設計コンセプトConcept

精神科

病棟内における「保護室エリア」について

田淵 幸嗣

保護室エリアは「保護室の増設」ではなく「移行の場」をつくる計画

 保護室エリアの計画は、保護室を増やすことが目的ではありません。保護室から出た患者が、すぐに一般病室へ戻るのではなく、落ち着いて過ごせる環境へ移る「受け皿」を病棟内に用意する考え方です。既存の運用では、保護室から病室へ戻った後に状態の変化が出やすいという論点があり、より丁寧に環境を整えながら移れる場を設けたいという要請から計画が始まっています。

運営方針の変更が、病棟内の構成変更を求める

 本事例では、法人の新たな運営方針として、措置入院・医療保護入院の患者を積極的に受け入れる方針が示されました。
 受け入れ方針が変わると、保護室の室数や位置だけでなく、病棟内での過ごし方・職員の対応場所・患者同士の関係性まで含めて、病棟構成そのものを見直す必要が出てきます。
 ゆう建築設計では、方針変更を「保護室の仕様選定」に直結させるのではなく、まず病棟運用の前提として整理し、空間構成へ落とし込みます。

「病棟構成に準じたエリア」をつくる:縮小版病棟として整える

 病棟の一部を保護室エリアとして再整備するにあたり、求められたのは「病棟構成に準じた保護室エリア」でした。
 エリア内には、保護室4室・個室4室に加え、スタッフコーナー・食堂兼デイコーナー・診察処置室・浴室・脱衣室・汚物処理室・リネン庫を備え、病棟の縮小版として成立させています。
 運用の想定としては、保護室から出た後、エリア内の個室へ移り、個室またはデイコーナーで過ごすことで、刺激を抑えながら次の環境へ移りやすくするという考え方です。

境界(施錠管理)を運用条件として計画する

 保護室エリアの要点は、室数や諸室の寄せ集めではなく、病棟の他の部分との境界をどう扱うかです。
 本事例では、病棟の他の部分とは施錠管理を行い、患者が自由に行き来できない構成とすることで、他患者からの干渉を抑える計画としています。
 この「境界」は建具の話に見えますが、実際は運用条件です。誰がどこで見守り、どこで対応し、どの範囲で生活を組み立てるか。境界条件を明確にすることで、保護室→個室→デイコーナーという生活の組み立てが成立し、病棟全体の安定にもつながります。

平面図比較で読み解く:既存→改修案で何が変わるか

 平面図比較(既存/改修案)のポイントは以下の三点です。

• 保護室を「点」で置くのではなく「エリア」としてまとめていること
• 個室・デイコーナー・処置室等を含めて生活の受け皿を組んでいること
• 施錠管理による境界を運用条件として明確にしていること

 平面図は見た目の変化だけでなく、「保護室から出た後の過ごし方」を病棟の中で成立させるための構成変更として読むと、計画意図が伝わるかと思います。

既存病棟の一部を、保護室・個室・デイコーナー等を備えた「保護室エリア」として再編した計画。保護室から出た患者の移行の場を病棟内に用意し、施錠管理により他患者の干渉を抑える構成としています。

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