作品紹介Works

高齢者

特養 サンライズ市川

計画地は千葉県市川市大町。北総線松飛台駅から南に徒歩15分に位置する。敷地面積は約6,600㎡あり、周辺は市川市の特産である梨園が多数存在している。敷地東側に市道3003号が接道し、南側は就労継続支援A型事業所があり、北側と西側には畑が広がっている。

計画建物は、免震構造を採用した鉄筋コンクリート造であり、延床面積5,200㎡の地上3階建ての建物である。全体構成は1階にショートステイ10床(1ユニット)、特養28床(3ユニット)、2階に特養36床(4ユニット)、3階に特養36床(4ユニット)である。

入居者の住まい

ユニット型特別養護老人ホームは、介護を必要とする高齢者の方が共同生活を営む施設であり、昼夜問わずの介護、食事、排泄、睡眠、相談、関係機関との連絡等、日常生活上必要な支援を受ける場所である。

厚労省のユニット型特別養護老人ホーム運営基準を見ると「居室及び近接して設けられる共同生活室により一体的に構成される場所をユニットとし、各ユニットごとに入居者が相互に社会的関係を築き、自律的な日常生活を営むことを支援する場所」とあり、「入居前後の生活の連続性に配慮すること」とあるが、この運営基準による「ユニット」の位置付けは介護単位としての括りと解釈できる。

介護単位としての「ユニット」があり、入居者は「ユニット」での生活を営んでいく。入居者の生活がある以上、「ユニット=住まい」という考えになるのだが、見ず知らずの10人が共同生活を営む「ユニット」は、我々が思い浮かべる意味での「住まい」とは違う様相を想起させる。

このように書くと特別な施設のように感じられるが、ここで謳われていることの根本は、介護度が高い高齢者の方でも安心して暮らせることができ、終の棲家ともなりうる豊かな生活空間とすることであり、ユニット定員9?10名の入居者と、介護職員等が相互に関係し合いながら暮らしていく場所を創ることである。

全くの他人がひとつの空間を共有し、それを中心にして「ユニット」で住むかたちが生まれていく。この「集まって住むかたち」を「住まい」と定義すれば、「住まい」の新しい形を見出だす必要性が出てくるのではないだろうか。

「やさしい住まい」

この「住まい」には、入居者それぞれへのやさしさを建築で考慮することが必要となる。 そのため、「入居者にやさしい住まい」を実現するため、5つの具体策を取りまとめた。

1.地震に対して安心・安全な免震構造の採用
社会福祉法人市川朝日会が運営する介護老人保健施設にて免震構造が採用されており、入居者の安心・安全、財産保護確保に努めている。これは東日本大震災時の市川市周辺の震度5弱の揺れに対して安全性が確認された。それを踏まえ、今回の計画も免震構造を採用した。

免震装置 (弾性すべり支承) 

免震装置 (積層ゴム)

2.ペアガラスの設置
外部サッシにペアガラスを使用し、室内環境の負荷軽減や結露防止の対策を講じている。

3.施設内に設けた3層吹抜空間
各ユニットの居室は全て建物の外側に面している。居室に近接して設けた共同生活室への採光、通風、換気条件等を向上させるため、施設内に1階から3階まで吹き抜けた中庭を設けた。

4.維持保全及び危機管理
外壁は、躯体の維持保全のために全面タイル張りとした。
内部の床仕上げにクッション性のある長尺シートを採用し、介護者の足腰に負担が少なく、入居者の転倒事故に伴う日常生活動作の低下を防止することを目指した。

5.非常時対策
免震構造の他、井水利用、電気・ガスを併用した熱源の供給や、施設運用に必要な設備機器(キュービクル、空調室外機等)を屋上に設置することで設備機器の損壊を防止し、今後起こりうる災害に対して継続的な施設運用が出来る計画とした。

「住むかたち」

建物全体がユニットに分かれているのではなく、入居者の生活単位であるユニットが、複数配置されているイメージで構成する。つまり、1つの階に「集まって住むかたち」が4つあり、それらが3層に積み上げられ、12の「住むかたち」が出来るイメージである。 これらの「住むかたち」はそれぞれのユニットの特性が如実に現れる。同じ様相を呈するが全く違うものが集まって1つの集合体となる。

共同生活室

共同生活室

建築主
社会福祉法人 市川朝日会
所在地
千葉県市川市大町
用途
特別養護老人ホーム(ユニット型・100床)
短期入所生活介護(10床)
構造
免震構造 鉄筋コンクリート造
階数
地上3階
担当者
田淵幸嗣