作品紹介Works

病院

社会医療法人寿人会 木村病院 本館移転及び病棟整備事業

社会医療法人 寿人会 木村病院は、地域の人々が安心して医療を受けられる場として長く鯖江市の医療を支えてきた。高齢化が加速するこの地域において、高齢者救急を速やかに受け入れることができる体制をとるとともに、治療・リハビリによる在宅復帰をより効果的にサポートする環境整備が求められる。
本事業は、築50年を経た本館機能(外来・管理)を有する建物の建て替えを機に、病棟の再整備を行うものである。現在は療養病棟、回復期リハビリテーション病棟、地域包括ケア病棟、障害者施設等病棟そして急性期病棟が4棟の建物に分散している。そのうち地域包括ケア病棟と障害者施設等病棟の入る本館の移転に合わせて動線と機能の整理、病棟の場所の見直しを行うこととなった。

病棟の再整備

動線を限定している要因の一つに鯖江市道を挟んで敷地が東西に二分されていることがある。そのため東と西に分かれた建物は道路上空の連絡通路により2階部分で接続している。
現況(整備前)では西側の敷地の「西館」「北館」「リハビリ館」の3つの棟に療養病棟以外の病棟がはいっており、東側の「東館」には療養病棟が入っている。西館と北館・リハビリ館は1階で往来が可能であるが、整備後は本館の機能が東側敷地の「新館」に移転するため、西側の敷地に残された北館・リハビリ館と新館を屋内で移動するには東館の2階にある療養病棟を通過しなければならない。

新館には救急、放射線検査、MRI、生理検査部門があり、それは救急搬送された方の入院中における検査、治療に密接に関係している。そのため急性期治療を要しない障害者施設等病棟をリハビリ館に移転し、新館へは地域包括ケア病棟とともに急性期病棟を配置することとなった。
なお、令和6年に地域包括医療病棟が新たに制度化されたため、木村病院ではすでに急性期病棟を地域包括医療病棟へ転換している。この転換により、高齢化の進む鯖江市における木村病院の位置づけがより明確になったと言える。
また、リハビリ館にある回復期リハビリテーション病棟のために、新館の外来用リハビリ室とは別にもうひとつ、北館にリハビリ室を設ける計画とすることで、どの棟においても入院中のリハビリを受けることができる環境となる。

生命線となる道路上空通路

新館完成後に本館が解体されると当然ながら現在ある連絡通路も撤去されることとなるため、その前に新たにもう1か所連絡通路を接続する必要がある。新館建設後から本館の解体までのあいだに既存建物の改修と移転を複数回繰り返すことから、病棟間の患者・物品・食事の移動に新旧2つの通路の活用は不可欠であった。
建築基準法では同一建築物では通路は1個を基本とすると定められている。改修工事中の期間限定とはいえ2つの通路の使用には、病院機能の維持や患者・来院者の安全確保といった特段の理由がもとめられた。 相談から許可まで1年以上の期間を要したが、長く地域医療を担ってきた木村病院に対する福井県及び鯖江市の評価もあり、無事に建築審査会の許可を得ることができた。
この連絡通路は東西の建物を結ぶ唯一の手段であり、人・モノの移動だけではなく、電子カルテ、医療ガス、消防設備といった病院にとっての最重要な設備を通す大動脈である。工事中には病院を使用しながらの設備の切り替えが行われることとなるが、その生命線となる通路部分の工事には病院側との綿密な連携をとりながらの施工がもとめられる。

デザインを方向づけるもの。場所とひと

〈場所〉
敷地の近くを通る旧北陸道には神社、旧家などの歴史的建造物が残る。歩いて行ける距離につつじの名所である西山公園や文化施設があり、全体的に上品な土地柄という印象をうける。
一方、シャッターの目立つ商店街と人通りの少ない駅前からは過疎の影は否めない。
日本海に近い鯖江の冬は、一日中曇天の日が多く、一瞬陽が射したかと思うと、急に雨が降り出す。深く雪が積もることもある。11月から3月にかけての長い期間、曇り空のなかに佇む病院のイメージを思い浮かべている。
〈ひと〉
待合は多くの患者で込み合うが、そのほとんどが高齢者である。
周辺地域の人々が代々通い続けることを前提とし、ひとに寄り添う身近な総合病院としての親しみやすくわかりやすい空間が求められる。

 冬のしぐれの日の曇天には明るさと暖かさもたらし
 夏の日差しの強い日には爽やかな存在になる―鈍色の風景に浮かぶ、明るく親しみのある箱

その土地の空気に溶け込みながらも、病院としての存在感を備えた建築をつくろうと思った。

日の入り前

雪しぐれ

インテリア コンセプトカラー

明るい木目のパネルを共通の素材としつつ、エリアごとに異なるテーマカラーを与え、患者の移動を自然に導く計画とする。
〈エントランスホール〉
外壁の赤茶色をベースサインカラーとして、内外のイメージの連続性を図る。
人が多く集まり色があふれることを想定した場所の内装材は、彩度を抑えて全体のまとまりをもたせる。一方で椅子の張地には場所を特定づけるわかりやすい色を採用する。

エントランスホール

待合_内科

待合_外科

待合_検査

〈内科〉
外来部門の中心となる内科では、ベースサインカラーを踏襲する。濃い紅葉色と胡粉色の組み合わせは視認性が高くひときわ目をひく。
〈外科〉
診療科の違いを明確にするために、内科とは対照的な寒色である薄鈍色を使用。ただし彩度は合わせて統一感をもたす。
〈検査〉
薄い木目とうぐいす色の組み合わせがさわやかな印象を与える。自然光の入らない暗くなりがちな場所の明るさ補う。

〈リハビリテーション〉
色褪せ始めた木々の葉やしっとりとした土の色。リハビリ室らしい健康的な動きのある配色。

リハビリテーション

〈3階 地域包括ケア病棟〉
〈4階 地域包括医療病棟〉
2つある病棟のそれぞれの性格を表すような色あいを選択した。
地域包括ケア病棟は誰もが慣れ、親しみやすさを覚える茶系でまとめ、落ち着いた雰囲気のなかでの在宅復帰支援を行う。
最上階の地域包括医療病棟は空を連想させる浅い青色。高度な治療とリハビリを提供するほどよい緊張感と清涼感のある場所となる。

3階 地域包括ケア病棟

4階 地域包括医療病棟

建築主
社会医療法人寿人会 木村病院
所在地
福井県鯖江市
用途
病院
構造
鉄骨造
階数
地上4階
延床面積
4,850㎡(新館)
竣工年月
2027年6月予定
担当者
河井美希