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障害者 / 出版・掲載

知的障害者施設 計画と改修の手引き 好評発売中!

 私たちは、障害者のすまいやはたらく場の計画をいくつも進める中で、日々自分たちの
知見を更新しています。二年前から「建築も支援の一つ」をテーマにセミナーを開催して
おり、セミナーの準備と平行して下記の書籍を出版しました。

 類書がないことから発売以降、現在に至るまで様々な方面から反響をいただいておりま
す。少し長くなりますが、私たちがどのような思いで障害者の建築に関わっているのかを
知っていただくために、「はじめに」の内容と共に改めてご紹介させていただきます。

 本に書かれていることは私たちのベースではありますが、知的障害者に限らず現在はあ
らゆる障害の方を対象に計画を検討しています。在宅から施設まで、あらゆる状況で建築
で支援できることはあると私たちは考えます。使い勝手の改善から、今よりももっと利用
者の生活をよくしたいという思いまで、ご相談をお寄せください。

「知的障害者施設 計画と改修の手引き」学芸出版社 (2017年10月発売)
                      3,500円(税別) B5判 160頁

 

 

はじめに

 10年前、知的障害者の入所施設から、トイレを改修してほしいという依頼を受けました。
知的障害者の生活実態がわからず、論文を調べたところ、知的障害者の生活について書か
れたものはありますが、その生活と建築の関係について論じられたものはまったく見つけ
ることはできませんでした。そこでとりあえず始めたのは、実際に施設に泊り込んで、入
居者の方々と一緒に過ごしてみることでした。
(中略)
 これまで多くの知的障害者の支援員の方とお話をしてきましたが、建築の持つ力や役割
はほとんど理解されていないことがありました。一緒に建築を計画した事業者の方でも、
最初から建築に興味を持っている方、それほどでもない方などさまざまでした。しかし打
合わせを重ねる中で、知的障害者の生活と建築の関係について互いに理解を深めてゆき、
いつか「建築も支援の一つだ」という共通の認識を持つようになりました。
(中略)
 この本を出版する目的は、事業者や支援員の方に「建築は支援の一つ」だということを
知っていただくこと、そしてこれから設計にあたる建築家の方に知的障害者の建築に取り
組む私たちの姿勢を理解し参考にしていただき、それぞれ独自の取り組みを始めていただ
くことにあります。障害者の建築に教科書はありません。本書に書かれていることは、私
たちが実際に設計し経験したことのみであり、知的障害者のための全ての建築について網
羅的な解説がなされているわけではありません。しかし、私たちが検討し開発した多くの
技術や考え方を公開しています。そうすることが日本の知的障害者の住まいのレベルを全
体として向上することになると思っています。

 どうぞ事業者の方や支援員の方、建築に携わる方が、ご自分の携わる施設の建築におい
て、事業理念や支援方法、そして利用者の思いが実現するようにこの本を活用していただ
ければと思います。日本中至る所で、障害者の住まいや施設に真剣に向き合う建築家が増
え、「建築と支援」について理解される事業者や支援員の方が増えてゆくことが、障害者
の皆さんの住まいを変えていくことになります。

                              2017年9月 砂山憲一