作品紹介Works

病院 / 精神科

丹比荘病院精神科病院保護室

概要

医療法人丹比荘 丹比荘病院は、昭和31年大阪府羽曳野市野に開業された精神科病院です。現在310床の病棟と外来棟がありますが、近傍にはグループホームとホームヘルプサービス拠点、また介護施設と障碍者施設を併せ持つ総合福祉センターがあります。都心にはメンタルクリニックをお持ちです。
病棟は大きく東西南の3棟構成で、東棟は老朽化が進んでいて建て替えを検討されています。この建替えに先立ち、保護室の部屋数不足解消とより進んだ隔離病棟の提供を目的に保護室棟の増築を意図されました。保護室棟建築場所は西棟に接続し、近い将来に行われる増改築に支障のない位置として中庭が決定されました。また、病院全体を稼働させての居ながらの工事として、病院環境の保全に留意しての計画です。

さて、計画は3病棟に囲まれた中庭に保護室4室、個室4室を含む鉄骨造平屋です。
プランは保護室、個室が片廊下に面している単純なプランで、廊下の両端はそれぞれ既存病棟のスタッフステーションと廊下に接続しています。増築棟の廊下は既存病棟の採光を確保するために設けた中庭に面しており、明るい開放的な雰囲気となっています。この増築棟の廊下を開放観察に利用したいとのご要望が病院様からありました。他の患者様が行き来することから、プライバシー確保のために観察窓といった様々なものの仕様を病院様と一緒に一から検討を行いました。

観察窓は瞬間調光ガラスとブラインド内蔵型の複層ガラスを比較検討しました。ブラインド内蔵の複層ガラスでは廊下側から誰でも操作が可能なため、患者様のプライバシーを守ることが難しいことがわかりました。瞬間調光ガラスはスイッチをオンにするとくもりガラスが透明になるものです。鍵を持つスタッフのみ操作が可能なためプライバシーの確保は可能ですが、コストがネックでした。しかし、保護室内部を観察できればよいとし、ガラスのサイズをおさえることでブラインド内蔵の観察窓よりもコストを抑えることができました。その他照明、電動ブラインド等のスイッチについても誤操作を防ぐために各保護室出入口脇の小扉の中に納め、保護室の中の状況を確認しながら操作することが可能な計画としました。

保護室扉

左:準保護室 右:保護室前植栽

保護室に排煙窓をつけるかどうか、もまた設計段階での議論となりました。弊社では保護室の壁仕上は、居心地、衝撃吸収の観点からフローリング材を壁に貼る事を基本としています。ただし、フローリングは不燃材ではないため排煙窓の設置が必要です。今回の場合、排煙オペレーターを廊下に設置しても他の患者様による誤操作が考えられます。また、設計時に別の精神科病院へヒアリングを行ったところ、排煙オペレーターは誤操作が多く、頻繁に故障がおきていることがわかりました。そういったことから、今回の計画では保護室に排煙窓は設置しないこととなり、木質系の内装材を取りやめました。患者様に保護室の中で落ち着いて過ごしていただけるように、壁仕上は塗装で木目を再現した化粧ケイカル板(不燃材)を採用しています。保護室の窓は遮音性能を確保するために二重サッシとしました。窓の外には渡り廊下がありスタッフをはじめ様々な人々が行き来します。そういった外部環境からの刺激を低減するために、二重サッシの間には電動ブラインドを設置しています。ただ、ブラインドを終日締め切っているのもうっとうしいものです。そこで、窓の前に視線を遮る生垣を設けました。もう少し時間がたち生垣が成長すれば、ブラインドを開けることができるだろうと期待しています。

廊下に設けたベンチに座って中庭を眺めることが出来る

断面図

建築主
医療法人丹比荘
所在地
大阪府羽曳野市
用途
精神科病院急性期病棟保護室、個室
構造
鉄骨造
階数
1階建て
延床面積
270㎡(増築)
竣工年月
平成27年12月
担当者
衛藤照夫 , 加藤クリム