設計コンセプトConcept

精神科

治療効果のある精神科病院建築

■精神科病院建築が持つ治療効果とは

精神科病院のお医者さんが、病院建築そのものが治療効果を持つといわれます。病床基準が4.3㎡から6.4㎡になり、昨今8㎡を先取りしてリニューアルを行なう病院も多く、患者の生活環境の向上により患者の状態が改善されているとのことです。建築設計からは、他の科目より長期に亘る入院患者様の日常生活空間としての病棟・病室を患者目線で捉えなおし次の項目別に建築としてのテーマを設定し設計を進めています。
①拘束感のない空間 
②変化を感じられる 
③プライバシーが保たれる 
④自分自身で選択できる 
⑤高齢化対応 
以下、事例に基づき説明いたします。

①拘束感のない空間

社会から隔絶感のないデザイン。オレンジホスピタル:ハイキングコースのリゾート建築の雰囲気 。いわゆる精神科病院の雰囲気をなくす。カラフルな外観。内外空間の連続性を創出するアーケード

社会から隔絶感のないデザイン。宇治おうばく病院:吹き抜け空間が見える曲面構成の玄関ホールで中が見え入りやすさを醸成。圧迫感の少ない低層建築としている。

行き止まりの閉塞感がないよう奥で屈曲する廊下。目的地にいたる複数の経路を用意。

廊下の端部には採光窓を設け開放的な雰囲気を。

オレンジホスピタル (ステーションのローカウンター):スタッフステーションの開放性。 低いカウンターは、病棟内部の開放感と患者とスタッフの対等な関係を醸成しています。セキュリティとしては カウンター及びデスクの幅を確保し、容易に乗り越えられない構造としています。また、2病棟のスタッフステー ションは内部で連続する構成としています。

オレンジホスピタル(保護室ゾーン構成):準保護室は個室として使用も可。保護室には前室を設け収容感を減らす。前室は容態によるが選択の自由がある。保護室の大きな窓から景色が見える。

②変化を感じられる

季節や一日の変化を感じる景色や光の変化。閉鎖病棟や長期入院患者様にとっての窓からの景色は大切です。しかし、患者様のプライバシー外部への視線の配慮は不可欠です。

また室内の照明の色温度や、一日の照明の変化のデザインは患者様の病院内の生活のリズムを創る要素として重要です。 

ほのぼのホスピタル 木製ルーバー

 新須磨病院 病室の灯りのデザイン

訪問者との交流の容易さ。ほのぼのホスピタルの訪問者の動線プランニング。病棟の面会室へ訪問客はEV前の扉から、患者は病棟内廊下から入る。入院患者にとっては、自然な訪問客との交流が拘束感を減じている。    

ほのぼのホスピタル 面会室配置

③プライバシーが保たれる

多床室でもプライバシーが保たれるよう、家具の仕切りを用いて個室風多床室にしています。

病棟のトイレのあり方。生活の質とトイレとの関係は重要で、集中型か分散型かが議論になります。計画では、分散集中型という両者の利点を合わせた方法をとっています。

④自分自身で選択できる空間。ときに隠れることのできる場所の創造。

スタッフステーションからの見通しが求められるが、病院スタッフとの打合せのなか、廊下に適度な遮蔽空間を設けている。※医療環境として、精神科病院ではスタッフステーションからの見通しを要求されること 多い。当然の要望と感じるが、患者目線では、ときに隠れられる空間が欲しいこともある。すでに特別養護老人ホームでは、雁行型の廊下なども実現されている。ある急性期の精神科では、瞑想室を設けているところもある。今後病院様と協議の中で、可能性を検討したい。

⑤高齢化対応

疾病構造が変化し統合失調症が減り、うつ気分障害が増えている。また、一方認知症患者が増え、認知症治療病棟の整備が増えている。これに伴い、認知症カフェを設置するところも多い。しかし、忘れてはならないのは、全般的な高齢化進行である。精神一般や療養病床での高齢化はかなり進んでいる。施設整備当初と比べての高齢化進行には、将来の改築や模様替えによる建築的な工夫が求められている。また、悩ましい男女比の変化にも対応が求められている。

ほのぼのホスピタルでの高齢化対応:長期にわたり入院する患者さんが多く,平均年齢の高いこの病院では現在では何の不自由もなく生活されていている患者さんも10年後には体が不自由となる可能性が高い。そこで,各病棟に車いすトイレの設置し,廊下には全面に手摺を設けた。それに加えて浴室に大きな特徴がある。2階の浴室を,一般浴室2室から,一般浴室2室と機械浴室に変更できるように壁の位置・出入り口の位置・排水溝の位置などを工夫し,将来介助が必要な方が増えることを想定した計画とした。福祉施設のように最初から高齢者が住むことが想定されるわけではなく,住宅のように同じ患者さんが同じ場所で生活を続けることが多い精神科病院特有の工夫と言える