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高齢者

15人ユニットの広さはどうやって決まるのか。 共同生活室の取り方とユニット面積。

特養15人ユニットの標準的な面積はどの程度なのでしょうか。新たに施設を建設する場合、工事費が大きな要素となります。特に最近の建築工事費が高止まりしている状態では、工事費が高くなればのちの施設運営に大きな支障がでます。
最近の相談でも、新築をあきらめて、改修にしようというものが出てきました。
工事費を決める要素として、建物の仕様がありますが、ダイレクトに関係してくるのは、施設の面積です。
特養には居室や共同生活室の面積に規定はありますが、総面積の規定はありません。
15人ユニットという新しい施設の必要面積はどの程度かを検証しています。

1. 面積を決める要素は、共同生活室と浴室の取り方

15人ユニットの計画をすでに複数行っています。そこでの検討では「共同生活室」の考え方が一番面積の大小にかかわりました。また「浴室」はユニット内で個浴をとるタイプと、ユニット外に共同の浴室をとるタイプで面積が違ってきます。
それ以外に「トイレ」の取り方、居室内にトイレをとるタイプ、共通のトイレをとる場合でも3室か4室かで違ってきます。また「居室」の大きさは規定面積をどの程度うわまわるかで決まってきます。

2. 共同生活室の違いと面積

①中央共同生活室タイプ。狭く計画。

図1はユニット面積をどこまで縮小できるか検討した時のプランです。共同生活室を中央に1室とっています。このプランは従来の取り扱いでは許可になっていません。「居室は共同生活室に直接面することを原則とし、面した居室と隣り合う居室までは可とする」という決まりがあるからです。このため、10人ユニットでも、居室の並びをすべて共同生活室に面したくないという要望があれば、小規模なサブの空間を作って、居室が共同生活室に面するという規定をクリアーしてきました。(図2)

この場合でもどの程度の広さがあれば、サブの共同生活室と認められるのか、廊下を広げた程度でよいのかなど、その都度担当する行政と協議をおこない、決めてきました。
最近はこの取り扱いが行政によってかなり緩やかになってきているところもあります。図1はそのような協議の結果よいだろうと認めてもらった例です。ちなみに京都府ではこの扱いは認められていません。
図1のユニットは浴室をユニット外に共同でとるタイプです。また共用トイレを4室持ち、居室の広さは規定ギリギリです。その前提のもとでユニット面積は約400㎡です。共同生活室は約93㎡です。

図1 15人ユニット

図2 10人ユニット

②中央共同生活室タイプ。広さを確保。

図3は図1と同じく中央に共同生活室をとった例です。この計画では別に小さな集まれるスペースを一つ設置しています。
ユニット全体の面積は約450㎡、共同生活室は二室合計で115㎡です。
図1と比べて、全体面積は約50㎡大きく、そのうち共同生活室は約22㎡大きくなっています。図3の計画の居室は規定面積より各部屋約2㎡広くとっています。そのため図1と比べて、居室で約30㎡広くなり、両計画の面積の差50㎡は居室と共同生活室の差だということがわかります。

図3 15人ユニット

③複数共同生活室タイプ

図4の計画はユニット総面積約500㎡、共同生活室3スペース面積138㎡、居室面積13,5㎡/1室、共用トイレ3室、ユニット内に個浴1室、という前提です。
このユニットの総面積は図1計画より100㎡、図2計画より50㎡大きくなっています。
工事費が1㎡あたり30万円としますと、それぞれのユニットごとの工事費の差は3,000万円と、1,500万円となります。
共同生活室をどのように位置づけるかは、そこでの高齢入居者の生活に直接かかわり、また介護者の働き方にもかかわってきます。コストが第一とはなりませんが、今後は計画段階において、どのような選択をしていくか、事業者、介護者、設計者の密な打ち合わせが必要となるでしょう。

図4 15人ユニット

3. 入浴の違いと面積

入浴はユニット内での入浴とユニット外での共同入浴施設を作るかに分かれます。
前者の場合でも、機械浴は共同で設けることが一般的です。最近の設計例ではユニット内に個浴を設けず、複数ユニットで共同で使う浴室を設ける場合のほうが多くなっています。これは浴槽や機械浴が多様に開発され、利用者の特性や介護者の介護しやすさを考慮して、機器を選ぶことが可能になったため、複数の異なる入浴設備を利用できるようにするためです。

図5 中央の浴室部分と各ユニット入口の図

そのため、利用者の状況や施設の考え方によって、施設毎にまったく異なるプランと機器選定になっています。
この異なる入浴設備を多く持つかどうかで、入浴関連の面積は決まります。
全体工事費を決める要素である建物の面積に入浴施設は関係しますが、これまでの計画では、工事費を下げるために入浴施設面積を減少するという発想になったものはありません。
それよりも、入浴機器は高額であり、施設の考え方にあった機器選定を選ぶ場合にコストをどの程度考慮するかが重要となっています。
この利用者特性、介護方法と機器の関係は別記事で今後説明いたします。

4. まとめ

ユニットの広さを決めるのに、工事費が先行するのはありません。住まわれる人の特性と各施設の介護方針、介護の方の働きやすさなどからまず建築計画を行いますが、 建築設計者は常にコストの視点も考えて提案することが重要だと思っています。