作品紹介Works

障害者

社会福祉法人乙訓福祉会 生活介護事業所 乙訓楽苑

建物南面にはいろんな形や大きさの窓が配置され、楽しい雰囲気を演出しています

事業概要

 1990 年10 ⽉に開設した社会福祉法⼈⼄訓福祉会⼄訓楽苑を、同法⼈の⼄訓の⾥の隣に移転新築する計画です。新⼄訓楽苑では、幅広い利⽤者の活動に対応する空間を⽤意すること、また、移転先である住宅街に馴染む建築とすることを⽬指しました。こうして住宅街に移転することは、「地域のまんなかで障がいのある方々とともに」という理念をもつ法人、またそこに通所する利用者とご家族にとって、とても大きな意味をもっています。施設では、ミュージックケア、また創作活動等の作業のほかにも、散歩をはじめとした体を動かすような健康維持にも取り組みます。個々の取り組みだけでなくグループでの活動も行ない、他者とのコミュニケーションを通じて、⾃分たちの⽣きがいや仕事のやりがいを⾒つけられる環境になるよう職員らが支援を行ないます。

建築計画

 敷地は小泉川に面しており、街中にありながらも自然の光や風が感じられる眺望に恵まれた土地です。外観の大きな特徴は不規則に並んだように見える窓の配置です。リズミカルな窓のデザインは、建物に軽やかさと個性を与えると同時に、多様性を受け入れる施設の理念を表現しています。  内部空間については利⽤者ゾーンをフロアごとに分け、1階は身体的に介護度が⾼い利⽤者らを、2階は身体的には軽度である利用者らを対象としています。

 1階の作業室Aに入ると壁一面が川に向けて開いた大きな開口部で、光や緑が視界に飛び込んできます。そとを感じながら開放的な環境で創作活動に取り組むことができます。 また、ホワイトボードとマグネットボードの機能を併せもった壁面を設け、活動の流れを確認したり、完成した作品を飾ったりできるようにしています。 この作業室の大きな特徴は、車いすトイレを作業室に面して配置し直接出入りできるように計画していることで動線の効率と見守りのしやすさを重視しています。さらにトイレには手摺などを配置するだけの標準的な仕様だけではなく、シャワーを設置することで失敗があった場合にも柔軟に対応できる仕様としています。

1階作業室A:開放的な環境の中で創作活動に取り組める

 階段室には南面の外観にあらわれた窓が配置されています。明るく楽しい気分で2階の作業室に向かうことができ、窓から見える風景は街中にいることが実感できます。
 2階作業室Bも1階と同様に川側に向けて開けた窓を有していますが、すこし開口部が絞られ利用者がより作業にしやすい環境になるように調整しています。作業室はひとつの大きな空間として使うことも可能ですが、オーダーメイドのワークデスクを使うと、3つのスペースに分割することができ、部屋の開口部もそれに合わせて配置されています。
 この作業室Bを中心として調理室や食堂のほか、男女トイレやシャワー室、洗濯室など多くの部屋が面しています。これも1階と同様の考え方で、利用者の見守り等を重視した結果の計画となっています。
 食堂と調理室はできる限り開放的な窓を設けており、作業室から移動してきたときに気分が切り替えられるようにしています。外にいるような気分で食事をつくったり、食べたりすることができます。2つの部屋は互いに直接行き来できる構造になっているので、扉を開け放てば一体的に使うことができます。
 また、屋上も有効に活用しています。外の空気を味わいながらイベントや簡単な運動に取り組むことができ、転倒時の安全性に配慮して床はゴムチップ舗装としています。また花壇を設けているので花や野菜を育てたりするなど、屋外ならではの活動に取り組むことができます。

リズミカルな窓の内側は階段室

作業室Bはワークデスクを使って3つに分割できる

作業用とトイレ用を兼ねた手洗い、鏡は割れないステンレス製。扉は鍵付き

調理室は食堂と一体で使用でき、一般家庭用のシステムキッチンを備える。

食堂はさらに開放的な眺望が広がり、外にいるような気分で食事がとれる

屋上は外の空気を味わえる場所。床はゴムチップ舗装で安全性に配慮

川の対岸から見る。隣は同法人運営の乙訓の里

建築主
社会福祉法人乙訓福祉会
所在地
京都府長岡京市
用途
障害者生活介護事業所
構造
鉄筋コンクリート造
階数
2階建+塔屋
敷地面積
1367.37 ㎡
建築面積
313.64 ㎡
延床面積
598.92 ㎡
竣工年月
2025年3月
担当者
岩﨑直子 , 山本晋輔 , 山本朋子