作品紹介Works

障害者

グループホーム ワンロック

庭を囲む開放的なホーム

概要

徳島県西部において入所施設やグループホームを運営し、徳島市内に本部をおく法人が、初めて徳島市内にグループホームを開設しました。 徳島市内東部圏域ではグループホームが不足している状態が続いています。住み慣れた地域で住み続けたい、家族の近くでひとり暮らしを始めてみたい、という思いを抱えた方々にとって安心して過ごすことの出来る住まいの場をつくることは、この法人の長年の夢でした。定員10名でスタートしますが、将来的には18室すべての部屋を利用できるようにしたいと考えておられます。 特定の入所施設を市内に持たない法人だからこそ、入所施設からの移行で定員が埋まってしまうことは無く、在宅・通所利用の方々が入居できる機会に繋がりました。

構成

ワンロックは5+6+7名の3ユニットで構成しています。性別・身体状況・支援内容・そしてお好みなどにより、お部屋を選択していただいています。それぞれの玄関から中に入るとユニットは廊下で連続しており、利用状況によって解放することができる建具で区切られています。各ユニットにはLDK・洗面・トイレ・浴室が備わり、水回りの設備や広さは、ご自分の力だけで利用ができる方から介助が必要な方までが使いやすいものとなっています。 スタッフルームは中央のユニットに集約されており、玄関・廊下側には見通しのための窓が設けられています。より多くの支援を必要とする方は、このユニットに入居されることを想定しています。

配置図 兼 1階平面図

上・右 ユニット玄関

ユニットをつなぐ廊下の建具とベンチ

中央のユニット玄関とスタッフルーム(奥)

地域に開放する2階ホール

ホームの個室はすべて1階ですが一部が2階建てで、スタッフの会議や地域の集まりにも利用できるような広い部屋が作られました。同時にこのエリアは河川が近く浸水の恐れがあるため、やむを得ず待機が必要となった場合の一時避難場所としても位置付けています。

ここにはホームの玄関とは反対側の道路側から直接アプローチすることができます。住まいの場所とは異なる、ダイナミックでにぎやかな内装としました。

ダイニングキッチン

2階ホール:にぎやかな内装

ホールへは道路から直接プロ―チができる

土地の記憶にならう

このホームは砂利で舗装された空き地に建設されました。2000㎡の敷地の隣も同じくらいの大きさの空き地があり、2階建てのアパートが建設されました。空地になる前の航空写真を見ると東西に延びた長屋が南向きに何列にも連なっているのがわかります。そこには多くの様々な年齢層の人々が暮らしていたと想像されます。棟の間には樹木が茂り人間の営みと自然が良い感じに交わっています。敷地の東側はそう新しくはない住宅街となっており、長屋が一気に取り壊されたあとは閑散として、さぞかしうら寂しく感じられたことでしょう。

右:かつての航空写真 臙脂色の屋根の長屋が並ぶ

そんな場所に新しいグループホームを設計するにあたり、かつての土地の雰囲気を持ち込みたいと思いました。ご近所さんにとっては懐かしく感じられ、新しい住人にとっては以前からそこで暮らしていたように地域に溶け込みやすいように。 南と東に個室が並んだL型の棟が3つ連なり、その間には植栽を施して沿道を歩く方の目も楽しませます。もちろんフェンスなどの囲いは無く庭と道が一体となって、道から見るとあたかも3つの長屋が並んでいるかのように見えなくはありません。住宅側には個室と廊下幅分しかない建物の妻側が面して、住宅らしいスケールで向かい合うようにしました。

周辺住宅とは小さなボリュームで向かい合う

個室には暖かい杉のフローリングを採用

自然光の入るベンチのある個室前廊下。思い思いに他者との距離を調整する

ほっとする住まい

新しい場所で一人暮らしを始める方が、できるだけ早く環境に慣れていただくために建物は暖かく包み込むようなものであってほしいと思います。使い慣れた家具が置けて、それがどんなものであっても馴染むように個室の内装ははシンプルな色・素材とすることを心がけています。といってもあまりにそっけないとその人の生活感で満たされるまでが淋しいですね。下味とでも言いましょうか、付け長押や廻り縁、カーテンボックスを木で作るといった控えめな演出もしています。

プライベートな個室と、他人と交わることとなるリビングをつなぐ廊下は、一人と集団との距離を調整するという大切な役割があります。入居者の中には勇気を出してリビングやトイレに向かう方もいらっしゃるかもしれません。廊下にこそ、自然の光や手触りの良い手摺、休憩の出来るベンチなどそっと背中に手を当ててくれるような優しさが求められると考えます。 建物がL型の形状をしているため廊下には程よい死角が生まれ、そこは自分と他者との緩衝地帯にもなっています。

建築主
社会福祉法人 徳島県手をつなぐ育成会
所在地
徳島市川内町
用途
共同生活援助事業所
構造
木造
階数
1階 一部2階
敷地面積
2080㎡
建築面積
697㎡
延床面積
698㎡
竣工年月
2021年9月
担当者
河井美希