作品紹介Works

障害者

一般社団法人えがおのいえ 
障害者グループホーム えがおのいえグループホーム 

えがおのいえ 代表のKさんから、設計の依頼を受けたのは2023年の秋のことでした。
障害を持つご子息の入居も視野に入れたグループホームの開設のため、計画敷地を探しているところからのご相談でした。
まずは0次案(土地以外の要望を整理した案)の作成にあたり、グループホームの建設に際しての思いをつづった文章をいただきました。

【Kさんから:設計にあたり利用者のための要望】

代表のKさんから次のような要望書をいただきました。

『私は、古い入所施設などで仕事をし始めたとき、どうして、ここはこんな造りなのか、ここがこうでなかったら、どんなに仕事し易いかと感じることが多々ありました。 支援程度が高い方々にとって、「状態把握」という仕事は支援の中で最も重要で最も大変です。 状態把握という要素が高いため、支援者の作業の効率が高くないといけないと考える一方、支援者の都合ばかりでなく、入居者が楽しく・落ち着けて・好きという場所であることを考えると、全員を常に同時把握できるような構造にして、常に見渡せるようにも出来ないだろうかとも思うのです。 例えば、このようなことがあります。 息子は、認知や理解力は相当に低いのですが、多動、拘りは強いです。冷蔵庫は宝の山ですきを見ては、好物を一気食いして大変です。 冷蔵庫が見えない、開けられないようしてしまえば、出来なくなりますが、複数の理由でそうはしていません。 これだけ知的な障害が重いと何をして過ごすか(余暇)ということも微妙です。 私の個人的考えですが、親や支援員の目を盗んで、何かできたことは、数少ない本人が「見張ってる人に勝った!」という経験です。 数少ない、勝つ/達成する経験です。 「してやったり!」という満足であり、ゲーム/余暇であり、生活(人生)の大事な一部分でさえあるように感じるのです。また、「ダメ」と言って、真剣にかかわってくれる実感が嬉しいようにも思えます。 もちろん、これによって我が家のなかでも大騒ぎで、大変ではあります。 これは、支援技術的には、「支援者が反応するから強化されるので無視すること」と教えられたりもしたりもしますが、全てを出来ないようにして、更に無視して反応しないということは、どういう意味になるのかとも個人的には思います。』

支援者・事業者である前に、障害のある子供さんを持つ親であったKさんの目線に“はっ”とさせられました。  ご本人が「自分のいえ」として愛着を持てるちいさなグループホーム。これがこの計画のスタートとなりました。

最初のお話をいただいてから半年後に、建設地が決まりました。 その土地はあたらしい住宅地の一角にあり、梅畑に面した場所にありました。

地鎮祭

敷地隣接の梅林

【6人の若い利用者のための住まい】

えがおのいえは、1階を男性ユニット、2階を女性ユニットとして、それぞれ3名の小規模グループホームとしています。 それぞれのユニットは、玄関から分かれています。 内部でスタッフのみが上下階相互の往来が可能です。(小型エレべーターを設置) 各ユニットには食堂を兼ねたリビング、WC、洗面・脱衣室、浴室、を配置しています。 キッチンは1階のみに配置しています。

このグループホームは、新たに創設された重度障害者の迎え入れを前提とした東京都補助金事業を活用し整備されました。 条件は、1ユニット 3名の場合1名重度障害者入居とし 1室あたり9.9㎡以上(収納は別途)確保が必要となります。(通常のグループホームの1室あたりの基準面積は7.43㎡以上) しかし、今後部屋替えの可能性を考慮して全ての部屋面積を9.9㎡確保する計画で進めました。

 リビング・ダイニング:3人の利用者が他人をあまり意識せず

               過ごすことができる居場所を設定

個室の様子:窓からは梅畑が見えます。

入居予定の利用者の方は20代中ばで、同じ特別支援学校を卒業されています。 設計時に、生活の上で配慮するべき点や建築対応を打合せし、初期設定と、いずれハード面で 手を加えていく部分とを整理しました。建築対応は入居者の方の生活対応情報リストをつくり、設計に取り組みました。 少人数だからこその個別対応を考えましたが、最終的に6室は共通のつくりとなりました。 安全のための見守りカメラなどは設置しましたが、特別な作り込みはせず、利用者の生活とともにつくられていくホームとなっています。

Kさんからの言葉

設計の打合せのなかで、印象に残ったKさんからの言葉を記します。

『支援の態度・考え方は、自分の中でも常に揺らいでいます。正解は無いように思いますし、ゆらいで変化し、相手によっても、状況によっても変わります。いたずらして、「○○さん、それやったらあかんやろ。何回ゆうたらわかんねん。(関西弁バージョン)」と、何度も言ってる、言われる、にぎやかで騒ぎがある。おせっかいな点もあるこんな情景が、楽しみも限られている自分の息子のような人の生活に彩りや潤い、喜びを与えているようにも思うのです。』

外観:近隣の住宅地に溶け込むような外観デザインで計画しました。

えがおのあふれる家に

この場所は、春には梅の花が咲き香り、夏には実がなる。季節の移り変わりを身近に感じられるところです。 この眺望と環境を6人の利用者が十分享受できる環境をつくりました。 また、家庭菜園等で育てる楽しみや季節を感じてもらえるよう庭の整備も行いました。 様々な出来事がこのグループホームの彩りになる。 そのような包容力のある住まいに、利用者・支援員のえがおがあふれる家となることを願っています。

建築主
一般社団法人 えがおのいえ
所在地
東京都町田市
用途
障害者グループホーム 定員 6名
(男性3名・女性3名)
構造
木造
階数
2階建
敷地面積
283.69㎡
建築面積
109.84㎡
延床面積
216.15㎡
竣工年月
2025年12月
担当者
岩﨑直子 , 秦智子 , 矢木智之