作品紹介Works

病院

丹後中央病院第Ⅳ期増築計画

工事現場遠景。中央付近が町の中央を流れる小西川

概要

公益財団法人丹後中央病院は、日本海に突き出した丹後半島の根元、峰山町に位置します。最寄り駅は北近畿タンゴ鉄道の峰山駅で、周囲を山々に囲まれた盆地形状の、やや高台にあります。町の中央には川が流れ、田んぼと共に美しい風景が広がっています。

丹後中央病院は、“自分たちの健康は自分たちで購う”という地元住民の理念のもと、昭和17年に地域唯一の総合病院として設立され、地域と共に歩んでこられた病院です。 5年程前(平成20年)に、建築基準法の法改正により、増築の法的整理が難しくなった時期にお話を頂いて以来、E棟(平成21年竣工)、B棟(平成22年竣工)、職員寮(平成23~25年竣工)と継続して仕事をさせて頂きました。

その間、病床数が160床から306床へと、驚異的なスピードで展開を続けてこられました。院長先生によると、「丹後中央病院に来れば一通りのことは診てもらえるという状態にするのに必要な規模」とのことでした。 以下、構想段階から始まって設計、現場監理までの中で考えてきたことを、いくつかの項目にまとめてお話致します。

構造と設備

構造と設備 計画に当たっては、過去に北丹後地震(昭和2年)があった土地であることから、建築基準法で求められる耐震強度の1.5倍の強度を確保すること、また災害時にも病院を運用できるように、本館部分(A棟)と前回増築(B棟)の厨房部分は24時間継続稼働できるだけの非常用自家発電設備を設けることの、大きく2つの要望がありました。 前者の耐震性能については、強度の要望を実現しつつ、費用も抑える方法として、基本計画の段階で鉄筋コンクリート造、鉄骨造、鉄骨鉄筋コンクリート造の構造比較を行いました。検討の結果、外周と柱は鉄骨鉄筋コンクリートでつくり、内部の梁は鉄骨造に耐火の被覆をするというそれぞれの材料の長所を組み合わせた構造計画としています。

外観デザイン

過去に二度、敷地内で増築計画の機会を頂きましたが、今回は本館の建替えということで、広い敷地全体の玄関、病院の顔をつくるという大きな課題がありました。 現在の姿につながる丹後中央病院の外観は、昭和54年に竣工した旧本館の外観(白いモザイクタイルと周回バルコニーの曲面腰壁)が大きな特徴となっており、打合せの中でもこれらの外観が気に入っているというお話を計画段階でお聞きしました。病院スタッフや地域の方々が大切に思われているこれらの要素を引き継ぎつつ、新しい顔をつくる方法として、道路に面したコーナー部分に既存にはない大きな曲面をつくること、西面の道路に対して段々にセットバックした大きなボリューム構成をつくることを考えました。

この大きな曲面と段々バルコニーは、デザイン上は病院の顔として、訪れる人に柔らかい印象を与え、入院されている患者さんにとっては病棟にいながら自然に触れる憩いの場になり、災害時には階段等の垂直避難が困難な場合の一時避難(水平避難)バルコニーになるという消防活動上の役目を果たすことも想定しています。 対して南面のバルコニーは、西面のようにはボリューム上の大きな引きはつくれませんが、三層目と四層目のバルコニーが少しずつ外に膨らんで波打ち、西面の段々バルコニーに呼応するようなイメージで変化をつけています。

アプローチ計画と内装イメージ

今回敷地の制約上、外来を地階に配置していますが、実際には敷地の高低差をうまく利用して地階にも十分な外光が入るように計画しています。また、エントランスを入ってから外来部門までスムーズにたどり着けるように折り上げ天井やシースルーエレベーターによる視線の誘導や、内装の連続性を意識して計画しました。

エントランスホールと外来の内装は、「森を散歩する」ような感覚をイメージして計画しました。これは、遠くから見た時にシンボル的な意味を持つ白い外観に対し、ひとたび内部に足を踏み入れると身近な、手触り感のある柔らかい材料に包まれるようにしたいと考えたからです。丹後地方は、積雪の多い地域です。白い外観は、積雪のある冬の季節にこそ一層映えると以前から感じていました。その冬の時期に病院を訪れた患者さんにとって、心安らぐ場所であってほしいというのが、先程の「森を散歩する」イメージの発想の本になっています。

外来専用シースルーエレベーター、階段

内装に合わせて家具も選定

地階とは思えない明るい診察待合

内装カラーで大まかなゾーンが分かるように計画

階段室吹き抜け部分内観見上げ

階段室からの景色

病棟コーナー部分飾り棚

病棟計画

廊下幅は、一般の病院の基準で両側居室基準2.1メートルに対し2.7メートルを確保しています。これは、ベッド毎楽に移動できる寸法であることは勿論のこと、将来の施設基準の変化や病棟転用の可能性も想定して計画しています。加えて、廊下が広くてもコーナーはやはり見通しが悪いことから、今回は全ての病棟でコーナー部分に飾り棚やカウンターを用いた隅切りか、ガラスによる見通しの確保をしています。各病棟には1箇所ずつ、町の景色も見える談話室があり、いざという時には簡単な処置もできるよう医療ガスも配置しています。(普段は木目の化粧蓋で隠ぺいしています)

病棟コーナー部分見通しガラス

町の景色も見える談話室

病室計画

病室は、1ベッド当たりの面積を基準の6.4平米に対して8平米以上(約5畳)を確保し、ベッドライトの上向きの明かりが全体の照明を兼ねるよう計画し、全体としてゆったりと、柔らかい空間になるよう計画しています。 窓の高さは、ベッドに横になった時に圧迫感がないよう床から80センチの高さまで下げ、バルコニーへの転落防止としては高さ15センチの手すりをつけて安全を確保しています。 病院は、建物そのものの寿命よりも、医療法の改正や設備の老朽化等が建替えの理由になることが多いように思います。この建物は、耐震性能は建築基準法の1.5倍であり、廊下幅、病室面積も余裕をもって計画しています。 末永く、地域を支える基幹病院の本館として、使い続けてもらいたいと願っています。

建築主
公益財団法人丹後中央病院
所在地
京都府京丹後市
用途
病院
構造
混構造 鉄骨鉄筋コンクリート(外周部分)鉄骨造(梁)
階数
地上5階、地下1階
竣工年月
平成25年8月
担当者
衛藤照夫 , 清水大輔