作品紹介Works

病院

医療法人社団正名会 池田病院

東側メインファサード

建て替えを契機に診療科目に眼科を追加

池田病院は1972年に開院された歴史ある糖尿病専門病院です。また、日本肥満学会 認定肥満症病院でもあり、肥満症の治療にも積極的に取り組まれていらっしゃいます。
計画当初は建替え、改修、増築について検討を行いましたが、次のような理由によって、最終的には全面建て替えでの計画となりました。
・既存建物は開院当初の建物周囲に増築を繰り返しており、現行の医療法を満足する形での改修が難しい。
・増築する場合、既存建物の階高に合わせる必要があるため、現在の建築設備に必要な天井裏スペースを確保することが難しい。

現在の病院は駅前徒歩5分と極めて利便性が良いため、患者の利便性を考えると移転という選択肢はありませんでした。
幸いなことに現在の病院の隣接敷地を確保されていたため、そちらに1期工事として現病院機能の可能な限りのボリュームを配置、1期工事完了後に移転し、移転後、現病院建物を解体、2期工事にて1期工事では不足する機能と診療科目として眼科を追加する計画となりました。

建替えプロセス

限られた面積に病棟を納める工夫

駅前市街地で敷地面積は限られていますが、病院からは感染対策もふまえ、現状よりも個室を増やして病床の稼働率をアップしたい、との要望がありました。
限られた面積の中、病院様と繰り返し打合せを重ねることで、下記のような工夫によりできるだけ多くの個室を設けた計画となりました。
1.多床室内には洗面は設けず、廊下に面して設ける、
2.トイレは集中配置だが、男女の別を設けずに個別のトイレが並ぶ計画とする。
  新幹線やコンビニのトイレのイメージに近い計画です。
3.リネン庫は室として設けずに奥行き60cm程度の廊下に面した収納スペースを設けることで対応する。
  倉庫内で通路分のスペースを設ける必要がないため、その分省スペースな計画が可能です。

4階病棟イメージ 着色部分がトイレ。小便器ブース1か所と大便器ブース3か所の他、車いす対応トイレを1か所計画。

外来の計画 診察の流れに則した室配置、動線の計画

糖尿病専門病院という事で、患者は採血、採尿といった検査後に診察という流れを取られています。
外来部門は敷地の制約から1階と2階に分かれていますが、上記の流れに沿って、1階で受付を行い、採血といった各種検査を受けてから、2階に上がって診察を受けるという配置になっています。
また、検査課のスタッフは、診察待合での患者の待ち時間をできるだけ少なくできるように迅速な検査を心掛けているとの事でしたので、採血室と一般検査室は隣接する計画としています。

外来スタッフの動線については、裏導線で1、2階をつなげています。電子カルテやインカムといった設備の導入により、医事課と診察室を裏導線でつなげる必要性は低くなりましたが、医事課スタッフが医師に確認を取りたい場合に、診察中では患者に失礼なので、合間のタイミングをみはからって声をかけてもらいたい、という理事長の思いを反映したものです。

1階の受付・会計待合は北側にシェードガーデンを設け、緑のある落ち着いた空間で待っていただけるように、2階の診察待合は南向きに大きな開口を設け、外が見える明るい待合とすることで待っている間の気を紛らすことができないかと考えました。

1階、2階平面イメージ
 赤色が患者の外来の流れ、青色がスタッフの裏動線を示す。

1階待合イメージ

建築主
医療法人社団正名会
所在地
兵庫県尼崎市
用途
病院
構造
鉄筋コンクリート造
階数
地上6階
敷地面積
約1,400㎡
建築面積
約780㎡
延床面積
約3,500㎡
担当者
相本正浩 , 近藤晃史