設計コンセプトConcept
精神科
改修での段取り -運用を止めない工事手順-
田淵 幸嗣
使いながら改修では「運用を止めない」を前提にする
病棟を使いながら改修する場合、保護室の利用を止める期間をできるだけ生まないことが計画の前提になります。
完成後の使いやすさだけで改修範囲や配置を決めると、工事中の動線確保・仮設・切替手順に無理が生じ、運用側の対応が増えやすくなります。
そこで、改修範囲の分け方と保護室の配置を連動させ、工事中も必要な機能を確保できる段取りを先に組み立てます。
配置は平面だけの話ではなく、工程と運用を両立させる条件として整理することが、合意形成と計画の安定につながります。
保護室の再配置と改修範囲の分割
本事例は、保護室の設置が多い本館1階を閉鎖し、上階の保護室を改修・新装する方針から始まっています。計画内容は、本館2階・3階の既存保護室の拡張工事と、病室を保護室へ変更する改修工事です。
ポイントは、既存保護室(スタッフステーション隣接)と新装保護室(スタッフステーション前の廊下を挟んだ病室改修)を分けて計画し、改修範囲を意図的に分割したことです。
段取りは「工事の都合」ではなく「運用の条件」として決める
病院を使いながらの改修では保護室を閉鎖できないため、「保護室が使えなくなる状態を作らない」ことを前提に段取りを決めます。
この前提を共有することで、保護室を分けて整備する方針が病院側の合意に結びつき、結果として改修範囲の分割(=段取りの成立)につながります。段取りは、医療の継続性を保つための計画条件として扱います。

保護室の利用を止めないために、既存保護室の拡張と新装保護室の改修範囲を分け、改修手順を先に整理します。
段取りの精度は「運用ヒアリング」で上がる
段取りを成立させるためには、「工事ができる」だけでなく「運用として無理がない」条件が必要です。患者の受け入れ態勢・保護室を使用する患者の状況・治療の流れ・隔離期間・保護室での対応などをヒアリングし、計画全体をまとめています。段取りは工程の話にとどまらず、運用の前提がそろって初めて安定します。
