作品紹介Works

透析 / 診療所

竹沢内科歯科医院

北東より見る. 機能別に3つのボリュームに分節した外観.外壁はすべて窯業系サイディング材を採用. 施設然とした雰囲気をなくしたいとの意向から、最終的には数種類の木目柄を組み合わせたボーダーを大胆に使用した.

伊賀上野城にほど近い中心街のテナントビルにおいて、長年、歯科、内科・腎臓内科・人工透析医院を運営されてきたが、法人が新体制になったのを契機に、新たな敷地で移転新築を行うこととなった。
 計画敷地は、田園地帯の一角に位置し周囲よりも地盤が低いため、水害対策として、建物を道路側に寄せて配置し、敷地奥に向かってスロープを上がりきった位置にエントランスを設けている。敷地内には可能な限り駐車台数を確保することが求められた。確保した計34台の駐車場の利用率は高く、夜間も就労しながら透析治療を受けられる方の来院で約半数が埋まる。
 これまでのテナントビルよりも施設規模を拡大し、1階を歯科、内科・腎臓内科、2階を人工透析部門とした。透析ベッドは17床から30床に増床し、ワンフロアに配置している。

・フロア構成  
1階 内科・腎臓内科 / 歯科 / 管理部門
2階 人工透析(30床)/ 管理部門

内科・腎臓内科

明るく安心感のある空間が求められた。壁・床に用いた木目調の内装材は、チープに見えないよう、やや濃い目の色合いとし、光沢が少なく彩度を抑えた落着きのあるものを選定した。明るい色を選定する場合、メープル調の木目柄を使用する場合もあるが、施設然とした雰囲気になる嫌いがあるので、本計画では採用していない。 造作のカウンターは、外壁で用いた木目柄ボーダーのデザインモチーフを踏襲している。

1階総合待合に置かれた水槽 水槽奥の窓越しに見えるのは風除室.どちらの部屋からも水槽を観賞することができる.

歯科

最先端のセレック治療法を導入した歯科では、清潔感・安心感はもとより、見た目の楽しさ、新鮮さが求められた。
診察ブースは完全個室とせずに緩やかに分節する必要があったため、床から天井まで通した木製の格子によって見る角度によって視線を調整しつつ半個室化することを提案した。
くつろぎを提供する待合の床材はへリンボーン模様を使用したのに対し、診療行為の行われる診察ゾーンは濃淡の木目柄をリズミカルに繰り返すことで、空間の質を明確に分け、また視覚的変化を楽しんでもらうよう意図している。
ブース間は天井まである大型のガラスで仕切ることで、隣のブースの床材が見通せるよう視覚的な広がりを持たせた。また、ガラスにグラデーションフィルムを貼ることで診察台の高さでは視線が通らないよう調整している。

廊下と同様格子をデザインモチーフとしている受付カウンターは格子の裏に照明を仕込むことで、 柔らかい光を醸し出す。

透析室

ワンフロアに透析ベッド30床(内、個室2床)を収めた透析室は、無柱空間を採用した。横幅14m×奥行16m程度の空間をスタッフステーションから一度に見通すことができる。
外光が入る上、天井も2.75m(折上天井上部で3.10m)と高いため、明るく開放感がある。
個室は感染症対策室とし、通常の透析室への出入口とは別に単独の出入口を確保している。
(右上)明るく柔らかい雰囲気の透析待合。左手に更衣室が並ぶ。右手に見えるのが透析室の出入口。待合にて検温後、体温が高ければ感染者用ルートから直接個室に行くことが可能。
(右下)中央に柱がなく開放的な室内の様子。人の動きを確認しやすく、監視装置のパトランプの視認性もよい。ベッド間の空き寸法は約1m確保している。

空調システム

既製品を使用することで、ローコストながらベッド到達時の風速を抑える空調システム(ゆう設計空調)を採用。設計段階で透析室全体の温度分布・風速・気流を3次元空調モデルを用いて検証しながら、機器能力や天井への取付位置を決定した。
(右)ベッド高さでの、空調による風の到達速度を検証した例。ベッド到達時の風速は0.2m/s以下でドラフトを感じない。他にも、様々な熱負荷を考慮した室内全体の温度分布などを検証している。
竣工後の検査では、設計段階で想定した結果が得られていることを確認した。今後も1年を通じて現地にて温度・風速の測定を継続予定。

芸術家・デザイナーの方にご協力いただきました

外来トイレの手洗器および歯科のドレスルームに 設置した洗面器は、事業者様のご紹介により、野村 豪人(豪人窯) 様にご担当いただきました。
おおまかな形・サイズ・家具との納まりなどを打合せながら、デザインについては、野村様にお任せしました。
柔らかくもあり力強くもある作品の存在感が、空間を引きたてます。
https://goujin.jimdo.com/

上左:男子トイレ“丹波焼 黒釉” 手洗器
上右:女子トイレ“丹波焼 藁白” 手洗器
下:歯科 ドレスルーム“丹波焼 黒釉” 洗面器

サイン

一部サインは、事業者様のご紹介により、POTS DESIGN 様にご担当いただきました。
ほぼすべてのサインは、現地にてフリーハンドで描かれています。意外なことに、文字やイラストはパソコンを一切使用されないそうです。バイクの装飾、店舗サインなどを数多く手がけられています。
http://potsdesign.exblog.jp/

上左:歯科 案内サイン 上右:歯科 ドレスルームサイン 下:歯科 入口サイン

建築主
医療法人 友和会
所在地
三重県伊賀市
用途
透析・歯科・内科診療所
構造
鉄骨造
階数
地上2階
敷地面積
2666.13㎡
建築面積
722.06㎡
延床面積
1210.33㎡
竣工年月
平成26年7月
担当者
相本正浩 , 木下博人