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時空読本 / No.11

療養病床における日常生活動作の向上を目指して

  • 2002/01/01
  • 時空読本
  • No.11
浴室・便所の検討
療養病床における日常生活動作の向上を目指して
ゆう建築設計では、病院・高齢者福祉施設の設計を重ねる中で、常にその施設の運営方針に適した建物を検討し、提案しています。
特に介護保険施行以後は利用者の意識も高まり、自分の入りたい施設を選ぶようになりつつあります。入浴や、排泄等は誰もが出来る限り自分自身で行いたいと願う行為です。従ってその行為を行う場所である浴室、便所の設計は、利用者の日常生活動作の能力を向上させる上で非常に重要です。ここでは、(仮称)第2京都双岡病院で行った設計作業を例にとって、ゆう建築設計の取り組みをご紹介します。
現在建築工事が進行中の(仮称)第2京都双岡病院では院長先生以下、医師・事務担当者・看護婦長などで検討委員会を結成し、建築計画の細部にわたる検討が行われています。日常生活動作の中でも特に浴室と便所については実寸模型を作製した上で細かな部分まで寸法と形状の検討を重ねました。

 


 

私たちが設計した特養  
今回の計画では、病棟浴室は基本的に2病棟に1ヶ所設けられます。

●脱衣室には2つのコーナーを計画
脱衣室は自立で衣服の脱着ができる方のコーナー、衣服の脱着に介助が必要な方のコーナーに分かれています。介助が必要な方には着せ替え台を設置しています。患者の方が座位を取れる時は低く、横臥の時は介助者に合わせて高くできるよう、昇降式になっています。

病棟浴室レイアウト

 


 

 
●全てが個人浴槽
浴室内には機械浴1台と個人浴槽3台を備えています。
座浴であることと、介助によりできれば全ての患者の方に浴槽につかっていただくことを入浴の基本と考えています。従って、この浴室では全ての浴槽が個人用です。

●安定して浸かれる小さめの浴槽を現場製作
浴槽の大きさは、入浴中の体のバランスをとりやすくするために、やや小さめの設計としています。既製の浴槽では大きすぎるため、最適な寸法のものを、体格に合わせ大小2種類現場製作します。

●小浴槽は反転タイプも設置
小浴槽は左麻痺、右麻痺どちらの人にも対応できるよう左右反転タイプも用意しています。個人浴槽の周り三方には介助スペースを確保しています。

●シャワードームを採用
機械浴は全身硬直などで座位が取れない方のために導入します。本来、入浴の原則は座浴ですが、やはり何名かは横臥式機械浴に頼らざるを得ません。横臥式機械浴は入浴に近い爽快感が得られる等の理由から寝浴(シャワー・ドーム)を採用しました。

●使いやすい洗い場
脱衣室からの動線を考慮し、自立の方用と介助が必要な方用の洗い場の位置を設定しています。
シャワー・チェアから立ち上がる際の縦手摺は、力が入りやすいように通常よりも狭い間隔で設置し、チェアに座ったまま手が届く位置にもシャワーカランを設けるなど、身体機能が低下しても、患者の方が出来る限り自分で使用できるような工夫をしています。

個人浴槽の実寸模型を設置し、浴室・脱衣室を実物大で検討

 


 

個人浴槽の詳細寸法確認作業

体が安定する浴槽寸法と握りやすい手摺位置 浴槽の実寸模型 病院の方々とともに浴槽寸法を検討

 


 

大浴場  
●個人浴槽での検討結果を大浴場にも採用
自立度の高い患者の方が自由に利用できる大浴場1ヶ所を病棟浴室とは別に1階に設けました。浴槽は、利用者の体が、湯の中で浮き上がりバランスを崩すことの無いよう、個人浴槽の寸法検討結果を活かして深さや浴槽内手摺間隔などを決めています。また、浴槽の湯面を広く取り、庭に面して開放感のあるゆったりとした浴室になっています。

 


 

大浴場  
●便器前方にも跳ね上げ式手摺を採用
自走式車椅子に対応し、介助者が同時にブースに入った場合でも車いすが回転できる広さを確保しています。
便器に対しては側方からアプローチします。便器横の手摺は車椅子から便器への移乗用、便器前手摺は排便後に立ち上がる時用です。
扱いやすさを考えていずれも跳ね上げ式とし、必要な時に下ろして使用します。介助は斜め前方から行います。
●便器に座ったまま手を洗える便所
用を足した後、手洗いまでの動作を便器に座った状態のままで行えるよう、壁側に紙巻器・手洗い器・ペーパータオル・洗浄ボタン・非常用ボタンを設置しています。
2m四方のブース模型を実寸で作製し、それぞれの器具の位置、高さを検討しました。

 


 

より多くの人に便所を自分で使ってもらうために

便所レイアウトの動線検証 壁に取り付ける機器の配置・高さを確認 車椅子対応ブースの実寸模型内での動作検証

 


 

大浴場  
●適切なブース建具の選択
独歩でほぼ自立の方用のブースの扉は、少しの力で開きかつ開口部寸法が大きく取れる折戸式を採用しています。ある程度介助の必要な方用のブースでは、プライバシーを確保するため、カーテンではなく鍵付きのアコーディオンドアを採用しています。

●便所レイアウトは動線を実寸で検証
便所は限られたスペースで複数の人が出入りし、排便から手洗いまでの多くの動作を行います。
これらの動作がスムーズに行えることを確認するため、実寸の便所レイアウトを床にテープを貼って表示し、一連の動作と車椅子での動線を検証しました。

便所レイアウトの一例