あゆみが丘学園耐震化・増改築整備工事

あゆみが丘学園は昭和60年の開設以来、丹後の地で30年に渡り知的障がいの入所施設を運営されてきました。
昭和60年竣工当時の航空写真
全国に知的障がい者の入所支援施設は2570箇所(平成27年4月現在)ありますが、 その内京都府内では52箇所、丹後地域に限ると2箇所となっていることから、地域の知的障がい者の方の重要な受け入れ先となっています。

建物は、昭和60年開園当時からの本館(定員60名)と、平成8年に隣接地に新築された高齢者棟、ブナの木寮(定員20名)の2棟にわかれています。
洋瓦、外壁の色を揃えて隣接地に新築されたブナの木寮


本館の建物自体は新耐震設計基準ですが、30年を経過したことで内外装、設備共 に大規模な補修が必要になってきていることと、入所者の平均年齢が50歳を越えて いることから、施設の高齢化対応が差し迫った課題となっていました。


設計は、法人の基本理念である以下の3つの柱に沿って、何ができるかを考えながら取り組みました。

1.安全に生活できる施設 生命・個人を尊重した支援
2.安心して生活できる施設 安心感を与え、不安のない支援
3.安楽に生活できる施設 心身の苦痛を軽減し、楽しみを見出せる支援

施設を何度も訪れ、泊まりで見守り調査もさせていただく中で、1日の生活リズムの 中で食堂の占める比重が大きいことや、入所者の高齢化により、プログラムに取り組 む時間より余暇として過ごす時間の割合が大きくなっていること、そのことにより元々作業室として計画されていた部屋が現在はデイルーム的な使い方になっており、日中プログラムを行う際は近くの別の建物(旧保育所)に移動して行うという機能わけをされていること、外壁に断熱がなく、廊下に空調が無いため冬の朝など高齢の方には厳しい寒さであることなどの現状把握を行いました。
増改築前の平面図


基本理念の一つ目である、「安全に生活できる施設 生命・個人を尊重した支援」については、何よりも4人部屋を解消し、個室を可能な限り確保したいという要望がありました。増築用地として使える場所に最大限居室を計画した結果、定員の半分(30名分)個室を確保することができました。残る2人部屋についても、個人を尊重した支援に沿って照明をそれぞれのベッド周りにわける。クロスもベッド周りをそれぞれ違う 色にするといった工夫をしています。また、クロスの色、床の色、建具の色をそれぞれ 色とりどりに組み合わせることで、一つとして同じ組み合わせの部屋がない計画としています。
増改築後の平面図


二つ目の「安心して生活できる施設 安心感を与え、不安のない支援」については、 安心して暮らしてもらう為に一般の生活と同じように計画する部分と、配慮が必要な部分を現在の住まわれ方を聞き取りながら一つ一つ整理していきました。


機能的な配置の部分では、下記三項目について改善案を提案し、計画しました。
・外部からの出入りがある事務室、相談室等の玄関周り(エントランスゾーン)と生活する入居ゾーンをわけ ることで入居ゾーンを落ち着いた雰囲気にする。
・入居者棟が2棟あり、それぞれに男性ゾーン、女性ゾーンとわかれていましたが、棟自体を男性棟、女性棟にわけることにより、夜間建具で仕切る箇所を減らし、入居者にとってわかりやすく、またスタッフにとっても見守りがしやすいレイアウトにする。
・日中の居場所となるデイルームを諸室の配置替えにより、建物の中心となる中庭の位置にもってくる計画とする。


建物の各部分については、例えば居室内に照明のスイッチやテレビ等に使うコンセントなど、最小限の設備は設ける一方で、空調や換気のコントロールについてはスタッフの部屋での集中式とすることで目に触れる情報が増えすぎないように配慮する。トイレを原則湿式から乾式に改修する一方で、失便にも対応できるよう部分的に湿式対応を残す。コンセントプレートについては、破損はあっても頻度的に少ないことから金属製からプラスチック製に変える。内部の窓についてはアクリルとするが、サッシのガラスは過去に破損等が無かったため、飛散防止フィルムを貼った上でガラスとする計画としています。


最後に、三つ目の「安楽に生活できる施設 心身の苦痛を軽減し、楽しみを見出せる支援」については、元々の建物が内外共コンクリート打ち放しで、共用部に空調もなく冬場の冷え込みが厳しいことから、外に面した壁を断熱改修し、それに合わせてサッシをペアガラスに替える、床も若干の断熱性と体への負担を考慮しクッション付の床材に貼り替える計画としています。また、居室の建具は全て下レールを取り、吊り引戸とすることで段差をなくし、和室も洋室化することでベッド、車いすにも対応できる 計画としています。


今回の増改築を行うことで、既存建物については寿命が30年以上延びること、また増築により本館定員の半数(30名)が個室になることから、自閉症の方を含め、多様な受け入れ方が可能になります。2人部屋についても和室から洋室に変わり、照明もそれぞれのスペースに設置することで今よりも個室に近い使い方ができるようになることになります。


統計を見ると、全国的にも平均寿命の伸びから知的障がい者の高齢化がすすんでおり、施設から地域移行へというのが世の流れですが、実際には重度の障害を持たれた方、身寄りが亡くなられた障害を持たれた方が地域の中で生活していくには多くの支援が必要となります。


地域に必要とされる施設としてこれまで実績を積み重ねてこられたあゆみが丘学園 のサポートをさせていただくと同時に、全国のこれから高齢化に対応していく施設へも、有効な知見をご提供できるよう、竣工まで様々な検討を重ね、現場監理に携わっていきます。
外観ボリューム検討パース1
外観ボリューム検討パース2
外観ボリューム検討パース3

■所在地:京都府京丹後市大宮町
■構造・規模:(既存)RC造/(増築)鉄骨造・2階建
■計画規模:既存改修 1,570.47㎡増築 582.65㎡
■工期:平成27年4月~9月
■担当:清水 大輔・山本 晋輔