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障害者

[通所事業所]重度心身障害者が日中を過ごす場所の建築対応 清水大輔

「医療的ケアが必要な方や精神障害重複の方、行動障害がある方の受け入れ希望がある」「通い馴れた事業所で同じスタッフに夜間も見守りをしてほしい」

通所事業所を計画する際に地域からの要望としてよく出てくる話題です。

在宅で生活されている方にとっては日中活動の場が家の近くにあることが重要ですが、在宅生活を継続するためには通う場所があるだけでは不十分で、通所事業所の役割は変化してきています。ここでは重症心身障害者の日中活動の場で考えて実現したことをご紹介します。

清水大輔

重症心身障害の特性に寄り添った   建築対応

 障害福祉センターあらぐさは、生活介護50名、就労継続支援B型10名の通所事業所です。重度の肢体不自由と重度の知的障害が重複した重症心身障害の方たちの活動室が手狭になったため、敷地内で既存建物に隣接して新館を増築しました。
 

障害福祉センターあらぐさ新館(写真左手前)

 利用者は、医療的ケアが常時必要な方が2名おられ、日常生活の多くの場面で介助が必要になります。また体の調子が日々変動する方やてんかん、発作の方もおられますのできめ細かな見守りが必要になります。
 移動については利用者8名の内6名が全介助で、食事やおやつ作り、マーブリングなどの活動の際はリクライニング車いすで、それ以外の時間は畳で寝た状態となります。座位や立位が前提の生活とは視線の位置、姿勢が異なる中でも日々の光や風の変化を感じ取れるように、活動スペースはリクライニング車いすに座った姿勢、休養スペースは仰向けまたは、横になった姿勢を前提に窓や天井の高さ、照明設備などの建築対応を考えました。

リクライニング車いすの姿勢を前提とした活動スペースの建築計画

 リクライニング車いすは斜め上を見上げる姿勢が基本になる為、活動スペースの採光を兼ねて天井を高くすることで開放感をつくり出しました。また、照明は光源が直接見えないよう間接照明としています。

 スペース中央に設置した手洗いは、腕が拘縮等で伸ばせない方もスタッフがリクライニング車いすを横付けし、シャワー水栓を引き出すことで流水で手が洗えるよう、手洗い下の有効高さを標準より10センチ高く設定しています。この高さはスタッフが口腔ケア等を行う時にも使いやすい高さとなっています。

寝たきりの姿勢を前提とした休憩スペースの建築計画

 畳スペースは現在の利用者8名に対して将来2名までの増員を見越して左右で男女5名ずつ計10名分を整備しています。中央の通路は左右5名分ずつの男女分けと、リクライニング車いすから天井走行リフトを使って畳上へ移乗介助が余裕を持って行えるよう2.7メートルを確保しています。畳スペースは寝たきりの状態で外の光の変化、風を感じられるよう窓の高さを工夫しています。照明は寝たきりの方専用の器具はありませんので数ある照明器具の中からサンプルを色々試し、仰向けでもまぶしくない乳白パネル付きの照明を採用しています。

寝たきりの姿勢で光や風を感じられる休憩スペース

支援内容に応じた空間づくり ~オムツ交換に対応した設え~

 畳スペースでは休養、マッサージの他にオムツ交換を行います。プライバシー確保を目的に個別にカーテンで区切った上で、オムツ交換時の臭いを拡げないために壁面に局所換気とオムツや着替えを取り出しやすい収納を計画しています。照明は調光式で必要な時だけ手元照度を確保できます。畳は汚れた時も拭き取りやすく、耐久性もある樹脂素材を編み込んだ材料を採用しています。

 他にも大小様々な工夫を盛り込みながら、重症心身障害者の特性と支援に寄り添う建築を実現しています。

オムツ交換時の取り出しやすさを考えた収納

臭いが拡がらない対策として計画した局所換気