作品紹介Works

集合住宅

丹後中央病院職員寮 サンライズ杉谷

建設地の京丹後市は、京都府の最北部に位置しており、峰山はその中心部にあたります。 周囲には風光明媚な山々が望め、市役所が建つ中心地付近には川が流れています。 その川沿いの土地に、病院で働くスタッフの為の職員寮を建設するという計画でした。

事業主からの要望は4点ありました。 1.周囲ののどかな風景に対して、都市的なものを持ち込んでほしい。 2.敷地を最大限利用すること。 3.合計30戸を確保すること。(最終間取り変更により27戸) 4.5月から設計を始めて、翌年の1月末には入居可能な状態で引き渡すこと。

建設地周辺は、住宅は一部を除き、ほとんどが和瓦の切妻または寄棟の勾配屋根で、  所々に市役所、病院、ホテルが鉄筋コンクリート造の陸屋根タイル貼で点在しているという風景が広がっています。  まず、都市的なものということから用途は住宅であるけれど、市役所や、病院、ホテル寄りの外観を求められているのだろうと考えました。

一方で、丹後地方は丹後ちりめんで栄えた土地柄であることから、手仕事に関連して発想 できないかと考え、工業化された材料の中でも手仕事的な要素が残るレンガ・タイルを用いることを思いつき、在庫を抱えず現場毎に細かい調整が可能な業者を使うことに決めました。 焼き上がったレンガ・タイルは程よく焼きむらがあり、建物の表情に手仕事的柔らかさを加えてくれました。

建物の外装の色は、現地の気候風土によるところが大きいので、現場で考えることにこだわりました。 当初は、現場の表土の黄土色に近い色を想定していましたが、基礎掘削時に現場に山なりに積みあがった土を見るとかなり濃い茶色で、やや目立ちすぎる色かと思いながらも、現場に実際にある色を使う限りは間違いないと思い、当初考えていたよりもかなり濃い色目を提案し、選定に至りました。 次に、敷地を最大限利用する為に、北面の川に面したバルコニーは地上から屋上まで光が 通るスリットを切り、建ぺい率の対象から除きつつ、分節されたデザインになるよう配慮しました。

敷地を最大限利用した建築面積に対し、30の住戸を振り分けていくと4階建てのボリュームとなりました。 厳しい工期を考慮して鉄骨造を選びましたが、それでも設計、建築確認申請、検査の期間を除くと工事期間が5ヶ月を切る必要があり、更に工期を圧縮する方法として、4階建ての柱をジョイントなしの1本柱とすることを考えました。 柱の長さを13メートルで計画し、その長さの柱を現場まで搬入し建て込むことが可能かどうかを、地元の鉄工所にルート確認をしてもらいながら進めました。 以上の過程を経て、無事期限内に建物を引き渡すことができました。 これから10年、20年と歳月と共に、建物の佇まいは峰山の風土に馴染んでいってくれるだろうと思います。

22畳程の広さのあるファミリータイプリビング

風除室

風景の中でゆったりとくつろげるファミリータイプ浴室

建築主
丹後中央病院
所在地
京都府京丹後市
用途
職員寮
敷地面積
702.00㎡
建築面積
419.68㎡
延床面積
1,338.89㎡
竣工年月
平成23年1月