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時空読本 / No.13

海外の医療・福祉施設から学ぶもの AUSTRALIAII

  • 2003/01/01
  • 時空読本
  • No.13
■Proposal
〜海外の医療・福祉施設から学ぶもの AUSTRALIA II〜

前回の時空読本では、オーストラリア・タスマニア州で独自の痴呆高齢者施設を運営している「アダーズ・ナーシングホーム」、をご紹介しました。このアダーズ・ナーシングホームはアクティブな痴呆高齢者のみが暮らす施設で、36人のお年寄りが、ごく普通の生活を、ごく普通の建物で過ごされていることが印象的でした。 今回は、引き続きオーストラリアの痴呆高齢者施設の視察報告をいたします。

オーストラリアの痴呆高齢者施設II

オーストラリアでは、施設での福祉が中心の時代を経て、高齢者がこれまで生活してきた環境そのままに、家族や地域で質の高い福祉サービスを受けることが望ましいと考えられるようになりました。 今回視察した施設の中には地域コミュニティが運営する痴呆専門のナーシングホームやホステルがあることでも高齢者にとって地域コミュニティの重要性が判ります。 特筆すべきは、痴呆ケアの秀逸さです。 アダーズ・ナーシングホームで紹介したダイバージョン・セラピーは、今回の視察施設でもその実施状況を見ることができました。さらに、セラピストだけでなく全てのスタッフがその心得を持つ、より高次の痴呆専門ホステルを訪問することができました。そこでは、入居者が穏やかで徘徊が見られません。 入居者の経歴や人となりを調べ抜き、個人個人に最適なケアを行うのは痴呆以外の一般虚弱老人にも同様です。このような暖かい、個別ケアを、日本の基準より少数のスタッフが提供しているのは驚きでした。
《視察1:カーリー・コート》

大きなガラスポーチのある玄関 光庭のあるアクティビティルーム

2002年7月にオープンしたハイケア入居者の多い55室のホステル。中央部に改修された既存建物の両側に円形の居住棟を持つ特徴あるめがね型プラン。円形の居住棟の中心には光庭があり、周りに人が集まるスペースを設けている。色使いが大胆で、色による場所の識別を意図している。重度の痴呆性老人の入居者が比較的多い。


《視察2:ライトン・ロッジ・ナーシング・ホーム》

人気あるサンルーム 比較的シンプルな居室

コミュニティを運営母体とする一般虚弱性老人用40床、痴呆性老人用20床のナーシングホーム。平屋建の2つの中庭を持つ平面構成。痴呆性老人は、まず在宅のまま隣接のデイセンターに通い、その後、隣接するウォルダグレーブ・ハウスの施設ケアに移行し、さらに状態が悪化すると、個々の痴呆専門ユニットに移る。ウォルダグレーブ・ハウスと同じ建築家による設計。


《視察3:ウォルダグレーブ・ハウス》

庭の外に出た気のする2重柵の庭
(行っても戻って来るU字歩行道)
ベッドから見える便器
(痴呆者が迷わない)

痴呆専門のホステルでライトン・ロッジ・ナーシング・ホームと同じコミュニティが運営する。扇状に両翼を広げた形の平屋の痴呆専門の24床の。2棟をつなぐゆったりとした庭は2重の柵により2つに区切られ、あたかも外界に出る雰囲気をもたせている。外の庭には、自然に戻ってくる小道と石により演出された小川や、造られたバス停がある。静かな人の流れ、家庭的雰囲気、質の高い個別介護などで有名な施設。


《視察4:ドロシー・ヘンダーソン・ロッジ》

陰に隠れ目立たない
他のゾーンへの扉(痴呆棟)
自宅より持参した家具に囲まれる
入所者(一般棟)

一般と痴呆専門の複合型ローケア・ユニット。3つのゾーンのうち10床+ショートステイ用の1床が痴呆専門とされている。大きな一般用ホステルの中に、独立した形でこじんまりと設けられている。非常にシンプルなつくりで、痴呆専門施設設計のひとつの理想型とも言われている。バプテスト・コミュニティ・サービスというNPOによる運営。


《視察を終えて》
今回の視察の成果は、オーストラリアの痴呆ケア最前線に触れることができたことに尽きます。
この最前線のケアは、徹底した技術的な努力と、どこまでも暖かい人に対する配慮に裏付けられたものでした。
ウォルダグレーブ・ハウスの、部屋で目覚めた時、自然にトイレ・便器が見えるように構成された間取りや、二重の柵による“敷地内なのに外界を演出する庭”などは、深い経験や周到な計画無しにはできません。
また、多くの痴呆高齢者が幼少期を過ごした1930年代の建物のデザインの中で、当時の音楽を聞き、当時の物語を読み聞かせ、語らせるダイバージョンセラピーの効果。個々人の歴史を踏まえ、知り尽くした上で行う個別介護。
また、多くの施設で語られた苦情処理シートの重要性。入居者の挙動を感知する最新の情報機器によるクエスティックシステムなど、感銘を受けたことは非常に多くありました。
中でも忘れられないのは、どんなに興奮している痴呆高齢者をも、たちどころに穏やかさを取り戻させる施設長ノレルの暖かい微笑と、ドロシー・ヘンダーソン・ロッジのシンプルな平面計画でした。

 

オーストラリアの高齢者福祉の概要
在宅ケアサポートプログラムとしては、個人と業者との契約で行うHACCとケアマネージャーが内容を決めるより介護度の高い人のためのCACPがあります。 比較的健康な高齢者は、一般的に子供達とは住まず、リタイアメントビレッジにある住居の終身利用権を買い取る形が多いようです。ここでは原則介護なしで在宅ケアを受けます。 施設ケアとしては、ホステル(ローケア施設)とナーシングホーム(ハイケア施設)があります。 ホステルは軽介護施設で、ある程度動ける人を対象としており、一般・痴呆・混合型の3種があります。 ナーシングホームは重介護施設です。介護だけでなく看護の必要がある入居者が多く、24時間、最低1名の正看護婦の勤務が義務付けらています。

■施設入居保証金制度

1997年にナーシングホーム入居者に施設利用料制度、ホステル入居者には施設入居保証金制度が導入されました。 この制度は資産額25,500ドル未満の人は無料となり、また施設は政府より補助金を受けるという仕組みです。