作品紹介Works

高齢者

社会福祉法人九十九里ホーム サービス付き高齢者向け住宅 聖アンナ館

生涯活躍のまち匝瑳 ~千葉県匝瑳市版生涯活躍のまち事業~
CCRC Continuing Care Retirement Community

高齢者が健康なうちから居住し、必要に応じて介護や医療を受け、人生の最後までを過ごせる生活共同体

東京圏をはじめとする市外の中高齢者が匝瑳市に移り住み、多世代の地域住民と交流しながら健康でアクティブな生活を送り、必要に応じて医療・介護を受けることができるように施設整備等の環境整備をはじめとするまちづくりを行うための事業です。

匝瑳市版CCRCのHPより

 匝瑳市版CCRC事業では、JR総武本線「飯倉駅」隣接地において、「交流ゾーン」、「高齢者福祉ゾーン」、「「まちなか居住ゾーン」、子育てゾーン」が計画され、「子育てゾーン」には認定こども園、「高齢者福祉ゾーン」には特別養護老人ホームが順次計画され、建設されました。ゆう建築設計は「まちなか居住ゾーン」と「交流ゾーン」にて、サービス付き高齢者向け住宅と地域交流センターの設計を行っています。

サービス付き高齢者向け住宅 計画概要

 「聖アンナ館」は、サ高住49室、一時滞在が可能なお試し居住として10室、その他に地域食堂や地域交流センター、各種事業所をもつ複合施設です。
 飯倉駅前の再開発事業として、シンボリックな建物になることと共に、すでに建設されている認定こども園と特別養護老人ホームの間に計画することから、エリア全体の統一感も求められました。

建物形状の変遷

 計画当初は、建物の高さによるシンボリック的な建物を希望されていましたが、近隣への配慮と、3階建案から9階建案を比較検証し、居室数に対して共用部分を有効に活用できる面積を確保し、施工面積を圧縮できることから、高層建築物の計画は控え、4階建から6階建での計画で進める方針に転換しました。
 次に、基準階平面の効率性の検証のため、3案作成し、平面計画の見直しを行い、放射状のプランが効率的であるとの総意により、形状が決定しました。その中で、お試し居住を各階に分散したいとのご要望から、最終の平面形状ならびに各階の用途構成を決定しました。

サ高住基準階の構成

 中央にエレベーター等の縦動線とスタッフステーションを配置し、動線の明快さと見守りに配慮した居室配置としました。
 放射状の居室群とすることで、スタッフステーションからの視線として、EVを使用する方の出入り、サ高住およびお試し居室エリアの各居室の出入り、さらには食堂、談話スペースも見渡すことができる計画です。
 居室は18㎡を基準とし、25㎡以上の居室は全体で3室計画しています。匝瑳市版CCRC事業で行うサ高住の入居者要件は、国土交通省・厚生労働省関係高齢者の居住の安定確保に関する法律施行規則第3条で定める年齢その他要件(現行規定による入居対象者)に加え、中高年齢期における早目の住み替えや、入居する地域での活躍を念頭にし、匝瑳市外からの移住者については50 歳以上として設定しています(匝瑳市版生涯活躍のまち形成事業計画:令和2年3月 匝瑳市)。そのため、入居時には要介護度が高くない方でも、住み続けるにしたがって高くなっていく可能性があります。その時にも生活の継続性が担保できるように、居室のトイレは車椅子利用になっても継続使用できる形状としています。
  
 各フロアの中央に食堂と談話スペースを計画しています。 住まいの要となる居室から出た場所に、居住空間とは違う設えで活動的な場所を作ることで、自室にこもることなく入居者と自然な交流が生まれる場所として計画しました。 居室は5つのタイプを計画しています。

居室内トイレの扉

エントランスホール

1階エレベータホール

各階談話スペース(上から2階、3階、4階)

4階談話スペースからの眺め(遠くに九十九里浜が望めます)

お試し居住

 匝瑳市版CCRC事業のひとつに、匝瑳市に移住を検討している方を対象に、一定期間匝瑳市に住み、風土や日常生活を体験してもらうことで移住促進を促すという計画があります。
 入居条件が揃えばそのままサ高住に、または匝瑳市内の住宅へ移住するためのきっかけとなる部屋を整備します。希望に応じて1週間から1ヶ月の期間、その場で生活をし、匝瑳市への移住の意思決定を促そうというものです。

お試し居住エリアの廊下

地域食堂と交流スペース

 食事サービス施設と交流施設を併設することにより、住まいの住み替え支援の他、地域の高齢者の見守りと日常生活の支援を地域に広げるとともに、世代を超えた住民同士の交流を行うことで、地域社会との連携が図れる憩いの場となるよう計画しています。
 匝瑳市版CCRCでは、サ高住を閉鎖的な施設ではなく、地域に開かれた施設(地域の中の住居)にしていくことが目的です。食堂が地域に開放されることで、様々な人々の利用が期待されます。ここで計画する「地域食堂」が、移住者と元々住んでいる方との交流・親睦の場となるよう期待されています。

建築主
社会福祉法人 九十九里ホーム
所在地
千葉県匝瑳市飯倉97-1
用途
その他
(主要用途が2以上の複合施設:有料老人ホーム、
 共同住宅、食堂又は喫茶店)
階構成
1階:
 地域食堂、地域交流スペース、
 定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業所、
 訪問介護事業所、訪問看護事業所、
 病児・病後児保育室
2~4階:
 一般型サービス付き高齢者向け住宅:49戸
 (25㎡未満:46戸・25㎡以上:3戸)
 お試し居住(一時滞在):10室
 (旅館業法の特例)
構造
鉄筋コンクリート造
階数
地上5階
敷地面積
2,997.75㎡
建築面積
1,027.25㎡
延床面積
3,118.65㎡(廊下等含む)
竣工年月
2021年12月

サービス付き高齢者向け住宅の建築基準法上の取り扱いについて
老人福祉法29条第1項に該当する場合(※)は「有料老人ホーム」として取り扱う(※入浴、排せつ、食事介護、食事の提供等を施設が行う場合)
該当しない場合は「共同住宅」または「寄宿舎」となる(行政庁への確認が必要)
用途が有料老人ホームとなった場合、共同住宅に比べ、廊下幅の規定が変わるため、 延床面積が大きくなる。
 居室面積18㎡の場合の廊下幅
 有料老人ホーム:片廊下1.8m 中廊下2.7m
 共同住宅   :片廊下1.2m 中廊下1.6m
担当者
相本正浩 , 田淵幸嗣 , 山下かれん