作品紹介Works

病院 / 透析

医療法人社団太公会
我孫子東邦病院 

南側外観 濃灰色を基調とし、小庇の水平ラインによってモダンなホテル調の病院外観計画

老朽化に伴う移転新築と新たな病院設計方針

長年、我孫子市の地域医療を支えてきた我孫子東邦病院は、建物の老朽化により現病院から約2㎞圏内に位置する、旧水戸街道沿いの高台に、耐震性と地域医療の継続のために移転新築された。

ホテルライクな穏やかな医療空間

本計画の設計コンセプトの核となったのは、患者が少しでも前向きな気持ちで治療期間を過ごせる環境づくりである。理事長の「病院生活をホテル滞在のように快適にしてほしい」という想いを受け、外観・内装ともに“ラグジュアリーモダン”デザインを採用した。従来の医療施設のイメージを払拭しつつ、医療の場として不可欠な清潔性、安全性を確保したうえで、通院や短期入院といった心身に負担の大きい時間を、明るく穏やかなものに変えることを目指した。待合や廊下、病室などの共用空間には、素材感・照明・色彩計画を丁寧に落とし込み、患者・家族・スタッフが安心して過ごせる「穏やかな医療空間デザイン」とした。

配置図

南側外観夜景

移転計画における病院コンセプト:
手術・透析・リハビリ・健診部門の強化

手術部門の強化


手術室は、既存の2室に加え、3室体制(整形外科・泌尿器科手術用、クリーン度クラス1000 ~100000)とし、年間1,000件を超える手術件数に対応。今後さらに増加が見込まれる手術件数にも対応できる体制を整えた。また、透析シャントトラブル時にはPTA(経皮的血管形成術)が速やかに行える環境を整備している。

手術室

リハビリ部門の強化


リハビリ室は約200㎡を確保し、運動器Ⅰ・脳血管Ⅲ以上の加算がとれるスペースを確保。ゴルフ人口が非常に多い我孫子市の地域特性に対応し、「ゴルフ外来」を設置した。泌尿器科および人工透析医療に力を入れており、透析患者や糖尿病患者を対象とした運動療法、尿失禁に対しては骨盤底筋群のトレーニングを中心とした排尿・排便コントロール訓練も積極的に取り入れている。

リハビリ室

健診部門の強化


地域密着型の健診センターとして、早期発見と予防を目的に、健康診断・人間ドック・脳ドックの予約受診者を受け入れている。受診者が、院内で迷うことないよう、外来動線と分離したわかりやすい動線計画とし、今後は企業健診などの受診拡大も期待されている。


1階健診受付・待合 ラグジュアリーな雰囲気を意識した設え

透析部門の強化


週3日、1日4~5時間以上の透析時に、血圧変動が激しい透析患者にとって重要となる空調環境に配慮し、人が風を感じない超低風速空調を採用した快適な透析治療空間を計画した。
また、入院透析の増加を見据え、病棟と透析室を同一フロアに配置し、水平移動のみでアクセスできる計画とした。スタッフ動線の合理化や、患者のベッド移乗・移動負担の軽減にも配慮している。

断面図

1階総合受付・待合ロビー

1階診察待合 患者にわかりやすい各待合サインデザインの採用

1階平面図

2階平面図

3階平面図

4階平面図

感染対策


各病棟では閉鎖病棟管理を採用し、入院患者とその家族の入退出をセキュリティシステムで管理。特に4階は、病棟と透析室をエリア分けし、入院患者が容易に病棟内へ出入りできない計画とした。
また、民間病院として差額ベッド代請求が可能な病床数を考慮し、面積調整と必要性に応じて個室数を配置。感染時でも安心して手術後入院が可能な病院とした。
透析室では、通院透析と入院透析患者の動線を分離。発熱患者についても、事前把握のうえスタッフ管理下で動線を分け、陰圧管理個室での透析治療を行うことができる体制を整えている。

スタッフステーション

3階 病棟ラウンジ 中庭に面した明るく開放的な病棟ラウンジ

日常の医療業務からリフレッシュできる職員休憩室

ラグジュアリーデザイン採用の特別個室

外来透析 快適な空調システムの採用とプライバシーに配慮した透析室

入院透析

快適な透析治療環境のために 「ゆう設計空調システム」の採用

長時間の透析治療では、血圧変動が大きい透析患者にとって、特に夏場の空調による「局所的な気流(ドラフト)」が不快感を与える要因となる。本計画では、快適な透析治療環境を実現するため、独自に考案した「ゆう設計空調システム」を採用した。一般的な天井埋込カセット形空調が速い風を吹き出すことで遠くまで風を送るのに対し、本システムは独自の設計指標に基づき、風速を抑えた水平気流を天井に沿って吹き出す方式である。これにより部屋全体に風を拡散し、ベッド上に風が到達するときには患者が不快に感じない空調環境を実現している。さらに、吹き出した風を循環させることで透析室全体に均一な空調を行き渡らせ、室内環境の均質化を図っている。ただし、暑さ・寒さの感じ方は個人差があるため、風の通り道では「局所的な気流(ドラフト)」を感じさせないよう風量(風速)を微調整。完成時には風量測定を行い、最適な環境を確認している。

空調システム概要図

建築主
医療法人社団太公会
所在地
千葉県我孫子市
用途
病院
構造
鉄筋コンクリート造一部鉄骨造
階数
地上4階、塔屋1階
敷地面積
8316.51㎡
建築面積
2,317.60㎡
延床面積
8,189.80㎡
竣工年月
2025年8月竣工
工事種別
新築
担当者
河津孝治 , 西村寿々美