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時空読本 / No.10

変化する有料老人ホーム

  • 2001/06/01
  • 時空読本
  • No.10
介護保険以降の高齢者施設
変化する有料老人ホーム
有料老人ホームの位置づけ
これまで、有料老人ホームは医療・福祉からは少し距離を置いた存在でした。介護状態になった場合には他の施設に移る必要があったり、介護サービスには多額の費用がかかっていたわけです。入居一時金が高額なこともあり、現実的には一部の裕福で比較的健康な高齢者層のみがターゲットでした。
介護保険施行による変化
しかし、介護保険の「特定施設入所者生活介護」という新しいサービスが登場し、その位置付けは変化しています。 この「特定施設入所者生活介護」の指定を受けることにより、ホームで提供するケアサービスに介護保険が適用され、入居者は他の施設に移ることなく、軽い負担で安心して住み続けることができるわけです。 最近は都市部を中心に、入居一時金を低額に設定し、一般の賃貸住宅感覚で入居できる有料老人ホームの新設が急増しています。また、既存の有料老人ホームも「特定施設入所者生活介護」の指定を受け、介護保険に対応し始めています。 このような低額型有料老人ホームは従来の高額型有料老人ホームと介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)・介護老人保健施設などの介護保険施設の中間に位置します。 利用料金体系で考えると、ケアハウスに近い水準になっている施設もあります。 今後は従来の高額型有料老人ホーム利用層と介護保険施設利用層の中間の層をターゲットに、そのニーズを満たしていくことになります。
京阪神での新規有料老人ホームの動向
京阪神でも新しいタイプの有料老人ホームが増える傾向にあります。 大手家電メーカー系列会社が経営する施設が門真市内にオープンしています。寝屋川市にも同じく大手家電メーカー系列会社経営の施設がH13・12オープン予定です。 別の大手家電メーカー系列会社は倉敷市内で施設をオープンしていますが、アメリカの会社との業務提携など独自の運営手法で、入居一時金を月額利用料の六ヶ月分という低料金に設定しています。 木津町には、大手企業が共同出資した会社が経営する施設がオープンしています。こちらもアメリカの会社のノウハウを生かし、入居者の体の状態に合わせた複数の施設を同一敷地内に設置することで、多様なニーズに応えています。また、H13・10高槻市内にも新施設をオープン予定です。 このように、「従来の高額な入居一時金は払えないけれど、介護保険施設では物足りない。もう少し自由に暮らしたい。」という中間層のニーズは確実に増加し、それに応える施設の充実が進んでいます。
ケアハウスの動向
従来、有料老人ホームが比較的健康な富裕者層に限られたものであるのに対し、一般層が利用できる施設としてケアハウスがありました。いずれも介護保険は適用されない施設でしたが、利用者の棲み分けは明確でした。 しかし、「特定施設入所者生活介護」により、低額型の有料老人ホームが出現し、両者の距離は近づいてきました。 そしてここへ来て、ケアハウスの規制緩和が一歩進むことになりました。次年度よりPFI方式(※医療・福祉最新情報参照)の導入を条件に、ケアハウスの建設・運営が民間に開放されます。 運営主体が限られることにより伸び悩んでいたケアハウスも新方式の民間参入により、新しい局面を迎えます。近い将来、全面的に民間開放されると、まさに低額型有料老人ホームとの競合の時代に入ると考えられます。
その他の高齢者施設
アメリカではリタイアメントコミュニティーが発達しています。高齢者=医療・福祉ではなく、退職して元気に暮らすということがコンセプトであり、居住者の最低年齢を居住条件としています。住宅は分譲で、医療や福祉が必要になれば住宅を売却し自分の状況に合った施設に入居します。 日本ではこのリタイアメントコミュニティーと呼べるものはまだないでしょう。事業者も入居者も、介護が必要になったらどうなるか、が最大の関心事だからです。 日本では、資産としての分譲マンションに高齢者向けのメディカルケアサービスを付加したものが神戸の六甲アイランドシティーに登場しています。医療・福祉・介護がすぐ近くにあり、しかし、高齢者だけが孤立するのではなく、自然に街並みにとけ込む。そのような形態が生まれつつあります。
低額型有料老人ホームを運営するためには
設定条件 用途地域 住居系
建ぺい率 60%
容積率 200%
構 造 RC3F建て
定 員
1 介護専用型一般: 50名
2 介護専用型痴呆: 50名
3 介護専用型(健康者): 25名
合計  125名
建築規模 延べ面積 6,250平方メートル(1,890坪)
建築面積 2,083平方メートル( 630坪)
敷地面積 3,600平方メートル(1,090坪)
イニシャルコスト 敷地購入費 763,000,000円 (@70万円/坪)
建築工事費 1,323,000,000円 (@70万円/坪)
その他 100,000,000円  
合 計 2,186,000,000円  
収  入 終身利用権1,500万円、月額利用料18万円、介護度2として
入居一時金 1,875,000,000円  
月額収入 22,500,000円  
月額介護保険収入 18,480,000円  
介護保険以降の高齢者施設の動向を見てきましたが、民間の企業として、次のステップを起こすことができる施設は、やはり現状では有料老人ホームということになります。 では、有料老人ホーム事業を展開するには、どの程度の規模の施設が必要でしょうか?ここでは、都市圏の住居系地域での事業展開を考えてみます。 左表ような条件ですと、立ち上げ時に約3億円が必要になります。
事業化に向けての設計が進行中
このように新規で土地を購入する場合は、土地のコストが問題になります。既に土地を所有されている場合は採算的に有利になりますし、寮やマンション所有されている場合は改修工事での計画も行われています。 ゆう建築設計でも既存建物の改修や新築での低額型有料老人ホームの事業化計画を進めています。

介護保険以降、高齢者施設は変化を続けています。
それは消費者側に、「介護保険を利用することは権利である。」という認識が浸透し、より多様な選択肢を求めるニーズが生まれた結果でしょう。
今後も高齢者施設をとりまく状況は変化を続けます。