作品紹介Works

病院

医療法人若葉会 西条中央病院

 JR山陽本線 西条駅の南に位置する「西条中央病院」は、既設病院の老朽化に伴い、これまで駐車場で活用していた敷地を拡張し、病院機能を継続運営しながら敷地拡大による建て替えを行いました。既存病院を稼動させながらの工事となり、業務を継続させるために開発区域を2つに分け、新病院が完成後、病院機能を移動したのち既設病院の解体を行い、解体後、エントランスを建設するという約21ヶ月の長期にわたる工事となりました。既設病院が高層であり、かつ規模もあったため解体期間が通常よりも長期に渡り、解体期間中の患者等の動線計画も計画段階から、新病院建築の課題となりました。敷地拡大による建て替えや増改築では、医療業務の運営動線(患者、職員、物品等)と工事仮設計画と工事動線(資材搬出入、工事関係者)を整理しシミュレーションすることも大切です。

■敷地の高低差を活かしたフロア計画

前面道路と建設敷地の高低差が約3mあり、過去に1m程度の浸水被害があったことから、病院のエントランス、外来は2階に計画されています。  全国で頻発するゲリラ豪雨の建築的な対応として、1階には、万が一浸水しても被害の少ないかつ逃げることが可能な利用者のスペース(デイケア・企業内保育所)を配置しています。できるだけ出入口を少なくし、出入り口には止水板、機械室には止水ドアを設置しています。  地域的に車両利用者が多いので、2階(外来フロア)には送迎用に大きな車寄せを計画しています。既存の病院があった場所は来客用の駐車場として整備を行いました。

■明るい待合室と感染症対応専用診察室

待合室は、南面に面した開放的な空間となっており、淡い木目調の壁面を採用しました。床はタイルカーペットを採用することで足腰への負担も軽減されています。また吸音効果もあり静かな環境となりました。新しいイメージカラーとして採用された濃紺色のカーペーットを診察室の入口に配置し、広い待合室のアクセントとなっています。  総合受付出入口とは離れた場所に感染症対応診察室(診察室9)が設けられておりインフルエンザ等の感染の疑いのある患者さんの診察室としてよく利用されています。感染対応診察室は、外部から直接出入りができる計画となっています。

■ 建て替えを期に、デイケア事業を拡張

これまでもリハビリには力を注がれておりましたが、建て替えを期に通所リハビリテーション(デイケア)事業を開始されました。  送迎や病院の外来患者さんとの動線を分離するためにデイケア専用の風除室を1階に設けました。 窓は、浸水被害等に配慮し腰窓としています。西条は冬には積雪もあり、利用者はコートを着用されることも多いので、デイケア利用者の荷物置場は、コート類も管理できるように壁面に十分な収納スペースを設けました。 浴室は、介護用ユニットバスと座位浴を設け、利用者の身体状況により選択できる計画としています。 食事の提供は、病院の厨房からの配膳を行っています。高齢者の通院リハビリテーションからの移行への対応もされる予定です。

 ■ 職員の福利厚生としての「事業所内保育所」

職員の福利厚生として「事業所内保育所」が設けられています。  乳児用のスペースと幼児用のスペースのほかにインフルエンザなど病児にも対応できるよう隔離スペースも計画されています。開所時点では、未就学時を対象とし無休で運営をされています。病児、病後児のお子さんを預かることへの考慮として、ほかの乳幼児との接触がないように動線等に配慮しています。また、屋根付きの半屋外の遊び場や水遊びのできるスペースも設けています。床暖房を採用し、床材はフローリングを採用しています。 少人数の職員で運営されるため、見守りやすい計画を行っています。通常は、保育室の窓は掃き出し窓にしたいところですが、このエリアも浸水対策として腰窓を採用しています。保育所の出入口は止水対策を施しています。外部からの出入口のほかに職員専用廊下からの動線も確保しています。

■ 透析室を拡張

既存病院では9ベッドで運営されていた透析治療も建て替えを期に20ベッドに拡張しました。 低風速で患者にやさしい「ゆう設計空調」を採用し、快適な透析室となっています。感染対策用個室も準備されており、廊下から直接入室が可能な計画となっています。病棟エリアとは切り離し、約16Mを柱無の大スパンで計画し、スタッフステーションから患者さんの状態が見渡せる計画としました。 透析治療中は、照明を落とされることが多いため、今回、空調管理の難しい透析室の窓は極力減らした計画を行いました。 透析室の内装は最近では木彫の落ち着いた雰囲気が増えていますが、治療空間であるためあえて装飾を行なわずに白を基調とした空間となっています。待合室は、開放的な位置に配置し非常に明るいスペースとなっています。天井のフラットとし、ベース照明を調光にし、治療中の照度コントロールを行う計画としています。

建築主
医療法人若葉会
所在地
広島県東広島市
用途
病院(185床) 透析(20ベッド)
構造
鉄筋コンクリート造
階数
地上8階建
敷地面積
9363.30㎡
建築面積
2812.64㎡
延床面積
12,093.03㎡
竣工年月
2019年1月(第一期工事完成)
2020年9月(第二期工事完成)
担当者
相本正浩 , 今津恵美

■ 診療科目
内科、外科、整形外科、泌尿器科、消化器内科、肝臓内科、人工透析内科、
消化器外科、肛門外科、皮膚科、リハビリテーション科、放射線科
■ 併設施設
通所リハビリテーション(定員34名)、事業所内保育所