作品紹介Works

児童

社会福祉法人今川学園 保育所

既存建物調査資料

建設中の仮設園舎

概要

東住吉区にある保育所の建替計画です。社会福祉法人今川学園は戦前から地域のまちづくり、児童福祉、障害者福祉に尽力してこられた法人です。既存園舎は約50年前に建てられたもので老朽化が進んでいたため、建て替えが必要でした。その反面、長年にわたって蓄積された豊かな住みこなしがあり、既存園舎の使われ方を調査した上で最終の平面計画を決定しました。
既存園舎の解体後に新築工事を行うため、現在は仮設園舎に引越して運営を行っています。

仮設園舎

2階建て以上の保育所を建設する場合、児童福祉法により一定以上の耐火性能が求められます。プレハブ工法ではこの性能を満たすことが難しいのですが、内装工事で耐火被覆を追加するなどの工夫をして、2階建ての仮設園舎を実現しました。これにより、敷地近くにある空地に仮設園舎を建てることができ、引っ越しによる運営への影響を抑えることができました。

用途 利用者像 全体構成

建物の用途は大きく保育所と隣保館(学童保育+地域交流)の二つに分かれます。定員は保育所が178人、学童保育が32人です。基本的には、既存園舎で存在しているそれぞれの部屋の名前をそのままに、配置を変える形で新設園舎のプランを計画しました。各年齢ごとの園児、小学生、親、保育士、地域の子供たち、大人たち、お年寄りたちと、利用者が混在する建物です。多様な利用者がそれぞれの場所で快適であるよう互いに距離をとりながら、かつ交流しあえるようにするにはどうすればよいかを考えました。

北側正面

地上園庭には桜の木(既存)と、観音様の像(既存移設)を配置しています。50年間この保育所を見守ってきた彼らを中心に据えて、周囲を園庭や保育室が取り囲む全体構成となっています。

敷地の北側が広い道路に面しているため、北側がメインエントランスとなりました。市街地のため敷地にはあまり余裕がありません。児童の送迎は基本的に自転車のみで行うため、入口に大きな庇は作らずに建物を北側に寄せて、南側の地上園庭を可能な限り広くとりました。左画像の1階中央が保育所エントランス、右側が隣保館エントランスとなっています。間に事務室があり、両側の出入を目視で管理できます。

フロア構成

園児の送迎や園庭での遊戯を優先して、保育所を1階2階に配置しました。地域住民が来る隣保館の中で、毎日多目的に利用されるいこいの家を1階とし、学童保育室と娯楽室を3階としました。
・各保育室の配置
一般的には、0,1歳児の保育室は送迎負担や転落リスク、避難等を考慮して1階に配置します。しかしその場合、広さに余裕がない敷地では、お昼寝と地上園庭の喧騒がかちあってしまいます。今回は、入学を控えた伸び盛りの4,5歳児の保育室を1階とし、地上園庭や食堂と結びつきが強い配置としました。お昼寝をする0歳~2歳児は2階として、にぎやかな1階とすみ分けをしています。2階への園児の送迎動線ができるだけ短くなるよう、エントランス、階段、EVを中央に配置しました。また、屋上園庭を園児達の一時避難用の場所としています。中央に動線を集めているため、各フロアで見通しがよく、管理しやすいプランになっています。
・保育所のトイレ配置
保育室2室につき一つのトイレを共有とすることで、運用上もコスト上も合理的な計画としました。一般的に、0,1,2歳児は見守りのために保育室を締め切り、3,4,5歳児は保育室を自由に出入りできるように開け放すため、この2コ1のトイレ配置で共用とする時は注意が必要です。トイレを通って園児が出ていく可能性があります。今回は2歳児と3歳児で共有するトイレがあるため、そのトイレは二室に分けて、スタッフだけが出入りできる扉を設けました。

・年齢別の屋外園庭
法人保育所が掲げている「0歳からの健康な体作り」を実現するため、0,1歳児の屋上園庭、2,3歳児の屋上園庭、4,5歳児の地上園庭を計画しました。年齢ですみ分けをしているため、体の発達の違いを気にせず屋外で活動ができます。3階の屋上園庭は、学童と保育所の共有で、仮設プールを設置できる場所です。各園庭はバルコニーと屋外階段でつながっており、扉を開放すれば上履きで移動できる構成にしています。

3つの屋上園庭

3階の屋上園庭

エントランスホール 窓の向こうが地上園庭

食堂、いこいの家、厨房

場所ごとの工夫

・エントランスホール
エントランスに入ると、地上園庭の桜の木まで視線が抜けるように計画しています。南北両側から光が入る開放的な空間となっています。

・全館二足制
保育所計画では、靴の履き替えをどこで行うかが大きなポイントになります。保育室の前で履き替えをする形にすれば下足の範囲が広くなるためプランニングの自由度は高くなりますが、汚れがちになります。今回は衛生面を考慮して、エントランスで全員が履き替える全館二足制としました。エントランスから園庭に行く際に靴の持ち運びが発生するため、園庭側にピロティを設けて、持ち運びの距離が短くなるように計画しました。

・食堂
食育のために今回新設する部屋です。地域住民が使用する部屋(いこいの家)と並べて、一体的に使うことができる配置としました。大人数での早朝保育、料理教室、イベントなど、広く多用途に使えます。隣の厨房との間には窓とカウンターを設けてあり、園児が調理作業をのぞいたり、食育で食材のやり取りをしたりできる形にしています。

絵本コーナー 使い方を限定しないよう、作り付け家具は設けていない

0,1,2歳保育室の備品配置

・2階 絵本コーナー
2階のホールには専用の絵本コーナーを設置しました。精神的な過渡期である2,3歳児のため、保育室以外の居場所を設けました。送迎時に親と保育士が話し合う場所にもなります。








・保育室の中の備品配置
0,1,2歳児の保育室ではお昼寝をするため、備品が多くなります。特に0,1歳児はそれぞれのリズムが不安定で一斉に行動することが難しいため、保育室は明快に三つ(遊ぶ場所・食べる場所・寝る場所)にゾーニングされ、それらをゆっくり回りながら一日を過ごします。保育室の形状は、そのように備品を置いた時に、うまく使えるのかどうかが重要になります。今回は既存の備品をCG入力して、使い方の確認をしました。1歳保育室は午後4時以降の延長保育を行う場所でもあり、一日の終盤には各年齢の子供たちが集まってくるため、その際もこのゾーニングを使ってすみ分けをします。

学童保育室と娯楽室


・3階 学童保育室と娯楽室
学童保育室と娯楽室は、間の間仕切りを遮音性のある可動間仕切りとしており、卒園式など大きいイベントの時には開放できる構成になっています。



育ちあう保育所

保育所の園児が園内を探索すれば、書道教室の作品を見たり、娯楽室での演奏を覗いたり、多様なものに触れることができます。学童や地域住民も、バルコニーや園庭を介して、保育所の様子を感じられます。緩やかにそれぞれがつながり、皆が育ちあう保育所を意図しました。

建築主
社会福祉法人今川学園
所在地
大阪市東住吉区
用途
保育所、学童保育等
構造
鉄筋コンクリート造
階数
地上3階建て
敷地面積
1136.23㎡
建築面積
720.79㎡
延床面積
1518.47㎡
竣工年月
2023年2月予定
担当者
竹之内啓孝 , 亀田学