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医療

日常を知ることを大事にする -フランス、マクドナルドハウスからの学び-

はじめに

私たちはマクドナルドハウスを設計するにあたり、既存施設のリサーチを⾏っています。 実際の使われ⽅の調査や職員へのヒアリングなどを⾏う中で、海外施設は⽇本の施設とは異なる雰囲気を持っていることがわかりました。 本記事ではフランスのパリハウス, リールハウス, ビルジュイフハウスを⾒学した際に感じたフランス、マクドナルドハウスの特徴と、⾒学の中で特に印象深かったエピソードを紹介します。

マクドナルドハウスとは

病気の⼦供とその家族のための滞在施設です。 世界各地に設けられ、各地のマクドナルド法⼈が運営を⽀援しています。 付き添いや病院との連携がしやすいよう病院と近接した場所に設けられることが多く、必要機能は病児の家族が宿泊する宿泊室、共⽤のリビング・キッチン・ダイニング、多⽬的室(図書室など)、病児の兄弟が利⽤するキッズスペース、事務室、倉庫などです。 施設ごとに病児の泊まり⽅は異なりますが、基本的には病児が泊まれるように、エキストラベッドが配置できる宿泊室の計画とされています。また乳幼児⽤にベビーベッドなども⽤意されています。

スタッフ構成

⽇本のマクドナルドハウスでは、職員と同数以上のボランティアスタッフによって施設運⽤が⾏われています。 ⼀⽅フランスでは、ボランティアスタッフはほとんど採⽤しておらず、雇⽤されたスタッフによって運⽤されています。

病児の家族をケアすること

フランスでは、病児の家族をケアすることで病児もケアされるという考えかたが明確にあることがわかりました。 その試みとして、アロマやマッサージ、ジャグジー浴などが利⽤できる“スパルーム” や、ランニングマシーンなどで運動ができる“ジムルーム” を施設内に設けています。

ジムルーム

スパルーム

日常の断片 -見学施設の様子から日常を想像する-

パリハウス

2 階のリビングルームにあるレゴの⼈形たちが⽬に留まりました。 ” 病児たちは病気と闘うヒーロー” という考えから、施設⻑のフランクさんの発案で特注で作っているとのことです。 このように各マクドナルドハウスは、それぞれの施設⻑や職員のアイデアによって建物の雰囲気が異なります。 建物が建ったあとも、病児とその家族のための空間が考えられていました。

リールハウス

幅2mくらいの大きなTVがリビングの横においてありました。 サッカーW杯を観戦するために買ったばかりだそうで、職員同士でどこに置くか話していたところ、気づけばダイニングにいる病児の親やその兄弟たちも集まり、配置決めの話がはじまりました。 和気あいあいとした雰囲気で、普段から利用者とスタッフがよくコミュニケーションをしていることが想像できました。

ビルジュイフハウス

さまざまな⼈種の親⼦を⾒かけました。 あるアジア系の⼥の⼦は洗濯機を利⽤するお⾦を頂戴とスタッフに声をかけていました。 その親⼦は元々ホームレスで1 泊10 €の宿泊費も払えませんが特別に対応をしているとのことです。 親と近くに住み、⾷事もできているもののその⼦に笑顔はなく、どうしたら彼⼥らを笑顔にできるのか、建築にできることは何なのかと考えさせられました。

おわりに

マクドナルドハウスの⾒学をとおして、その特徴の⼀つである「病児の家族をケアすることで病児もケアされる」という思いと、その実践を体験することができました。 私はこの思いに共感するとともに、他施設でも通じる幅広い考え⽅だと思いました。また、異なる⽂化を背景とした建物を利⽤する⼈々の⽇常のワンシーンを実際⾒ることで、改めて⽇常を想像することの重要性を実感しました。 わたしは事業者の思いの中にある様々な⼈々の⽇常を想像することを⼤事にしながら、総合的に医療環境をよくする建築を作っていきます。