作品紹介Works
障害者
社会福祉法人京都総合福祉協会 洛西ふれあいの里福祉施設再生事業(後半)
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3期工事:施設内を機能整理することにより増築をせずに空間を捻出し、居住環境整備を実現(更生園、療護園)
施設内にグループホーム的空間を創出(更生園個室ユニット整備)
更生園では知的障害のある利用者(定員60名)が主に暮らしておられ、約半数が自閉スペクトラム症があります。落ち着いた環境を好む方、活発に動き回る方様々な方が一緒に暮らす中で既存建物のレイアウトでは居室環境上の住み分けができず、グループホームを建てて地域移行し定員減にしようにも手頃な土地を近隣では入手できないことや、京都市の福祉計画としても定員をすぐには減らせないという事情がありました。一方で、日中は半数以上の方が建物外、敷地外へ出かけるため作業室は面積的に余裕があるという状況が生まれていました。
作業室は2階にありましたが、外部にバルコニーがあり、屋外階段経由で直接屋外に出入りできることに着目し、他の利用者との関わりが多いと行動障害につながりやすい方、穏やかな環境であれば自立的な生活を組み立てやすい方を中心に5人のユニットをつくり住み分ける環境を整備しました。施設内とは扉の開閉でつながりつつ、独立した入口を備えることでグループホーム的環境をつくる試みとしました。居室は利用者が入れ替わることを想定して設備を埋込みとし、壁を杉板貼とした重度対応居室とそれ以外の2タイプを計画しました。このユニットでは支援員が滞在、入室する回数を減らすことで利用者の暮らしが穏やかに送れることなどを目的として見守り機器を導入しました。見守り機器は居室全体が検知できるほか、共用部も検知の対象とできるシステムとしてエイアイビューライフを推薦し、選定に至りました。

更生園 改修前2階男性エリア

更生園 改修後2階男性エリア

改修後個室ユニット 食堂周り

改修前作業室 ハイサイドライトは改修後も活用

個室ユニット 標準タイプ居室

個室ユニット 重度対応居室 洗面は常時「開」か「閉」か選択可能
計画で考えたこと、採用したこと
・共通の仕様として居室内の洗面については扉を設置して、利用者の特性により開け放しもしくはスタッフが立会いした時のみ開けて使うかを施開錠で選択できるようにしました。
・換気スイッチは入/切をスタッフ側で管理できるようキースイッチタイプを採用
・居室内洗面スペースの上に季節の着替え等を収納できる天袋を計画
・キッチンは独立タイプとし、施錠管理できるようにしています。将来的にはカウンターに炊飯器やスープジャーを設置して、セルフ式でそれぞれのタイミングで食事が取れる方式も採用できるようコンセント回路を多めに準備しました。
その他2階男性エリアの環境整備として、2期の設備更新で不要となったボイラー室を居室へ、洗面エリアの一部にシャワーを新設する改修を行い、3期で作業室を個室ユニットに改修した代替の部屋として、現在の活動規模に見合った日中活動室を空き居室になった3室分を活用して整備しました。大半の利用者は日中敷地外の事業所へ出かけて行きますが、支援の配置で敷地外に出ることが難しいユニットの利用者は、一旦屋外階段を出て、敷地内を散歩して別の屋外階段から日中活動の部屋に移動する動きによって施設内ではありますが昼夜分離を実現しました。

更生園 個室ユニット整備で空いた居室3室を活用して日中活動室を整備

日中活動室スタッフエリア
医療ケアの集約とプライバシーの両立を目指した環境整備(療護園医療ケア居室整備)
療護園は身体障害のある利用者(定員50名)の暮らしを支えておられ、知的障害と重複されている方、医療ケアの必要な方、中途障害による高次脳機能障害のある方など様々な利用者が一緒に暮らしておられます。一方で居室は4人部屋と2人部屋が多くを占め、個室は数室しかないという状況でした。個室化に向けて増築を行う充分なスペースが無い中では個室を増やすことはできないため、医療ケアが必要な方を集中的に介助・支援する部屋を新設することで、既存の4人部屋を可能な限り3人部屋に構成しなおしてゆとりを持たせるという、今の環境をベースに生活環境を改善していく改修を行いました。
新たに整備する居室は医療ケアのしやすさに着眼し、レイアウトや広さを考慮して3人部屋とし、2室の間の扉を開け放すことで一体に見守りができるようにしました。広い方の居室にスタッフの準備スペースと流しをつくりました。流しでは経管栄養の容器の下洗いのほか口腔ケアのコップ洗いやタオルを湿らせるなどの使い方を想定し、経管栄養の栄養剤の準備及び容器の消毒洗浄は医務室で行うため、吊戸棚は設けず代わりに壁面に容器チューブを掛けられるフックを準備しました。

療護園 浴室エリア改修前

療護園改修後 医療ケア対応居室を整備

改修後 吹抜けはルーバーを設置して明かり要素として活用

スタッフエリア周り 右手奥緑色の扉で隣室とつながる

改修前の一般浴室 ガラスブロックは修繕して再利用

敷地内通路に面した居室外部は生垣で目隠しを設置
医療ケア対応居室の対象者6名の内、5名は経管栄養の方で、食堂への移動がないことなどから多くの時間を居室で過ごされる傾向があります。その状況を踏まえて利用者の環境として下記のことを意識して計画しました。
・ベッドで横になっている状態でも外の景色、天候のうつろい、風を感じられる環境とすること。特に一般浴室の時にあった吹き抜けと高窓は排煙窓として機能する他に、下部に光を散乱するルーバーを設けることで室内でも外部の天候の変化(明暗)をダイナミックに感じ取れる要素として活かしました。
・カーテンは遮光でかつリターン縫製とし、就寝時は充分に落ち着いた環境をつくること
・天井のダウンライトはまぶしさに配慮、ベッドのブラケットライトは調光付き間接照明タイプを採用
・個々の空間の彩りとして、一人一人のベッド周りの壁、天井クロスを貼り分け
・私物を十分に置けるスペースを確保。(カーテン内側で一人あたり8~10㎡/スタッフエリアを含めると一人あたり約16㎡)
次に、スタッフにとって支援、介助しやすい環境として下記のことを考えて計画しました。
・各ベッド周りで照明、換気操作が完結できること。(就寝時はスタッフエリアで一括消灯)
・コンセント高さがベッド昇降時に邪魔にならず、かつ酸素、吸引器使用時に使いやすいこと
・ベッド横にリクライニング車いす及びオムツ交換専用カートを寄り付けて介助できること
以上の工夫を組み合わせて対象となる利用者を一つのエリアに集めることによる医療ケアの充実と、ベッド間の距離確保によるプライバシーへの配慮の両立を目指しました。結果、医療ケアが必要な方の3人部屋を2室(6名分)新たに整備したことで既存4人部屋を6室分3人部屋にすることが可能になり、既存の居室環境も向上します。
増築をせずに居室を整備するスペースについては、ガス給湯方式の変更(貯湯式から瞬間湯沸式)によりボイラー室を廃止し、一般浴室については高齢、重度化により自力で入浴される方がいなくなっていたことから機械浴へ統合することでスペースを捻出しました。改修により機械浴室のスペースが現状より狭くなることについては利用者とスタッフの流れを細かくシミュレーションして改修後の広さでも運用ができることの確認を行いました。
再整備計画で実現したこと
1期から3期までの全体を通して機能拡充のための最小限の増築を除けば既存の作業室、ボイラー室、身体の重度化によって使わなくなった一般浴室スペースを有効活用して居室エリアを拡張しました。既存建物には社会制度や利用者の状態が変わったことで時代に合わなくなってきている面がある一方で、長年住み、使いこなしてきた蓄積があります。これまでであれば社会的寿命を理由に建替えに進んでいたところを、鉄筋コンクリート造で躯体寿命が長い点を考慮し、外壁塗装や防水等の更新により延命活用し、利用者視点で使い勝手を改善更新することで社会寿命も延長できます。勿論その計画の実現には物理的な建物の状況把握から利用者、スタッフの使い勝手の聞き取りまで、かなりの根気と手間がかかります。そして敷地の制約、コストの制約から実現を見送った項目もありますが、目的を明確化して増改築でできることを最大限追及し、既存をベースに状況に対応した新たな要素を付加していく手法で再整備計画を実現しました。4施設共使いながらの改修による工事では、施主、設計監理、施工三者の密な連携に加えて、工事期間中はスタッフ、ご利用者に多大なご理解とご協力をいただきながら完成に漕ぎ着けることができました。

隣接の公園緑地越しに授産園新館を見る

療護園中庭に駐輪場と大和塀を整備
- 建築主
- 社会福祉法人京都総合福祉協会
- 所在地
- 京都府京都市
- 用途
- 児童福祉施設等(障害者入所支援、障害者通所施設)
- 構造
- 鉄筋コンクリート造 一部鉄骨造
- 階数
- 地上2階建て
- 敷地面積
- 12,162.35㎡(4施設合計)
- 建築面積
- 5,403.35㎡(4施設合計)
- 延床面積
- 1期工事 屋根、外壁更新各5,000㎡、防水更新約1,500㎡、駐車場整備約650㎡
2期工事 授産、デイサービス増築約250㎡、療護園、更生園増改築約250㎡
3期工事 改修約1,200㎡(4施設の合計/空調更新のみの面積を含む)
- 竣工年月
- 2026年2月
- 担当者
- 清水大輔 , 山本朋子


