作品紹介Works

障害者

社会福祉法人 ひがし福祉会 飛翔の里 第二生活の家 改修工事

建物配置(飛翔の里 第一生活の家と第二生活の家)

改修により、重度化を見据えた空間の再構築を行う

飛翔の里 第二生活の家は、2003年に建設された障害者入所施設です。当時は療護施設として計画された平屋建の建物で、通所事業所を併設しています。 現在、主に重度身体障害者、重症心身障害者の方、30名が利用する入所施設ですが、建設から15年以上が経過し、利用者の障害の状況も重度へと変化していく中、より利用者の生活に寄り添うものにするため、改修を計画しました。利用者の重度化に対応するために、生活のエリア分けを見直し、空間構成や利用者の集まる場所、個別で過ごす場所を再構成した改修計画です。

改修前の建物の構成

重度化に対応できなくなったエリア分けの暮らし

既存の建物における入所エリアは、利用者の居室と3か所に分散配置されたデイルームで構成されています。デイルームごとのまとまりを「通り」とよび、当初は「通り」ごとの小グループでの生活を想定した建物計画となっていました。全員で集まれる食堂・機能訓練室のほか、各通りに備えられたデイルームで食事することも想定されていました。 年月が経過する中で、高齢となられた利用者や、重度身体障害者・重症心身障害者の利用者が増加し、大半の方が身体に合わせた特注車椅子を利用されるようになりました。特に日中、支援員の見守りが不可欠な利用者は、一か所のデイルーム(デイルーム3)に集まって過ごすようになっていましたが、小グループの想定のデイルームでは手狭となり、利用者へのケアのスペースとしても難しくなってきました。 これらのことを踏まえて、3つのテーマにそって改修計画を進めていきました。

1.利用者の日中活動の充実のための環境整備       ~リラックスルーム~

既存では重度身体障害の利用者の生活動線が集中しており、各通りにあったデイルームの在り方を見直しました。 大型の車いす利用者が多い中、日中の活動の巾を広げられるよう、利用者が集まって活動の中心となる場所を既存の中央ホールと隣接する機能訓練室としました。機能訓練室は「リラックスルーム」とし、中央ホールと一体の空間となることで、利用者が無理なく集まれる空間となります。 ここは食堂や浴室など生活の中心となる場所で、生活ゾーンである各通りへとつながる重要な場所です。 中央ホールとのリラックスルームの間仕切りの腰壁は、4枚引戸で全開できるようにし、大きなスペースを確保できるようにしました。引き戸のデザインは、高さや大きさが違う窓がついており、様々な体勢の利用者が、いろんな高さからお互いに視線を交わすことができます。 リラックスルームには新たにキッチンを設置し、入浴後に利用者が水分補給を行えるようにしました。

2. 個ですごす空間の創出 ~スヌーズレンルーム・多目的室~

 行動障害のある仲間(利用者)のために「個」に配慮し、スヌーズレン、クールダウンを目的とした多目的室を設けます。身体的に重度の利用者だけでなく、自閉症の強い利用者のための空間としても個別で活動できる空間とします。

スヌーズレンルーム:中央ホールに面して大きく扉が開き、車いす利用者も入りやすくしています。

多目的室:少人数で作業に集中するための部屋で作業用のカウンターと休憩のマットのコーナーを備えています。

3.入浴の場の改善

入浴に関しては、利用者の親御さんの協力もあり、毎日入浴することを実践されていました。ところが、支援者の高齢化がすすんだため、利用者が安全に快適に入浴するために機械浴槽の整備を行うこととしました。 毎日入浴するという日課が継続できるよう、設備とスペースの見直しや支援員・介助方法などを検証し、利用していない一般浴室を取り込んだ改修計画としました。異なるタイプの機械浴室を2台設置し、それぞれの浴槽で、脱衣→入浴→着衣→湯上りのスペースが連続する浴室プランです。支援をする人が入浴介助を助け合えることも目的としています。各浴槽エリアもカーテンでしきり、プライバシーの確保をしながらも支援員相互の連携をとれるようにしました。

同時に複数の利用者の入浴を支援する動線を検討

脱衣室とリフト浴のエリアを一つの空間で計画

建築主
社会福祉法人ひがし福祉会
所在地
岐阜県中津川市
用途
障害者入所支援施設 定員:30名
併設サービス 生活介護 定員:40名
構造
鉄筋コンクリート造
階数
平屋建
敷地面積
7816㎡
建築面積
2257㎡
延床面積
2128㎡
竣工年月
2020年3月(予定)
担当者
岩﨑直子 , 山本晋輔