設計コンセプトConcept

診療所

テナントクリニックを開業するために

開院までの大きな流れ

1.開業場所の調査 診療圏調査(競合医院の調査) テナント・土地情報の調査
2.事業計画
3.資金調達
4.医療機関専門の設計事務所に依る設計・監理
5.医療機器・事務機器の選定(買い取りかリースか)
6.人材募集・広告宣伝
7.各種届出
8.開業

テナントで開業するための注意事項
1、事業計画 -資金計画-
■開院までの資金計算

工事期間中もテナント賃料が発生します。場所を決めてから開院日まで、約6ヶ月必要です。
・現地調査、設計業務(基本設計2ヶ月、実施設計1ヶ月) 
・テナント工事(2~3ヶ月) 
・開院準備期間(1ヶ月) 
・開院日(保険診療開始)  

■開院後の予想収益(黒字へと転換する時期の見極め)

資金計画(事業計画)は、クリニックを開業するにあたって必須項目です。会計事務所等の協力を得て、まとめていく必要があります。自己資金、借入金等を考慮し、総事業予算を決めます。私たちは、協力会社と事業計画の段階から建築工事費に対しての提言を行い、予算に応じた的確な設計をしています。

2、立地条件 -競合医院の調査-

成功する医院を目指すためには、戦略的に場所を決めていく必要性があります。住民の年齢層、駅からの距離、ターゲットにしている時間帯等、開院を検討している地域の特性や医療圏、開院される医院の診療科目の周辺地域にある医院との競合の有無の調査は必須です。私たちは、協力会社と総合的な調査を行い、先生にご提案しております。それと同時に、専門性(医院のウリとなる要素)を押し出す必要があります。

3、テナントを選ぶための条件 -建築に向けて-

診療科目によって種々ありますが、設計のポイントを下記に示します。

a. 規模

・診察室が何室必要か 
・どのような処置の仕方を想定しているか 
・待合いは何人を想定しているか 
・どういった内容で他医院との差別化を図るか 
・医療機器はどの程度を想定しているか 
このようなことをまずは想定していただき、ご要望を私たちに伝えてください。仮に、立地条件の良いテナントが先に決まっていれば、そのテナントに対して図面化します。テナントが決まっていなければ、私たちのノウハウからおよそ必要な面積をお伝えしますので、その面積を参考にテナントを決めてください。資料-1は、大阪市内で計画中の整形外科医院の現況平面図です。平面計画を進める前にテナントに行き、現地調査をします。広さはもちろんのこと、高さ、設備等、計画に必要な情報を確認するために、時間をかけて行います。

b. 天井高さ

テナントを借りる場合、その多くはスケルトンです。その状態で、床から上階のスラブまでの距離と、梁下端までの距離が十分確保できているかどうかが重要です。
例えば、X線機器を設置するためにはメーカーが推奨する最低天井高さ(資料-2)があり、また、昇降訓練等のリハビリ機器を設置する場合でも、天井高さをいくら確保できるのかが重要になります(資料-3)。
「f. 空調・換気設備」にもまとめていますが、空調室内機を設置するためには天井のふところが400程度必要です。その高さを考慮する必要があります。
また、天井の高さは医院の雰囲気を創る上でも重要です。

資料1

c. 床

㎡あたりの床荷重に留意することが必要です。新築と違い、テナントの場合、重い荷重を想定していない場合があります。そのため、強度のある梁の上に重たい医療機器( 特にX線機器)を設置する等の工夫が必要になります。
また、「e. 給排水設備」で詳しく述べますが、排水設備を設置するためには、テナントの床仕上げのレベルから、-250~-300程度の段差がある方が望ましいです。

d. 電気設備

医院全体の電気容量に注意しなければいけません。X線機器は、必要電気容量が大きく、医療機器によっては単独電源を必要とする場合があります。
電気容量が大きいと、キュービクル(高圧受電設備)を設置する必要があり、コストアップの要因になります。
設計を行う際に、必要機器をリストアップして頂き、電気容量の確認をします。大きくなりすぎるようであれば、再検討をして頂くためにアドバイスいたします。

e. 給排水設備

給水管と水道メーターがどこにあるのか確認する必要があります。
給水管の位置は、計画上あまり大きな支障にはなりませんが、排水管の位置は非常に重要です。「c. 床」で少し触れましたが、排水設備を設置するためには、テナントの床仕上げのレベル(通常、廊下と同じレベルに仕上げます)から、-250~-300程度の段差がある方が望ましいです。 排水管は床下に設置します。排水管を設置するためには、テナントに備え付けられている排水口までを、排水勾配を確保しながら設置しなければいけません。このために、床下にスペースが必要となります(資料-4)。また、排水管をクネクネと折り曲げて設置することは、詰まりの原因となるため、望ましくありません。うまく配管できたとしても、メンテナンス用の床下点検口は有った方が良いです。
では、床下のスペースが無い場合、どうしたらいいのでしょう。
現在私が計画している医院は、廊下から5cmしか床の下がりがありません。その場合は、壁の中に排水管を設置したり、諸室のレイアウトの工夫で解決しています。いずれにしましても、早い段階で専門知識のある私たちにご相談されるのが良いと思います。

f. 空調・換気設備

壁掛けタイプのエアコンを設置する場合は別ですが、天井カセットタイプの室内機を設置するためには、天井裏の高さが400程度必要です(資料-6)。また、室外機置き場の確保も必要です。
換気経路を確保することは、医院の臭気対策において重要です。外壁に排気口がある場合が多く、そこに向けて配管を設置します。換気扇の位置から「2曲がり6m」で設置することが出来れば、配管による換気風量の損失を免れることができると考えてもよいでしょう(資料-7)。

上:資料4 下:資料5(床下に排水管がある状態を示すため、床下地を一部切り欠いています。)

上:資料6 下:資料7

g. セキュリティ

1階のテナントを借りる場合、テナントの入り口が道路に面していることが多く、また、上階のテナントの場合、建物の入り口を共有していることが多いです。
医院のセキュリティをどこでかけるのか想定しておくことが、運営の安心感につながります。防犯面の検討も設計業務の中で行っていきますので、テナントを決める際にお声がけ頂きましたら的確なアドバイスをお伝えすることが出来ます。

h. デザイン

私たちは、上記に示した項目を満足させることは当然のことであると認識しています。それらをふまえた上で、医院としてのコンセプト、セールスポイント等を、先生方と密に打ち合わせを行うことで、ひとつの形を創造していきます。
医院にとって、機能的な充足と同等の重要さを持つものは、雰囲気創りです。このことについては、「クリニックデザイン ―デザインは力だ―」を一読してください。