作品紹介Works

高齢者

グループホーム ひだまりの家

共用部

概要

 運営法人である株式会社光栄はこの計画地の近くでデイサービス等を運営してこられましたが、利用者の方からの要望も多かった高齢者グループホームの整備が三田市において計画されることになり、新施設の計画を立ち上げられることになりました。
 計画に際し最適な計画地を探していたところ、三田市役所の間近で交通の便も良いところで計画地が見つかり、計画に賛同された土地所有者である有限会社オフィス・オケタニと共にこの計画を進めていくことになりました。

オリジナルの館名サイン

1階平面図

計画

 建物はほぼ総二階建ての計画となっており、各フロアに居室9室を1ユニットとしたグループホームが配置されています。日常生活において、なるべく自然な形での見守りを行いたいとの考えから、日頃スタッフがいることが多いキッチン・リビングを中心に居室が取り囲むような形の平面計画となっています。結果周囲を見渡しやすく、人の雰囲気を感じやすい居住空間となっています。
 共用部は、1ユニット3名の共用型認知症対応デイサービスを実施するため、一般的なグループホームより大きな面積を有しています。
 また災害弱者となりえる入居者のために避難用の屋外階段を自主的に設置し、安全対策を図っています。

2階平面図

死角を無くすために設けた室内開口

居室(ベッドに設置されているのが大型呼出しボタン)

見守りの工夫

 居室において入居者を見守る設備としては、操作が容易なナースコール(アイホン:ワイヤレスタイプ大型呼出しボタン)とベッドセンサーによる見守り支援システム(パラマウントベッド:眠りSCAN)を組み合わせて採用しています。これは、ナースコールは操作のしやすさを重視し、大型呼出しボタンのみを設置していますが、認知症が進行しナースコールによる意思表示が難しくなった方に対しては、見守り支援システムで対応するという考え方から決定された組み合わせです。
 この眠りSCANはカメラ等による監視とは異なり、ベッドセンサーを利用して入居者の体動や睡眠状態を把握するもので、プライバシーを確保しながら危険を伴う夜間の離床等にも迅速に対応できるシステムとなっています。

眠りSCAN(パラマウントベッドHPより)

浴室の考え方

 各フロアにはそれぞれ浴室が配置されていますが、入居されている方の状態に合わせて浴室が使い分けできるように、機能の異なる浴槽が設置されています。1階に設置されているリフト機能付きの浴槽(メトス:個粋プラス)は、入浴用車いすに座ったままリフトを用い浴槽に入ることができる製品で、身体能力の低下した方であっても極力家庭での入浴に近い感覚で入浴していただきたいという法人の考えが反映された機器選定となっています。

リフト機能付き浴槽

建物正面

デザイン

 全体として建物の名称にもあるように、「家」であることを意識したデザインとなっています。
 外観は柔らかい色合いの石積み調のサイディングをベースに、濃い目の色合いの木板貼り調サイディングを部分的に配置することによって大きな壁面を分節し、施設感を緩和しています。また屋根は家であることを意識して勾配屋根を採用しています。

共用部(リビング)

畳コーナー

 内装は事業主の方と検討を重ね、複数の内装材を使い分け配置することによって、明るく遊び心ある空間となっています。
 共同生活エリアには収納付きベンチやクッション付きの腰壁が設けられた畳コーナーが配置されており、入居者の好みに合わせて色々な形でくつろいでもらえる場所を提供しています。
 畳スペースの設置に関しては運営者の考え方によっていろいろな意見がありますが、この施設では、そもそも畳を好まれる利用者が多いこと、グループホームということもあり身体的に畳の床に座ることができる方が多いこと、また入居者の方と一緒に洗濯物をたたむ等の家事を行う場所としても利用できるという考えから、設置されることとなりました。
 共同生活エリアは大きな空間を有しており、そのままでは家としては異質な空間になってしまいますが、スペースごとの役割を感じさせるダイニングセット、ソファーセット、畳敷きスペースを配置することによって、生活感を感じる居住空間となっています。また木造であるためどうしても共用部に出てきてしまう柱も、柱を意識しながら家具配置することによって特に邪魔ということもなく、むしろここが木造の家であるということを印象付けてくれる要素の一つとなっています。

建築主より

 最後に建築主の方より作品紹介掲載に際しコメントをいただきましたので掲載します。
 初めてゆう設計さんに連絡した日のことです。「どことも違う、ありそうでなかった」そんな家を作りたいという想いを形にしてくれる設計会社を探していました。何もかもが初めての経験で、もちろん設計会社選びもそのひとつでした。(ゆう設計さんの)ホームページを拝見し何から始めたらいいのか不安な中メール連絡をすると、すぐに快く引き受けていただき安堵したこと。設計担当者の方との初回打ち合わせの日の印象も、たくさん話を聞いていただき気づけば不安な気持ちが安心感になっていったこと。なにより福祉施設を多く手掛けておられる実績からの的確なアドバイスの数々が大変助かりました。
 施設づくりにおいて特に気を使ったことは「明るい雰囲気」と「家庭的な雰囲気」でした。現場監理の方には図面から建物が出来上がるまで一貫してそのコンセプトを建築業者に伝えていただき、わたしたちのアイデアをたくさん形にしていただき、ひだまりの家は完成しました。
 施設介護はケアの質であるソフト面と同時に立地条件や建物、システム関係を含むハード面の両輪が充実してこそ良質なサービスを提供することができると感じています。
 ゆう設計さんに建てていただいた、ひだまりの家にはこのような声を頂戴しております。「こんなところに入居できるのなら私が入居したいくらいだ」(入居者家族の声)「何十年か先にここの入居を今から申し込んでおけるかしら」(内覧会でのケアマネジャーさんの声)特に施設設計というハード面は建ててしまうと変更することはできないだけに完成までのプロセスがとても重要で、その完成には大変満足しています。
 この施行事例が少しでもこれから施設づくりを考えておられる方の参考になると幸いです。
 株式会社光栄 代表取締役 坂本裕樹

共用部に設けられた収納兼ベンチ

オリジナルの居室サイン

建築主
有限会社 オフィス・オケタニ
株式会社 光栄
所在地
兵庫県三田市
用途
認知症対応型グループホーム
構造
木造
階数
地上2階
敷地面積
837.85㎡
建築面積
325.58㎡
延床面積
600.30㎡
竣工年月
平成30年6月
担当者
岩﨑直子