作品紹介Works
透析 / 診療所
医療法人社団秀佑会
腎クリニック高野台改修工事
高齢化透析患者に対応し、「治療する場」から「安心して過ごせる療養空間」へ。
1997年に開院した外来通院専門の人工透析クリニック。開院から約30年が経過し、施設の老朽化とともに、透析患者の高齢化や車椅子利用者の増加など、医療環境も大きく変化していました。 本計画では、従来の「ベッド数を確保する透析室」から、既存のベッド数を減らしても、高齢患者が安全で快適に治療を受けられる「療養環境」へと発想を転換しました。限られたテナント空間の中で、患者の快適性、スタッフの作業性、医療安全を両立する透析クリニックを目指した計画です。

① ゆとりが医療の質を高める透析空間
透析患者の高齢化に伴い、車椅子での通院や介助を必要とする患者が増えています。 そこで31床から28床へ減床し、一床あたりの空間にゆとりを確保しました。ベッド間隔を拡張することで、車椅子での移動や移乗を安全に行えるだけでなく、介助スペースやスタッフの動線にも余裕を生み出しています。 また、準個室の袖パーティションを前後に可動する計画とすることで、限られた面積の中でも車椅子が回転しやすく、患者の状態に応じた柔軟な運用を可能としました。

改修前 透析室31床 平面図

改修後 透析室28床 平面図
② プライバシーと医療安全を両立する透析室
長時間の透析治療では、患者が安心して過ごせる環境づくりも重要なテーマとなります。 透析ベッドの多くを準個室とし、周囲の視線に配慮した落ち着きのある療養環境を整備しました。一方で、スタッフステーション前のエリアは急変時の対応を最優先とし、見通しの良いオープンなレイアウトを採用しています。患者の状態に応じて適切な治療環境を選択できる、安全性と快適性を両立した透析室を計画しました。

車椅子の寄付き、移乗しやすさを考慮した可動パーティション

袋小路のスタッフ動線を解消する緊急時対応のスタッフ通路
③ 医療の変化に合わせて空間を再編集する
現在では多くの患者が送迎サービスを利用しており、更衣室の利用は大きく減少しています。 従来の男女別更衣室をコンパクトな更衣ブースだけに再編し、そのスペースを透析室へ還元する ことで、よりゆとりのある治療環境を実現しました。 利用実態に合わせて機能を見直し、限られた床面積を最大限に活かすことも、本計画の重要なテ ーマとなっています。

薄暗い既存透析室①

目にやさしい関節照明を追加した明るい改修後透析室①

雑多な印象の既存透析室②

手前:見通し重視、奥:プライバシー重視の明るい改修後透析室②
④ 地域に選ばれ続けるクリニックへ
老朽化した内装を全面的に更新し、明るく清潔感のある空間へリニューアルしました。 エントランスは「ここなら安心して通いたい」と感じられるデザインとし、地域に根差したクリニックとしての親しみやすさと安心感を表現しています。 また、感染症対策として完全個室の透析室を新設し、多様な医療ニーズにも対応できる環境を整 えました。
⑤改修工事の特徴
透析診療を止めることなく改修工事を実施するため、工事期間中は同法人の東海病院で透析治 療を継続する体制を構築しました。 これにより患者への影響をなくすと同時に、工事のしやすさを考慮した短期間の改修工事としました。 完成後は、同沿線の透析クリニックと比較してもベッド間隔にゆとりを確保した療養環境となりまし た。 高齢患者や車椅子利用者が安心して通院できるとともに、スタッフにとっても介助や医療行為が 行いやすい透析空間へと生まれ変わりました。
⑥これからの外来透析クリニックとして
本計画は、単なる内装更新ではなく、高齢化する透析医療の将来を見据え、患者・スタッフ・医療 運営のすべてに配慮した「療養環境」をデザインした改修プロジェクトです。 限られたテナント空間の中で、「安全性」「快適性」「プライバシー」「医療効率」の最適なバランスを 追求し、これからの外来透析クリニックの新たなスタンダードとなる空間を提案しました。
- 建築主
- 医療法人社団秀佑会
- 所在地
- 東京都練馬区高野台
- 用途
- 無床診療所
- 構造
- 鉄骨鉄筋コンクリート造
- 階数
- 3階:医療モールテナント
- 敷地面積
- 362.9㎡
- 竣工年月
- 2026年6月
- 担当者
- 河津孝治

