設計コンセプトConcept

精神科

精神科医療環境への取り組み 外来について

医療法人清流会 そよかぜ病院  
河井 美希

■精神科外来と認知症外来を分ける

 精神科外来と認知症外来があります。この二つの外来を程よい距離感とする工夫を行いました。
 精神科外来は2 つある診察室の入口を同一壁面に真横に並べるのではなく、それぞれに角度をつけた壁に設けました。待合と真正面に向かないようにすることと、出入のタイミングが重なった場合の視線の交叉を避けるためです。そのほか、横並びに座る人同士が微妙に違う方向を向くような放射状の 待合椅子を採用しました。その視線の先には北側に設けられた大きな窓から入る安定した光の面と、西側のスリットから入り込んで壁面にバウンスする柔らかな光の対比が見られます。テレビは 見たくない人もいることに配慮して、モニターが強制的に視界に入ってこないようなコーナーを設けて そこに設置しました。
 もう一つの認知症外来は、精神科とは受付を経て左右に分かれた場所にあります。 こじんまりとした専用のスペースはアールの壁で包まれ視線をはばかることなく 待っていただけるようにしています。

医療法人社団 綾瀬病院  
田淵 幸嗣

■精神科外来と内科外来を分ける

 標榜科目は内科、外科、精神科、心療内科です。建て替え前の外来は全ての診療室が横並びになり、待合ではそれぞれの受診者で混在していました。地域の方が気軽に来院されますが、周囲の目を気にされる方もいました。内科、外科と精神科、心療内科の診察室の配置を分け、待合も分けました。
 外科・内科待合は外光あふれる明るい廊下に面した場所とし、精神科・心療内科待合は扉で仕切り、落ち着き安心できる場所としました。
 受付は玄関を入ったところにあり、そこで案内を受けそれぞれの診療待合に向かいます。

医療法人新生十全会 京都ならびがおか病院
近藤 吉広

■ゆったりとした外来空間

 精神科、心療内科以外に脳神経内科、思春期外来、依存症外来があり、「何かあれば相談しよう」と思っていただける病院であるために幅広い対応をしています。
 玄関から受付まで移動する間にこの病院の「患者様を大切にしている」という思いが伝わるような空間としました。最初に訪れた方の印象を大切にしたい。患者様の目線を大切にする。
 心理的不安さを少しでも和らげるため空間の重心を下げる工夫として天井には腰壁と同質の木質系パネルを貼ることにより落ち着きのある空間としています。
 家具レイアウトは、周囲の豊かな自然環境と呼応するようにします。 ガラス越しに森の緑が楽しめる場所は低めのソファ、ホールで軽く休むには背もたれ無しの六角形のソファなど適材適所の家具を配置しています。

医療法人鈴木会 ほのぼのホスピタル
砂山 憲一

■機能・イメージの刷新

 築30年を迎える川内病院(精神一般216床、徳島市川内町)は既存施設の建物・設備だけでなく、機能・イメージの刷新を意図し移転新築が計画されています。
 病院名を「ほのぼのホスピタル」に変更されることとなり、精神科病院特有の厳しい機能を満たしながら、入院患者の皆さん・職員の方々ひいては近隣の皆さん対して いかに「ほのぼの」とした環境を創りうるか、という大きなテーマを軸に設計・打合せをすすめました。
 外来部門も、受付・待合と診察・待合を分け落ち着いて診察を受けられるようにしています。

※『時空読本No.39』2024年9月発刊 記事