Design StudyDesing Study

高齢者

見守りシステム2023

はじめに

 特養計画に際して、見守りシステムの導入は必須の検討事項になっています。 様々なメーカーが自社の強みを生かした機器を開発しており、近年は非常に高性能で多機能な製品が展開されています。その一方で、選ぶ側としてはどの機器が最適なのか判断しづらい状況になっているとも言えます。本稿では、見守り機器に期待される役割と、大別した3種類の機器の特徴をそれぞれご説明します。

高まる見守り介護の重要性

 特養は入居者のプライバシーを重視する観点からユニット型が増え、個室化が進んでいます。誰の目にも晒されない環境は日常生活を送る上では安心が得られるかもしれません。しかし、安全性という点では無視できない課題があります。職員側からすれば、個室はそのまま施設内の死角になってしまうということです。個室で事故が起きても、職員は容易に気づくことができません。
 個室と職員をつなぐものとして、呼出装置の設置が義務付けられてはいます。いわゆるナースコール・ケアコールと言われるものですが、この機器をうまく使える人がいまの特養でどれくらいいるでしょうか。認知症の人、転倒したときなど、必要な人が必要なときに使えない場合の方が多いのではないでしょうか。それでも何かあった場合は施設側の責任が問われてしまいます。個室化が進む特養の介護現場では見守り自体のウェイトが非常に大きくなっているのが現状です。

介護負担を軽減する見守り機器

 近年の見守り機器は、これまでと一線を画す非常に高性能なものになっており、介護負担の軽減にも大きく貢献しています。おおよそ共通した特徴は以下の通りです。

①転倒に至るまでの起上り、端座位などの予兆動作を検知・通知することで転倒を予防できる。
②各室ごと入居者の状態に合わせた通知設定ができる。
③各職員がスマートフォン端末を持つことで居室の映像を手元で確認でき、訪室の必要性、優先順位の判断ができる。
④映像の記録により事故原因の把握、客観的な資料を用いて入居者家族への説明ができる。
⑤機器の精度向上による誤報の低減

見守り機器を知る/選ぶ

 多種多様な見守り機器がありますが、大きくは3つのタイプに分かれます。Aタイプ、Bタイプ、Cタイプとしますと、「Aタイプ:行動検知を主軸として状態検知まで可能で、かつ呼出装置を搭載した製品」、「Bタイプ:行動検知に特化した製品」、「Cタイプ:状態検知を主軸として行動検知が可能な製品」がそれぞれの特徴になります。行動検知とは、目視で確認可能な入居者の行動を検知できることを示しています。具体的には起上り、端座位、離床、転倒などのことです。状態検知とは、目視ではわかりづらい入居者の呼吸や心拍などの状態を検知できることを示しています。


(1)Aタイプ:行動+状態検知のほか呼出装置を搭載したオールインワンタイプ
 表1にAタイプにあたる2機種をまとめています。Aタイプのカメラは行動分析機能を有しています。行動分析を有しているカメラは、常時対象者との距離などを計測して入居者の状態を判断しており、転倒時の急激な身体の動き等があればそれを異常と認識することができます。このカメラに組み込まれたセンサーの標準検知範囲は、個室全体をカバーしていますので、Aタイプは"個室の死角"をなくすことが可能な製品となっています。異常の検知から通知までの速度が非常に速く、転倒防止にも非常に効果的な製品です。
 この2機種の性能に関して最大の違いは、ユニット内の食堂など共用部分での使用が可能かどうかです。No2は、個室で使うものと同じ見守りカメラを共用部分に設置し、1台の画角が約4m×6mなのですが、この範囲内での転倒・うずくまりを検知することができます。
 そのほか、Aタイプでは呼出機能を搭載している点が特徴で、別途他メーカーの設備の採用・連携を検討する必要がないところもメリットとしてあげられます。


(2)Bタイプ:行動検知に特化し設置・移設が容易なタイプ
 このタイプは行動検知に特化し、生体センサーと呼出装置を搭載していません(表2)。機能がシンプルな分、専用サーバーが不要で、見守りカメラ本体とスマートフォンがあれば即座に導入が可能です。カメラの設置はベッドの形が自動検出されるため、手間はほとんどかかりません。移設も容易なので、ユニットの状況に応じて必要な個室だけに設置するといった使い方が可能です。
 行動検知及び転倒防止対策の性能はAタイプとほぼ同じですが、標準検知範囲に違いがあり、Bタイプはベッドとその周辺だけです。そのため、個室の出入口付近で転倒したといったケースでは検知することができません。この点は職員が、入居者の状態や習慣を把握するなどしてカバーする必要があります。
 コストの面では1床あたり15~25万円程度低いですが、呼出装置の設置が別途求められますので、その点を併せて考慮する必要があります。


(3)Cタイプ:精度高いバイタル管理で看取りや重度の方に最適
Cタイプは状態検知に優れており日常的な体調管理を重視する場合は、このタイプが最適です。シート状でマットレスの下に敷く分、身体に近いところで呼吸、心拍のバイタル情報を精度高く収集できるところが長所です。十分な睡眠がとれているか、昼夜逆転していないかなど睡眠データの収集も可能で生活習慣の面からも入居者の体調を把握できます。とくに看取りの時に、こうした情報で本人の状態がわかれば、職員の心理的な負担も軽減できます。Cタイプは身体的自立度が低い方に対しても、バイタル情報を中心とした見守りを可能としたもので重度の方の見守りに最適な機器と言えます。
 2つの機器に項目上の性能の違いはほとんどありませんが、呼出装置のところに違いがあります。NO.5は他社製のナースコールと連携が可能ですが(NO.6も連携可能です)、1床当たりの本体価格がほぼ共通なので、自社製か他社製の呼出装置を使えるかでコストの差が出てきます。

おわりに

 これまで見てきたように、見守り機器それぞれに得手不得手な部分がありますので、入居者像や介護理念に合わせた機器を適切に選定することが重要になってきます。他方で、見守り機器をいざ導入したとしても、入居者に合わせた適切な設定ができるまでは時間を要するとされています。導入直後は頻回に通知が来るなど、かえって介護負担が大きくなるケースも珍しくないようです。これまで培ってきた介護の仕方を変えることが求められると同時にどのような介護環境を目指すかということにも深くかかわってきます。しかし、見守り機器をうまく活用できれば、それだけ職員/入居者双方の負担が減り安心して働く/住むことが可能になります。私たちは、様々なメーカーの見守り機器の動向を把握するように努めています。ここで紹介したのは、私たちが調べた範囲のごく一部です。見守り機器を実際に導入された法人様に対して、ヒアリング調査なども行なってきました。上の表の詳細や、その他の見守り機器についてお知りになりたい方は弊社までお問合せください。