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障害者

重度障害者のトイレ 天井走行リフトの利用

1 天井走行リフト

 福知山学園では車いす使用者の移乗に天井走行リフトを使用しています。
その理由を福知山学園理学療法士吉田さんは下記のように書かれています。

「当園では車イスのご利用者の移乗に天井走行リフトを積極的に使用しています。ご利用者用トイレにも数か所リフトが設置されています。移乗が全介助レベルの車イスのご利用者の中には、トイレの意思表示される方や便意は曖昧ながらトイレに座ると腹圧が掛けやすくなり排便が促されるご利用者も居られます。
 これまでの一般的な介護手法でこういったご利用者をトイレ介助する場合、二人介助で一人が前方から抱え、もう一人が後方から着衣を降ろす方法が摂られることが多いように思います。

 当園でも同様の方法やスライディングボードでストレッチャーに移ってもらい、着衣を降ろしてから前方介助で便座に移っていただく方法などを行ってきましたが、これらの方法は職員の技術の習熟度合に差が出やすく、ご利用者の苦痛や職員の腰痛等のリスクにつながりやすいと思います。この点でリフトの使用は、移乗中の職員の身体的負担は全くありませんし、基本的なリスク確認を怠らなければ職員個々の大きな技術の差を生じることもありませんので、抱えられる時の苦痛もなく、しかも安定してご利用者の移乗ができる優れたツールであると考えます。

 とは言いましてもリフトした状態での着衣操作は多少コツが必要ですので、トイレ内にストレッチャーを常備し、横になって着衣を下ろしてからトイレに座っていただくリフト方法も選択できるようにしています。
また、このストレッチャーは、トイレに誘導してみたものの、既に失敗されている場合に、その場で後始末、更衣が可能で、居室に戻る手間を省くことにもつながります。」

 この考えに基づいて設計したトイレが、福知山学園新みわ翠光園で実現しました。デザインスタディー「重度障害者のトイレ 洗体もトイレの重要な要素」で説明したトイレです。

 

2 トイレ内に設置する設備

 このトイレでは各ブースに天井走行リフトが設置されています。さらにトイレ内には下記の設備が用意されています。

・昇降式ストレッチャー

・立った状態でお尻を洗うための手すり

・床に落ちた便を流す失便処理装置

・お尻を洗うためのシャワー

 

3 天井走行リフトを使っての排便、洗体方法

 このような設備を使って立位の取れない方のトイレでの排便、洗体はおおよそ下記のように行われます。

1. スタッフが利用者の車いすを押してリフト設置トイレブースに向かう。
2. トイレブース内で車いすに座った状態でスリングを付ける。
3. リフトでスリングを付けた利用者をリフトアップする。
4. 失便が無い場合は、通常リフトアップの状態でズボンと紙パンツや紙オムツを下ろして便器に下ろし
 て、用を済ませる。再びリフトアップしてズボンと紙パンツや紙オムツを上げて車いすに戻る。
5. 利用者の体型や状況によりリフトアップの状態で脱着衣が出来にくい場合は、一度ストレッチャーで
 横になって脱着衣してから便座、車いすに移動する。
6. 失便がある場合は汚れ具合によるが車いすからリフトアップ後ストレッチャーで横になってきれいに
 洗体する。

 

動画:天井走行リフト トイレでの移乗

 

4 トイレの床は湿式にするのか

 最近の高齢者、障害者のトイレは乾式がほとんどです。しかし障害者の入所施設のトイレでは湿式で行う場合もあります。

 これは床材を従前の湿式トイレで使われたタイル以外の材料の選択ができることになり、湿式でも雰囲気の良いトイレを作れることが判断に影響を与えています。

 福知山学園でもこの10年試行錯誤してきましたが、現時点での方針が吉田さんレポートに書かれています。

水洗い清掃に配慮したトイレ

「先述したように、多くのご利用者の方は自分でトイレに行かれ、排泄動作は自立されていますが、下剤を服用されている影響で、間に合わずに失敗されてトイレ内が汚れたまま居室に戻られ、足跡が残っていることや、既に失便されているご利用者の紙パンツ等を交換する時に溢れて床に落ちることが多々あります。そのため、トイレは衛生保持のために毎日水洗い清掃を行う必要があります。」

 湿式トイレというと、タイル張りのトイレをイメージする方も多いと思います。最近の湿式で私たちが使うのは塩ビ系床材です。性能的には全く問題ありません。乾式トイレと同じ雰囲気を作り出せます。