作品紹介Works

高齢者

社会福祉法人 丸 オービーホーム高丸新築工事

外観北東面

計画概要

計画地は兵庫県神戸市垂水区になります。国有地活用の一環で介護保険施設等を整備することを条件とした事業が募集され、 法人の事業案が採択されました◆1。 もともと垂水区は同法人が設立された土地であり、この地域を拠点として、高齢の方々にきめ細やかなサービスを提供されてきた実績があります。 介護が必要となっても住み慣れた地域で暮らせる場所をつくるという思いから、 今度の計画では特別養護老人ホーム、介護型ケアハウス、小規模多機能型介護事業所、ショートステイと 個々のご利用者の多様なニーズに対応できる施設を目指されています。

◆1 神戸市HP:平成28年度国有地を活用して介護保険施設等を整備する事業者の募集について
URL:https://www.city.kobe.lg.jp/a39067/business/recruit/jigyoshaboshu/28kokuyuuchi_boshu.html    

配置計画

敷地周囲は住宅に囲まれています。 今回の施設建築にあたり地域住民の方々の住環境を損ねることがないように、建物は可能な限り南東に寄せ、 どの方位の住宅からも離隔距離を取り採光や風通しが確保できるように配慮しました。
外構においては敷地の四周に植栽を施すことで地域景観の向上を図り、 駐車場には緑化ブロックを採用し、ここでも景観性を損なわないように配慮しました。 また敷地東側には、当時の基準で築造された既設擁壁がありましたが、 地域の安全性にも配慮し、現行基準に則った擁壁にやり替えています。

外観北西面

地域交流ホール

1階には共用部門に地域交流ホール、利用者部門にはショートステイ、小規模多機能型介護事業所、そのほか 管理部門が配置されています。 地域交流ホールはこの施設のひとつの大きな特徴です。 敷地出入口の近くに設置されており、道路側から室内の様子がうかがえるようになっています。 また、テラスを設けているので屋内の活動が屋外にもあらわれやすいオープンなつくりとしています。 ここでのイベントは、福祉分野に限定せず、 近隣の学生たちの音楽ライブなどいろんな催し物が企画されます。
周辺住民の方々に普段から施設に慣れ親しんでもらうことで、法人の活動を理解してもらえるような工夫をされています。 介護が必要となった高齢の方は施設での生活をイメージしやすいですし、そのご家族も訪問しやすい環境になっています。
地域交流ホールには可動間仕切りが設置されており、イベントの規模に応じて空間の大きさを変えたり、 同時に複数のイベントを開催することもできます。 可動間仕切りをまったく使用せず、エントランスホールを取り込んだ形で使用することも想定しており、 竣工式の時は実際そのように使用されました。 またエントランスホ-ルに面した中庭の床面はゴムチップ舗装になっています。 ここでは子どもたちが遊ぶことを想定していて、転倒しても怪我をしないようにしています。

地域交流ホールに面した屋外テラス

エントランスホール内観

地域交流ホール内観

ショートステイ、特養ユニット

ショートステイは特養への入居を希望する方がおられることも想定しています。 特養ユニットに準じた平面計画とすることで、スムーズに移行できるように計画しています。 ユニット内は職員の見守りのしやすさを中心に計画され、 職員はキッチンでの作業中でも、共同生活室内の様子だけでなく、 居室やトイレの利用者の出入りする様子がわかります。 利用者としても見守られている安心感がある分、 自立的な行動をとりやすい環境と言えるかもしれません。

特養ユニット共同生活室内観

新しい見守りシステムの導入

職員の見守りを支援するユニークな設備も導入されています。 それはコニカミノルタ社の新しい見守りシステム◆2です。 このシステムでは、事業者が必要と思われる部屋(利用者の居室など)の天井にカメラを設置し、職員がスマートフォンを携帯します。 カメラは利用者の動きを追跡しており、”利用者に異常があった場合に” 職員はスマートフォンを通して内部の様子を確認することができます。 異常があった場合のみ職員が確認できるところがポイントです。 カメラは日常的に連続で作動していますが、利用者のプライバシーに配慮して、異常時以外は内部の様子を確認することができません。 カメラのセンサーが身体の状態を常に追跡し、転倒時など異常を検知したときに、それが映像と共に職員に知らされます。 睡眠時においてさえ、呼吸に伴う微細な身体の動きを追跡しています。

これまで高齢者施設では見守りが重要視されてきました。 それは建築的に端的に言えば、ユニット内の見通しのことです。 よく言われるのがキッチンでの作業中に、共同生活室全体が見通せるか、各利用者居室の出入口が見えるかということです。 こうした場合はキッチンを中心としてユニット内の配置がほぼ決定されていきます。 他方で、職員にとって見通しのよい空間は、それを窮屈に感じる利用者がいるだろうとする議論もあります。 そうした要望があるケースでは見通しの悪い空間を意図的に計画することになりますが、 運営側としては利用者に何かあったときに対応が遅れてしまうリスクを抱えることになります。

しかし、コニカミノルタのような見守りシステムがあれば、平面計画の自由度は飛躍的に高まります。 上述した映像は記録・保存されるので、客観性をもった形で転倒時等の状況を法人と利用者家族で共有できます。 運営側もリスクを負わなくて済むので、利用者のことを第一に考えた建築計画を実現できます。 これは両者にとってよいことだと考えています。

今回の計画では、見守りシステムに対して高く評価はしていましたが実績が少ないところに懸念があり、 建築的な見守りのしやすさを中心に構成した平面計画としています。 設備的な見守りの信頼性が高まっていけば、 ハード・ソフトの両面で高齢者施設のあり方が変わっていくでしょう。

◆2 コニカミノルタQOLソリューションズ株式会社 HitomeQ(旧ケアサポートソリューションズ) URL:https://www.konicaminolta.com/jp-ja/care-support/

特養居室内観

見守りシステムの天井付センサー

ケアハウス食堂の眺望

ケアハウス

比較的自立度の高い高齢者の受け皿となるようケアハウス28床が最上階に計画されました。 一番の特徴である食堂は眺望の良い南側に配置され、窓からは明石海峡大橋を望むことができます。 もう1か所中庭のみに面している食堂がありますが、ここは少しコンパクトにつくられていて、 落ち着いて食べたいときに利用します。 利用者はタイプの異なる2つの食堂を、その時の気分に合わせて選ぶことができるようになっています。 また同じフロアには屋上庭園が設けられていますが、 ここは誰でも出入りできるように計画しています。 特養の入居者やご家族でもこの立地ならではのパノラマビューを楽しむことができます。

職員食堂内観

職員のための空間づくり

施設で働かれる職員のための空間づくりにも配慮されています。職員食堂は食事をとる以外にも、気分を切り替えて一息つける休憩場所になるように計画しました。木目調の内装材を使い自然のイメージを演出しようとしたユニットに対して、モノトーンの色彩計画に幾何学模様のアクセントクロスを採用することで差異をつけ、気分転換の一助となるようにしています。

建築主
社会福祉法人 丸
所在地
兵庫県神戸市
用途
特別養護老人ホーム
介護型ケアハウス
小規模多機能型居宅介護事業所
ショートステイ
構造
鉄筋コンクリート造
階数
地上4階
敷地面積
3745.35㎡
建築面積
1839.84㎡
延床面積
6035.57㎡
竣工年月
2019年10月
担当者
岩﨑直子 , 玉井英登 , 山本晋輔