作品紹介Works

病院

社会医療法人社団正峰会 神戸大山病院

外観(※)

厳しい敷地制約の中で建築可能な 最大限のボリュームを確保

 兵庫県神戸市での病院の建替の計画です。既存病院の東側隣地に第1期工事にて外来、病棟(91床)、手術部門、リハビリ等を整備。新建物に移転後、既存建物を解体、解体後の敷地に健診部門、有料老人ホーム(10室)、病棟(29床)を整備するものです。工期は3年にわたりました。

 工期は2期に分かれていますが、建物は構造的には一体で計画しています。こうした計画の場合、通常であれば、1期と2期は構造的にそれぞれ別の建物とします。しかし、そうすると廊下にエキスパンションジョイントカバーの金物が出てきて、わすかながら床に段差が生じてしまいます。また、外観においてはいかにも2つの建物をくっつけた、という感じになります。

 敷地は大通りに面しており、建替え後の建物が一つの建物としてきちんと見えることがリニューアル後の病院のイメージとして重要と考えました。1期と2期の接続部分はあらかじめ鉄筋を出しておくことで2期工事部分と一体の建物とすることができます。

1期工事完了時の外観。左側が解体前の既存病院建物。

1期工事と2期工事の間の壁面。2期工事に接続する梁の配筋が見える。
廊下となる部分はALCで仮外壁を設けている。           

敷地に建築可能な最大限のボリュームを確保した3つの方法

 敷地は大通りに面していますが、北側は住居系の用途地域で高さ制限の規制が厳しいため、建物は階が上がるにつれて北側がセットバックしています。その結果、地上だけでは建築基準法上建築することが可能な床面積を建てることができませんでした。
 要求された諸機能を納めるために、以下に示す3つの方法によって敷地に対して最大限の床面積を計画しました。

1.法的に採光が必要ではない諸室を地階に計画
 法的に採光が必要ではない手術室を地下2階、リハビリ室を地下1階に設けることで地上部分だけでは使い切る事ができない床面積を地下で確保しています。また、地下は1期工事範囲だけとすることで2期工事の工期短縮、コストの低減に努めています。

2.階高を抑えて地上に+1フロア
 階高を抑えることで通常であれば地上5階建てとなるところを6階建ての計画とし、最上階に透析室(20ベッド)とスタッフ用ホールを計画しました。

3.バリアフリー法の認定制度を活用し容積率以上の床面積を確保
 バリアフリー法の認定制度を活用することで、その敷地に建てられる最大の床面積の1割増しまで建てることができます。病院建物は医療法により求められる廊下幅が建築基準法の廊下幅よりも大きいため、比較的容易に認定を取る事ができます。本計画では約500㎡の緩和を受けています。

上:北西からの外観(※)                   
中:B1階リハビリ室 地下であることを感じさせないように   
内装デザイナーの提案で天井には空模様のクロスを採用。(※)
下:B2階 職員食堂 ドライエリアに面しており、       
地下2階にも関わらず明るい雰囲気。(※)         

病院と有料老人ホームを併設

 2階の2期工事範囲は有料老人ホームとなります。病院と有料老人ホームは原則、独立している必要がありますが、行政協議の結果、有料老人ホームへの食事提供は病院の厨房から2階病棟廊下を経て有料老人ホームに至る配膳ルートを確保することができました。有料老人ホームのエントランスと階段は北西部角に別途設けています。
 将来的な病院の増床も考慮し、サービス付高齢者向け住宅の補助金を利用せず、いつでも病床に転用可能な有料老人ホームとしています。建築的には、有料老人ホームの居室は病室と同仕様とし、廊下幅も医療法上必要な幅を確保することで、病院ー有料老人ホームの廊下間の建具を撤去するだけで病棟として利用可能な計画としています。

上:2階平面イメージ 下:有料老人ホーム食堂(※)

1階平面イメージ

外来と健診で画像診断を共用する1階平面計画

 1階は1期工事で外来部門を整備し、2期工事で健診部門を整備しました。画像診断部門を外来部門と健診部門の間に計画し、両側に扉を設けることでどちらからも利用可能な計画としています。
 1期工事で2期側の壁面には扉を設置し、その外側に仮設の外壁を設けています。そうすることで、1期工事が完了した時点から画像診断部門の使用を開始し、2期工事完了時には仮設の外壁を撤去するだけで、内装の改修を行う必要なく、使い続けることができる計画としました。

1期工事で既存病院の病床数を確保

 病棟は2階から5階の4フロアに、2階 回復期リハビリテーション病棟(30床)、3階 一般病棟(36床)、4階 地域包括ケア病棟(35床)、5階 緩和ケア病棟(19床)を設けています。神戸市の病床の公募を受け、71床から120床に増床されました。1期工事範囲に4床室を主に計画することで、もともとの病床数以上の99床を確保しました。2期工事では主に個室と食堂を計画しています。

上:病棟廊下。梁型を間接照明に利用し、低い階高でも圧迫感がない。
下:5階緩和ケア病棟談話室(上下共に※)             

左上:風除室(※) 右上:外来受付(※)    
左下:健診受付・待合(※) 右下:健診廊下(※)

1階診察待合(※)

病室の設備計画 維持管理に配慮した空調計画と自然換気が可能な小窓を設置

 病室の空調設備は電気式個別空調方式とし、窓下のスペースに室外機を設けることで、維持管理が容易な計画としています。機器トラブルの際にも、その部屋の空調機器の更新だけで済みますので、他の病室への影響もありません。
 換気設備は全熱交換器(ロスナイ)を設置することで、空調負荷の抑制をはかっています。また、中間期には屋外の空気を入院患者が自由に取り入れることができるように換気用の小窓を設けています。

a 4床室。(※)b 4床室の窓下の空調屋外機設置スペース。神戸市では消防の指導によりバルコニーを四周回さなければならない。要求寸法を確保するため外壁をくぼませて室外機を配置。c,d 病室の換気窓。プッシュ式のラッチにより容易に開閉可能。                         

建築主
社会医療法人社団正峰会
所在地
兵庫県神戸市
用途
病院(120床)、有料老人ホーム(10室)
構造
鉄筋コンクリート造
階数
地下2階、地上6階
敷地面積
約1,900㎡
建築面積
約1,600㎡
延床面積
約7,800㎡
竣工年月
2021年3月
※付写真
フォトビューロー 庄野 新
担当者
相本正浩 , 加藤クリム