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福祉とコスト

 

福祉とコスト

 

砂山憲一

  

福祉施設を設計する設計者も事業者も、建設にかかわるコスト検討が甘いと私は思っています。それが許されていたのは、特養などは事業運営の競争にさらされておらず、イニシャルコストやランニングコストを下げなくても採算が取れたこと、その結果福祉施設という観点から、できるだけ手厚い設計内容がよいという考えで建物が計画されてきました。

 

ところが、建設工事費が上昇し、かつ建設の補助金が減る状況から新たな特養建設を断念するケースも増えてきました。

 

また有料老人ホームいやサ高住はもともと事業者通しの競争にさらされており、イニシャルコストを適正に決めることは建築設計の重要な要素となっています。

 

福祉施設のコストを考える場合、私は二つのポイントから検討してきました。

 

  1. 介護コストと建築コスト

  2. 福祉に必要な機能とコスト

 

  

  1. 介護コストと建築コスト

 

建築のコストにはイニシャルコストとランニングコストという考え方があります。イニシャルコストは最初の建設にかかる費用です。建物は建てて終わりではなく、設備を動かす電気代などが通常の運営でかかります。これをランニングコストと言って、コスト判断の重要な要素となります。また建物は年数がたつと補修を行わなければいけません。これの費用もランニングコストにいれて計算します。

 

 

福祉施設はこのランニングコストについて一般の建物と違う発想が必要です。建築の内容によって介護にかかる費用が違う場合が多くあります。

 

毎日の介護にかかる費用(介護の人件費など)が少なくなれば、建築にかかる費用が多くても、トータルで考えれば事業としては有利です。

 

介護にかかる費用と建物や備品にかかる費用を合わせて検討した例があります。5,6年前になりますが、特浴メーカーに販売している特浴の性能、コスト、一人の入浴時間、介助の人数などを表にするよう依頼しました。その結果わかりやすい比較表が示され、その後カタログとして公表されています。今でも事業者と特浴を選ぶ場合の資料となっています。特浴という製品の機能やコストだけではなく、それを使う場合の介助人数、一時間当たりの入浴可能人数を総合的に判断して選択します。このように製品価格が高くても、介助人数が少なくて済めばランニングコストが安くなります。製品や建築は介護コストの合算で決めなければいけません。

 

 

  

  1. 機能とコスト

 

建物に必要とされる機能を満たさなければいけません。ただ目的とする機能を満たすにも、どの程度満たすかで方法とコストも変わってきます。

 

福祉施設では体の不自由な方を対象としますので、この機能の満足度をどの程度にするか検討と判断が必要となります。例を挙げます。

 

体の不自由な方のお風呂の作り方

 

体の不自由な方が入るお風呂のコスト比較をしたものです。世介護度2から3程度の方は表のb,c,dのお風呂であれば使えます。建物とリフトなどの合算した費用が違っています。一番安いのが介護用ユニットバスにリフトを付けたものです。タイル張りの浴室にメトスの個粋を入れたタイプは金額が2倍弱となります。この三種類の入浴方法は利用者への負担や気持ちの違い、介護方法の違いがあります。そのような機能の違いとコストを総合的に判断して建築デザインは行わなければいけません。

 

 

 

  

福祉に求められる機能の程度の選択が重要となる

  

福祉施設を利用する利用者の体の状況は様々です。設計者としては想定される一番重度な方に対応する設計をします。50人が利用する施設でほんの数人の重度の方のためにすべてをそのレベルで設計するのか。

 知的障害の方の入所施設を設計したケースで、ドアを破壊する方が一人おられたのですが、様々な議論を経て、最終的には施設内のすべてのドアを壊されない仕様にしました。その時出た議論はこわれた時は修理することと、最初からすべて壊れないドアにするのとどちらを選択するかというものでした。私にも非常に考えるところの多い議論でした。

 

 

これから、福祉施設もどのレベルで必要とされる機能に対応するか、事業者と十分な議論をして案を選択する設計が求められていると思っています。

 

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