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高齢者

社会福祉法人燦愛会 ハピネスさんあいNext

 社会福祉法人燦愛会は、吹田市幸町で平成12(2000)年8月に特別養護老人ホーム80人・短期入所20人、デイサービス 1日最大82名の運営を行っています。2016年には、デイサービスの大改修を行い、2017年に特養の個室化改修を行いました。
 今回、近接地に新たに土地を取得することができ、地域密着型特別養護老人ホーム、高齢者グループホーム、小規模多機能型居宅介護の複合施設を建築することになりました。

限られた敷地で、施設基準の異なる3施設を2フロアに

 1階には認知症対応型共同生活介護(高齢者グループホーム)と小規模多機能型居宅介護、2階には地域密着型特養を合築するにあたり、施設基準の異なる3つの施設をいかに運営しやすく入居者にとって安心で過ごしやすいものにできるかが問われました。建設費が高騰する中でできる限り無駄のない平面計画を作り出すことも大切な課題となりました。ほぼ交通量のない行き止まり道路を挟んだ新敷地は、サテライト型施設となるため、共用管理部門は、必要最小限の計画としました。

限られた敷地ではありますが、計画を検討するにあたり、
① 居室は、外部に面した配置とし、利用者の日常環境を優先する。
② 柔軟なベッド配置が可能となるよう居室の幅は3m確保する。
③ 浴室は外部に面した計画とし、自然換気が可能な配置とする。
④ 入居者、利用者のトイレは、外気に面した配置とし、窓を設け自然換気が可能とする。
⑤ 汚物処理室は、直接外部へ搬出するか共用廊下へ直接搬出が可能とする。
以上の5項目を満足させる計画としました。

■ 認知症対応型共同生活介護

 認知症対応型共同生活介護の居室は、道路からの影響の少ない北東・北西に計画しています。利用者の出入りの多い、小規模多機能型共同生活介護を南東に計画しました。夜間の泊りの部屋は、防犯等に配慮し敷地の内向きに配置しています。居室の面した外周には、日中の陽射しを和らげるとともに四季を感じられるよう緑を積極的に設けています。利用者の上下移動が少なくベッドのままでの移動はないため、乗用のストレッチャー対応可能なサイズのエレベーター1台とし、補助的にダムウエーターを設けました。介護度が高く、仰臥位浴を利用する必要がある方は本館広域型特養を利用することを前提としていますが、将来的に入居者の介護度が上がり施設内での対応が必要になった場合は、1階の倉庫2を仰臥位浴室に変更できるよう給排水設備及び構造対応を行っています。

内部イメージ

■ 小規模多機能型居宅介護

1階の「小規模多機能型居宅介護」は、登録された利用者が、「通い」でも「泊り」でも利用可能な施設です。 自宅で生活をされている要介護者を対象としていますので浴室には、大浴槽と座位浴を設置し、幅広い身体状況のかたへ対応可能な浴室を計画しています。 宿泊室は6室あり、利用者の様態や希望によりいつでも利用することが可能です。 登録者は最大29人以下なので、大規模な通所介護施設よりも顔なじみの利用者で、家庭的な雰囲気の中で過ごすことができます。

内部イメージ

1階平面図

■2階:地域密着型特別養護老人ホーム

 2021年度の介護保険法改正により、ユニット定員が15人まで緩和されました。 地域密着型特養の場合、これまでは、10人+10人+9人の3つユニット構成となり、ショートステイ10人を併設し、4ユニット構成で計画する場合が多いですが、すでにショートステイ20人を運営している法人にとって、稼働率を上げることが厳しい状況でした。  今回の計画では、初期の提案から15人+14人ユニットで提案を行いました。

14人+15人 2ユニットをワンフロアで

今回の敷地で仮に10人ユニットを3ユニットで構成した場合、ふたつのフロアにまたがり、 各フロアに夜勤1人配置となります。夜勤1人体制は経験の浅いスタッフには、不安が大きいという話を耳にします。ユニットの最大定員の緩和により、29人を15人と14人の2ユニットとし、1フロアで計画することにより、1フロア2人での夜勤体制が組めることになり、運営的にもメリットがありました。  また住宅設備として、浴室やキッチン、トイレの数も3ユニットで計画するよりも、2ユニットで計画する方が整備面積の圧縮、設備コストの削減ができるため事業計画を立てるうえでもメリットが大きいと言えます。浴室は一カ所に集約させ座位浴とシャワーキャリーやリフトが設置可能な介護浴槽を配置しています。脱衣室は、スタッフが行き来ができるように扉を設けています。  2階の汚物処理室は、直接屋外階段の利用が可能となっており感染時には、内部に感染源を持ち込まないで処理が可能となっています。

内部イメージ

2階平面図

建築主
社会福祉法人燦愛会
所在地
大阪府吹田市
用途
1階:認知症対応型共同生活介護
    (高齢者グループホーム 3ユニット)
   小規模多機能型居宅介護
    (定員29名 通い15人/日 泊り6人/日)
2階:地域密着型特別養護老人ホーム 29人
    (14人・15人:2ユニット)
構造
鉄筋コンクリート
階数
2階建て
敷地面積
2008.65㎡
建築面積
1300.48㎡
延床面積
2373.27㎡
竣工年月
2024年1月末(予定)
担当者
相本正浩 , 今津恵美