定基準等によって変動します。

ゆう建築設計による設計事例にみる整備面積の違い

 ゆう建築設計では、中規模病院の建替えや増改築の設計を数多く手掛けています。中規模病院建替えでは、計画される敷地の形状や診療科目、運営方針によって建物の面積は大きく異なります。特徴的な病院の事例を下記に紹介します。はりま病院は三角形の変形敷地を活かし放射状の建物を計画しています。たずみ病院は整形敷地で隣地の公的広場に面した計画です。明石回生病院は既設病院建物横の細長い田んぼを借地し計画しています。しまだ病院は既設建物を継続利用し外来・リハビリ・手術室等ゆとりのある療養環境を十分に確保しています。島の病院おおたには比較的ゆとりのある敷地に1床室と個室風2床室で計画し各病棟にゆったりした食堂・専用リハビリスペースを計画しています。限られた敷地の中で必要な機能を満足させる場合と、ゆとりのある敷地で建築基準法の形態規制も緩やかな場合では、延床面積や病棟面積が大きく異なっているのがわかります。整備面積が狭いからと言って機能が不足しているわけではありません。それぞれの病院の機能を十分満足させかつ効率的な計画を行っています。また専門診療科目や運営方針によって整備面積が大きく異なることがわかります。

病棟種別と個室割合による病棟の1床あたりの面積の違い

下の表はゆう建築設計の実績から病棟の各病院の病棟の種別と1床あたりの面積を比較したものです。病棟種別によりフロアの構成が異なる場合もあります。回復期リハ病棟では回廊式廊下を計画したり病棟にリハビリスペースを設ける場合もあります。また緩和ケア病棟では食堂・談話スペースをゆったり計画する等、療養・治療環境に配慮することが多いです。緩和ケア病棟の場合、診療報酬等の基準により病棟面積に関して1人当たり35㎡以上という指導もありほかの病棟に比べ広くなります。このように病院の延べ床面積は、病棟種別や病床計画によっても大きな違いがあります。コロナ以降、個室整備の要望が増えたり、感染時の病棟隔離計画等を検討する病院も増えています。整備する延べ面積はコストに大きく関係するため企画・基本計画段階でどのような病院にするかはコストコントロールを行う上で重要な要因となります。

ここで紹介している事例はゆう建築設計の病院事例の一部ですが、中規模病院の建築コストは企画段階・基本設計段階で病院の運営方針、診療方針を十分に検討し必要な機能を満足させるために必要な規模を把握整理しながら進めることが重要です。

基本設計段階の構造検討

一般的に鉄骨造のほうが建築費は安いと言われています。ほんとうにそうでしょうか? 建物の形状や地盤状況、社会情勢、地域性によって必ずしも鉄骨造が安いとは言えません。 工場や事務所ビルのような整形で四角い建物は鉄骨造が優位であることは間違いありませんが、行政指導によりバルコニーを設置する場合や日影の規制等で建物形状が複雑になる場合は鉄筋コンクリート造のほうが安くなるケースもあります。 2018年後半には、鋼材不足やボルト不足により鉄骨造をRC造や木造に変更する案件もありました。 2022年にはロシアのウクライナ侵略による社会情勢の悪化によりセメントの輸入に影響が出た関係で鉄骨造が急増した時期もありました。 耐震性や振動等の性能も異なるので基本計画・基本設計段階で必要に応じて検証すると良いでしょう。 下図の事例では地盤の地耐力が十分でない軟弱地盤での計画だったため、45mの杭が必要でした。プレキャストコンクリート構造を採用し柱の本数を削減し基礎・杭本数の減少を行いコストダウンを行いました。

維持管理に配慮した病室の空調計画

 最近の病院の空調方式は電気式ビルマルチエアコンを採用する場合が多いですが、バルコニーを設置する病院では維持管理が容易な電気式個別空調方式を採用するケースがあります。兵庫県では条例により居室(病室等)からの二方向避難として外部バルコニーから屋外避難階段への避難経路が指導されています。通常は病室もビルマルチエアコンを設置し、屋上に空調室外機を設置しますが、兵庫県ではバルコニーの設置が義務化されているためパッケージエアコンや家庭用エアコンを設置し、室外機をバルコニーに設置する計画を行った事例があります。個別空調方式を採用することで機器の更新時は、部屋ごとに機器の更新が可能になります。個室や2人病室では壁かけエアコンを採用されるケースもあります。建物形状や機器配置にもよりますが維持管理コスト等をトータル的に検討するとコストダウンにつながるケースもあります。

コストダウンだけがコストマネージメントではない

 地震の多い地域や地域中核病院では、建築基準法の耐震設計基準強度よりも強い建物を希望される場合もあります。 通常の設計よりもコストアップにはなりますが、基本設計段階で通常の強度と比較し採用された病院もあります。 透析を専門にされている病院や医院では地震等の災害時でも継続した治療提供が必要となるため免振構造を採用されるケースもあります。 災害時の治療継続のために非常用発電機の能力をアップしたり、水害を想定し1階をピロティにされるケースもありました。 コストマネージメントは、下げることだけが目的ではなくそれぞれの病院の地域性や運営方針に沿った費用対効果を十分に検証し行うことが大切です。

病院
病院の記事